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星が照らす行先は  作者: 健健
二章 地下遺跡
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 ファンとヒンギル、アルナイルの三人は地下遺跡最下層内で起こっている非常事態に対処する為、地底湖に掛けられた石橋の上を走り抜けていた。


ヒンギルが走りながら懐から通信板を取り出しダンと連絡を取る。


「こちらヒンギル・ターチ、非常事態発生。繰り返す、非常事態が発生した」

「ダン・バルダンだ、何が起きた?」


すぐさまダンが返答し状況を聞いた。


「ファンが〈生命調査〉(ライフリサーチ)を使って地下遺跡最下層内で戦闘中と思われる反応を感知した。人間の反応は八人、その内三人は死亡、もしくは瀕死の重傷を負っている可能性がある。俺達も今現場に向かっている」

「魔物の数は?」

「確認出来た魔物の反応は、今の所は一つだけだ」

「一つだと?それ程強力な個体の侵入は想定外だな・・・了解した、我々も至急其方に向かう」

「どれくらい掛かりそうだ?」

「五分で向かう」

「了解、待ってるぜ」


通信を切ったヒンギルはすぐさま二人に指示を出す。


「現場の状況を確認次第、まずは死傷者三名の安否確認を優先する。まだ生きていれば俺が城まで飛ばす」

「君の光魔法って自分以外に使えるのかい?」

「生きていれば使える、死んだ奴は飛ばせない。おい、嬢ちゃん」

「何ですか?」

「自分の判断で構わねぇ、使えるモンは全て使え。いいな?」


出し惜しみはするなと、ヒンギルはアルナイルに告げる。


「光魔法を使っていいんですね?」

「そうだ、判断は任せる」

「分かりました」


その時、丁度石橋を渡り切った三人は、遺跡内部から出てくる数人の騎士達を目撃した。


肩を借りて歩いている者、背負い担がれている者、明らかに満身創痍と一目でわかった。


三人は急いで騎士達に駆け寄る。


「っ!ヒンギルさん!非常事態が発生しました!」


一人の騎士が此方の存在に気が付き声を荒げた。


「何が起きた?」

「地下遺跡最下層内部にて、一体の正体不明の魔物による襲撃を受けました!」

「被害は?」

「騎士団長一名、及び副団長一名の死亡を確認、我々負傷者が四名、内一人は瀕死の重傷です!」


騎士からの報告により、三人の表情は更に険しいモノになる。


「残りの二人はまだ中に居るのか?」

「我々を逃がす為に騎士団長二名が遺跡名部に残り、現在魔物と戦闘中です!」


状況を理解したヒンギルは、一先ず負傷者を飛ばす事にした。


「星騎士長には既に連絡を取った、もうすぐ到着するだろう。まずはお前ら負傷者を城に飛ばすぞ、いいな?」

「分かりました・・・我々が不甲斐ないばかりに申し訳ないっ!!」

「後の事は任せとけ、光魔法〈光への帰路〉(ホーム)


ヒンギルが魔法を発動すると、四人の騎士達は光に包まれ姿を消した。


「今のがヒンギルさんの光魔法・・・初めて見ました」

「感想は後回しだ、これから遺跡内部に残っている者達の応援に向かうぞ」

「それがいいね、ダン長の合流を待ってたら中に残ってる二人が危険だ」

「了解しました」


三人はすぐさま戦闘準備に取り掛かる。

アルナイルは魔力を錬り上げ、ヒンギルはナックルガードを装着し、ファンは剣を抜いた。


「行くぞ」

「はいよ」

「はい」


そして三人は地下遺跡最下層内部へと続く入口を走り抜けて行った。



________________________


 遺跡内部に残った騎士団長の二人は、この場を己が死地だと覚悟を決めていた。


最下層内部で待ち伏せ襲撃し、二人の騎士を殺した未知の魔物から感じる気配から、自分達二人だけでは到底及ばない強さを持っていると悟ったからである。


だが引く訳には行かない。

負傷した騎士を逃がす為の時間と、応援を呼び合流し駆け付けて来るまでの時間を稼がなければならない。


この魔物は明らかに狂暴で攻撃的であり、二人を殺せばすぐさま逃げた騎士達を襲いに向かう事は想像に難くない。


もし魔物に殺されるとしても、逃がした騎士達が安全な場所へたどり着くまでの時間は最低でも耐える。


「向かってくるぞ!避けろ!」

「分かってる!」


全長およそ十メートはあるであろう巨体の魔物が、大きく口を開きながら二人に向かって突進してくる。


騎士の頭からつま先までを余裕で嚙み砕ける程に開かれたその口内には、無数の鋭い歯がびっしりと敷き詰められていた。


二人はぎりぎりの所で左右に突進を避ける。魔物は二人が避けたと分かると、今度は振り向きざまに二人に目掛け、己の太く強靭な尻尾を薙ぎ払った。


一人は後方に跳んで回避する事が出来たが、しかし一人は間に合わなかった。


跳んだ直後の騎士の太腿に尻尾が直撃し、空中で回転しながら壁に叩きつけられる。


「おい!無事かっ!?」


もう一人の騎士が声を掛けるがうめき声一つ出さず、ピクリとも動く気配も無い。


「くそったれっ!!」


無事を確認しようにもこの状況では不可能と判断し、一人になった騎士は再び魔物と向き合う。


自分まで殺されてしまえば、次の標的は外に逃がした負傷している騎士達になってしまう。


今自分が出来る最善で最良で且つ優先すべき事は、体力尽きるまで敵の攻撃を避け続け、応援が来るまで魔物を遺跡内部に留める事。


魔物が再び騎士に目掛けて一直線に向かってくる。

突進してくる魔物を正面に、騎士が覚悟を決めて動きだそうとした。


その瞬間__


〈暴風〉(ゲイル)!」


何処かから放たれた魔法が魔物を捉えた。

遺跡の壁を突き破り吹き飛ばされる魔物に、騎士は何が起きたのか確認する為に魔法が飛んできた方向に視線を向ける。


「いい魔法だね、アルナイル君。咄嗟の判断、上出来だよ」

「ありがとうございます」

「おい、無事か!?応援に来たぞ!!」


遺跡の入り口から此方に声を掛け向かってくる三人が目に映る。


「ヒンギルさん!」


予想以上に速い応援の到着に、騎士は思わず安堵した。

だが状況はまだ変わっていないのだ、今の一撃で魔物を仕留めれたとは思えなかった。


騎士は再び気を引き締め、ヒンギル達と合流するのであった。



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