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星が照らす行先は  作者: 健健
二章 地下遺跡
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騎士と合流したアルナイル達はすぐさまもう一人の騎士の救助に向かう。壁際に転がっている騎士の元にヒンギルが駆け付ける。


魔物の攻撃が直撃した両脚は折れ曲がり、壁に打ち付けられた全身は血にまみれていた。

「おい!聞こえるか!?」


ヒンギルの声掛けに騎士は無反応だ。

「ヒンギル!魔物が起き上がってきた、急いでくれ!」

「分かってる!」


アルナイルの魔法により吹き飛ばされていた魔物の様子を警戒していたファンがヒンギルを急かす。

ヒンギルは騎士の首元に指を当て脈を測った。

「・・・よしっ!まだ生きてる、間に合ってくれよ!〈光への帰路〉(ホーム)


ヒンギルは急いで騎士を光魔法で城へと飛ばした。ヒンギルの光魔法・〈光への帰路〉(ホーム)は魔法によって〈印〉をつけた場所に、一瞬で移動する事が出来る魔法である。〈印〉は複数付けられ、その内の一か所をヒンギルは城内の医務室に付けていた。


後の事は城の人間に任せたヒンギルはすぐさま戦闘態勢に入りアルナイル達と合流する。

皆の視線は崩れた壁の向こう側からゆっくりと近づいてくる魔物に向いていた。

崩れた壁を潜り抜け、遺跡内に再び戻ってきた魔物の姿をアルナイルは改めて観察する。


全長は約十数メートルはあり、高さは二メートルはあるだろう。トカゲのような姿をしているが全身は毛に覆われている。先端が尖がった大きな閉じた口元には、びっしりと生えそろった牙がちらついていた。

前足で上体を起こし、魔物は静かに此方を観察しているようだ。


「なにっ!?」

「コイツはやばいね、すごくヤバイ!」


魔物の姿を見たファンとヒンギルは同時に声を上げた。

二人の表情は驚愕に満ちていた。アルナイルは今まで見た事の無い二人の表情に、焦りと緊張を隠さずに質問した。

「あの魔物の正体を知っているんですか?」


魔物に視線を合わせたままヒンギルが答える。

「あれは貪欲獣(デヴァウワー)って名前の魔物だ。嬢ちゃん、気を引き締めないと死ぬぜ」

「何で此処に貪欲獣が居るのかは一先ず置いて、ダン長が来るまで無事に生き残る事を目標にしようか」


貪欲獣が雄たけびを上げながら突進してきた。

「〈暴風〉!」


すかさずアルナイルが魔法を放つが、貪欲獣は高く跳んで魔法を避け、そのままアルナイル達目掛け跳びかってきた。


皆ばらばらになって回避したが、貪欲獣は一人に狙いを定め、再び襲い掛かった。狙われた騎士は走って距離を取ろうとするが貪欲獣の方が早かった。

追い付かれるすんぜんで何とか回避する事が出来たが態勢を崩してしまった。

「くそっ!」

「〈風切〉!」


ヒンギルとファンが騎士を助ける為に走り出し、それに合わせてアルナイルが魔法を放った。

騎士の命を齧り取ろうとしていた貪欲獣は、アルナイルの魔法を察知し騎士から離れた。

その間にヒンギルとファンが騎士の元に駆ける。


貪欲獣は先程からうっとしい攻撃をしてくるアルナイルに苛立ちを覚え標的を変えた。

アルナイルに向け大きく口を開いた貪欲獣にアルナイルは身構えるが、しかし貪欲獣は突進してこず動かない。不思議に思うアルナイルだったが、大きく開いた口内に魔力が集中している事に気付いた瞬間、反射的に横に跳んだ。 


瞬間、貪欲獣の口内から光線が放たれた。

「くっ!」


なんとか躱す事が出来たアルナイルだが、貪欲獣から放たれた光線は途切れる事無くアルナイルを追いかけた。

「〈突風〉!〈突風〉!」


自身に魔法を放ち空中を移動しながら貪欲獣の光線をなんとかやり過ごす。

貪欲獣がアルナイルに夢中になっている隙を他の三人が見過ごす筈はない。


ヒンギルは魔力で強化した身体を動かし、アルナイルに釘付けになっている貪欲獣の背後から迫る。

ファンと騎士もヒンギルの後に続く。

「図体はデカい癖して動きは素早い、まずは動きを封じるぞっ!」


ヒンギル達は貪欲獣の後ろ脚に狙いを定めた。貪欲獣はヒンギル達の行動に気が付いたがもう遅いかった。

「右は頼むぜ!」

「まかせてよ!」


貪欲獣の背後を取ったヒンギルが貪欲獣の左脚目掛け、全力を込めた拳を放つ。

ヒンギルな放った一撃は貪欲獣の身体を一瞬浮かせる程の威力であり、貪欲獣は呻き声を上げる。

それに続き、今度はファンが貪欲獣の右脚に攻撃を仕掛けよとした瞬間、貪欲獣が尻尾を大きく薙ぎ払った。

「ファンさん、危ない!」

「!!」


ファンが攻撃を避けれないと察した騎士が自身を盾にファンを守る為に身を乗り出した。

騎士もヒンギル同様、魔力で肉体を強化する事が出来る。だがしかし、それをもってしても貪欲獣の攻撃を耐える事は出来ず、そのままファン諸共吹きとばされてしまった。

「二人とも無事か!?」

「僕は大丈夫だ!だけど騎士団長の方はもう戦えない」


ファンの盾になった騎士の鎧は凹み、口から血を吐いていた。魔力で肉体を強化していなければ恐らく即死だっただろう。


ヒンギルは騎士の事は切り捨てる事にした。可能ならすぐにでも自身の魔法で城へと飛ばしたかったが状況が悪い。貪欲獣との距離が近く目を離す訳にはいかなかった。

己を守る為に重傷を負った騎士をその場に捨て置き、ファンもすぐさまヒンギルの援護に向かった。


己の後ろ脚を殴りつけたヒンギルを噛み殺す為、貪欲獣が口を開きヒンギルに迫る。

「〈形状変化〉!」


ヒンギルの元に駆けつけながら、ファンが自身の剣に〈形状変化〉を掛けると、剣は一瞬で槍へと形を変えた。

「ふんっ!!」

その槍を貪欲獣の開いた口に目掛けて投擲した。

貪欲獣はそれを感知し上に跳んだ。だがその動きは、ヒンギルの一撃により鈍くなっていた。

「嬢ちゃん、今だ!」

「〈暴風〉!」


回避が出来ない空中に跳んでいる瞬間を見計らい、アルナイルが魔法を放った。

魔法は命中し貪欲獣は空中から壁に激突し地面に落下していく。

しかし貪欲獣は空中で体勢を整え着地し、アルナイル達に向けて怒りを露わに咆哮を浴びせる。


「まだくたばりそうにねぇな」

「〈暴風〉を二回も直撃したのまだ動けるなんて・・・」

「貪欲獣の体毛は魔法の威力を軽減させる効果があるんだよ」

魔法使いのアルナイルにとってはあまりいい情報では無かった。


「もうすぐダン長達が援護に来るだろう。それまでの間、俺達三人で何とかするぞ」

いいながらヒンギルは負傷した騎士団長をちらりと見た。

その行動にアルナイルはヒンギルの意図を読み取り言った。


「お二人とも、今から私が光魔法を使って貪欲獣の相手をします」

「なに?」

「え?一人で??」

「はい、その間に負傷した騎士団長をお願いします」


そう言ってアルナイルは一人、貪欲獣に向かって行った。

「アルナイル君!」


後ろからファンが止めようと声を掛けたがそれをヒンギルが制止する。

「ヒンギル!アルナイル君一人では危険だろ!?」

声を荒げるファンに対しヒンギルは落ち着いて答えた。

「騎士団長を飛ばして援護に戻るまでの時間くらいなら嬢ちゃんは耐えられる。それに一つだけファンが勘違いしてる事がある」

「なに?」

「光魔法を使った時の嬢ちゃんは一人じゃないんだぜ?」



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