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今回の任務に参加している騎士達は、皆等しく強者である。
地下遺跡の存在を知っている者達でもあり、信頼と実績を持った優秀な彼らは誰一人として油断など持ち合わせいない。
ヒンギルの隊に振り分けられ、そこから更に四人一組に班分けされた彼らもまた同様である。
自分達の担当する道を探索し進んでいた一つの班が、他の班より一足先に地下遺跡最下層に到着していた。
彼らは地底湖周辺の探索を開始し、あるモノを見つけた。
「なんだこれは?」
それは無数の魔物の死体であった。
正確には死体ではなく残骸と言った方がいいだろう。何故なら転がっている魔物の死体は、一つ残らず原型を留めていないからだ。
地面には大量の手足や頭部が転がり、岩壁には血や臓物がへばり付いている。
騎士達は警戒しながらそれに近づき、魔物の残骸とその周辺を詳しく調べる事にした。
「これは・・・事前に報告されていた魔物と特徴が一致しているな」
「あぁ、だがその魔物達が何故殺されているのかが問題だな」
「ただ殺された訳ではないと思う」
周辺を調査していた一人の騎士が戻ってきた。
「どういう事だ?」
「地面に転がっている腕や脚、それから頭部の数を数えてみたんだ。その結果、足りないモノがあると分かった」
「足りない?何がだ?」
「胴体だ、胴体部分が手足や頭部に対して明らかに不足している」
「胴体部分だけ持ち出されたと?」
「もしくは喰われたかのどちらかではないかと思う」
「共食いの可能性は?」
「いや、この魔物による共食い行動は確認されていないな」
騎士達は状況を整理して思考していると一人の騎士が口を開いた。
「おそらくだが、地下遺跡に棲み付いたこの魔物を捕食する別の魔物が、新たに地下遺跡に侵入したのではないか?」
「なるほど、だとすると厄介だな。残骸から見るに魔物の大きさは一、五メートル程と推測出来るが、それを捕食する魔物となるとかなり大型の魔物になるぞ」
「あぁ、それにもしそうだとすれば大型の魔物が通れる程、大きく広い侵入経路がある可能性がある」
「どうする?一度ヒンギルさんに報告するか?」
「いや、通信板は魔力を大分使う。出来れば魔物の姿も纏めて報告したいのだが・・・」
四人の騎士達がどうするかを話し合っていると、何者かが此方の方に近づいてくる気配を一人の騎士が感じ取った。
「警戒、俺の左手方向だ!」
すぐさま四人の騎士は近くの物陰に隠れ警戒態勢に入る。
暫くすると、複数の足音のようなモノが聞こえてくる。一人の騎士が正体を確認しようと、物陰から少しだけ顔を出した。
近付いてくる者達の正体は、別の班の騎士達だった
「攻撃するなよ、俺達だ」
軽く両手を上げて声を出しながら岩陰から身を晒した騎士達を確認し、近づいてきた騎士達と合流してお互いの状況を報告しあった。
「___という訳だ」
「なる程、此方の方でも魔物の残骸を発見している。手足を残して胴体部分が無くなっているモノが多かったな」
「やはり捕食者がいると思うか?」
「それを確認する為、我々は地底湖周辺を探索していた。だがそれらしき魔物の姿は未だ確認出来ていない」
「となると、やはり地下遺跡内部が怪しいな」
騎士達は地底湖の中心にそびえ立つ地下遺跡に目を向ける。
「我々も同じ考えだ。だが四人だけでは危険かと思い、まだ確認はしていない」
「だが今は合流して八人いる。魔物がいるかどうかの確認だけでもして一度、ヒンギルさんに報告するというのはどうだ?」
「同意見だ」
こうして二つの班、計八名で地下遺跡内部に向かう事になった。地下遺跡には十字方向に掛けられた計四つの石橋を渡って行く事が出来る。
一番近い橋を渡って地下遺跡へと向かう途中、一人の騎士が緊張した様子をしていた。先程、近付いてくる騎士達の気配をいち早く察知した騎士だ。その様子を不審に思った同じ班の騎士が声を掛ける。
「おい、どうした?大丈夫か?」
「・・・地下遺跡内部に魔物の気配を感じる、しかもかなり危険な気配だ」
「なに?わかった、皆に警戒を強める様に警告するとしよう」
それを耳にした騎士達は限界まで警戒を強める。そのまま地下遺跡にたどり着き、遺跡内部へと続く入り口の前まできた。
「総員戦闘準用意!」
それを合図に騎士達は剣を抜く。
「では行くぞ」
最深部内部は広いドーム状の造りになっていた。
全員が内部に入り辺りを見渡す。だが物陰一つないその空間には、魔物の姿は確認出来なかった。
班の指示役をしていた二人を先頭に、辺りを警戒しながらゆっくりと中心へ移動する。
「魔物は何処だ?見当たらないぞ」
「だが気配は感じるのだろう?」
確認しようと二人が振り向いた瞬間_____
「二人とも横に飛べ!!上からくるぞ!!!」
先程の騎士が二人に向かって大声で叫んだ。
それを耳にした二人は反射的に上を見る事なく、即座に思いっきり横に回避行動をした。
瞬間、二人がいた場所に巨大な物体が落ちてきた。
落ちてきたソレは明確な殺意をもって二人の事を殺す為・・・否、捕食する為に天井に張り付き待ち構えていたのである。
不意打ちの攻撃を避けられたソレは、苛立ちを含めた咆哮を騎士達に浴びせた。
ソレの瞳に映った騎士達の表情は、酷く緊張し強張っている。
対してソレが騎士達に向けるモノは、大きく開いた口と捕食者が獲物を狙う時の瞳、それだけだ。
そして狩りが始まった。




