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星が照らす行先は  作者: 健健
二章 地下遺跡
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 依頼当日の午前四時


城内の広場には既にアルナイルは立っていた。集合時間は五時なので、一時間も早い時刻である。当然ながら広場内はアルナイル以外の人影は見受けられない。

別にアルナイルも意図してこんなに早く、広場に来た訳ではない。


国からの依頼というとても重大な任務に、絶対に遅れないよう早寝早起きをした結果だ。

それにしって一時間前は早すぎたとアルナイルは後悔している真っ最中であった。


(・・・暇だな~)


それから数分、暇を持て余していたアルナイルだったが突如として閃いた。


(訓練場ってこの時間でも使えるのかな?)


一時間も時間があるので、暇するよりかは身体を動かそうと思い立ったアルナイルは訓練場に向かう為、広場から立ち去っていった。


訓練場の入り口付近まで来たアルナイルは訓練場から明かりが灯っているのを確認して安心した。もしかしたら利用時間外なのかも知れないと不安に思っていたがどうやら杞憂だったようだ。


訓練場に入ると男が一人、こちら側に背を向け剣を振り鍛錬をしていた。他の利用者はなくその男一人だけである。

アルナイルはこんな時間に訓練場を利用している者に感心しつつ、邪魔にならない様に男とは反対の場所に移動しようとした。


「待ちたまえ」


移動しようと視線を外し一歩足を踏み出した瞬間、後ろから声を掛けられたアルナイルは反射的に振り返る。


振り返ったアルナイルの目に映ったのは、こちらに向かって歩きながら近づいてくる、先程まで鍛錬をしていた男だった。先程は背を向けていたので分からなかった男の顔を見て、アルナイルは慌てて姿勢を正して挨拶をした。


「おはようございます、ダンさん」

「おはよう、随分と早い時間に来たんだな」


一人鍛錬をしていた男の正体は星騎士長のダンであった。


「私以外にこの時間に利用者が来るのは珍しいのでな、つい声を掛けてしまった」

「いえ、私も思いのほか早く来てしまって暇を持て余すよりは、と思いたってきただけですので」

「そうか」


言いつつ、ダンは訓練場の時計を確認する。時計の針は午前四時十分を刺している。


「まだ集合時間まで時間がある。丁度いい、少しいいかね?」

「はい、何でしょうか?」


ダンの視線は力強くアルナイルの瞳を捉えていた。それに気付いたアルナイルは、少し身構えながらダンの言葉を待つ。


「私は君の実力を知らないのでな、一つ手合わせをしたいのだが・・・いいかね?」

「えっ?」


アルナイルの想定していた事とはあまりに想定外の言葉であった。



_____________________________


「では簡単にルールを決めるとしようか」


ダンからの提案によって、一対一の手合わせをすることになったアルナイルは、十メートル程の距離を開けた状態で向かい合っていた。


「武器、魔法、徒手、如何なる攻撃手段手段も問わず相手に一撃入れた方の勝利、というのでどうかね?」

「わかりました」

「剣は鞘から抜かないので安心したまえ」

「お気遣い感謝します」

「そっちは本気で来てくれて構わない」

「本当にいいんですか?」

「若い者に後れを取る程、星騎士長の肩書は軽いモノではないぞ?」


そんな事を言われれば、逆に燃えてくるのがアルナイルである。


王家の盾である星騎士。その頂点である聖騎士長との手合わせという千載一遇の状況に、喜びつつも内心ではビビっていたアルナイル。


だがしかし、ダンの言動から見て取れる余裕の態度が、アルナイルの闘志に火を付けた。


「では私が勝ったら次の星騎士長は私、と言う事ですか?」

「中々大きな口を持っているようだな。ベナトの若い頃を思い出す」

「ぜひとも詳しく聞きたい話ですが、また別の機会にゆっくりお話できる時まで取って置く事にします」

「それもそうだな、時間も少ない。では始めよう」


ダンが鞘に収まったままの剣を構え、アルナイルは両手を前に構える。


「先手は譲ろう、何時でもかかって___」

〈風切〉(エアカッター)


ダンが言葉を発するや否や、アルナイルが魔法を放つ。


しかし、半ば反則的なアルナイルの不意打ちの魔法を、ダンは身体を半身ずらして軽く避ける。


「そういう所はベナトに似なくてもいいんだが」

「娘なので似るのは当然です、〈風切〉」


言いながら再び魔法を放つ。

対してダンは、今度は避けずに剣で弾いた。


「ふむ、狙いは正確で威力も十分。いい腕だ」

「簡単に弾かれたら困ります。私の使える魔法の中で、上位に入る攻撃魔法なんですけど」

「そんな魔法を人に向かって使うなと、教えて貰わなかったのかね?」

「ダンさんなら大丈夫かと思いまして。実際弾かれましたし」

「成程な・・・では私の番だな」


言い終わるとダンは剣を右下に構え、アルナイルに向けて走り出した。


その移動速度は常人のそれでは無い。

アルナイルはダンが動き出した瞬間にそれを察知し、反射的に魔法を唱える。


〈暴風〉(ゲイル)!」


地面を抉りながら向かってくる魔法を放たれたダンは、しかしそれを簡単に避けてアルナイルに接近する。


移動速度を乗せた右下からの切り上げがアルナイルに放たれる。


〈突風〉(ガスト)!」


咄嗟に自身に〈突風〉を放ち後方に避ける。

それに対しダンは間髪入れずに距離を縮める。


〈創造〉(クリエイト)(ロック)


アルナイルの目の前に二メートル台の大きな岩が現れる。


「〈形状変___」

「遅いな」


創った岩に〈形状変化〉を唱えようとした瞬間、ダンの攻撃によってその岩は粉々に破壊されてしまう。


「〈形状変化〉を唱える猶予等、実戦においてそうあるモノではないぞ?」

「くっ!〈激炎〉(ブレイズ)!!」

「何!?」


右手から炎を放射しながら、前方に向けて薙ぎ払う。

これには流石にダンも足を止め、後方に飛ぶように避ける。


「まさか火属性魔法も使えるとはな、その若さで大した奴だ」


これまでの情報によりアルナイルが、最低でも水・木・火の三属性の魔法が使えると判明したダンは素直に褒め称える。


「まだ魔力に余力はあるかね?」

「これくらいなら今日の依頼には影響は出ませんよ」

「魔力も豊富と・・・才能の塊だな」


ちらりとダンは時刻を確認する。時計の針は四時半を刺している。


「時間はもう少しあるが、続けるかね?」

「勿論です」

「よかろう」


こうしてアルナイルとダンの一度目の手合わせは続き、集合時間ぎりぎりまで行われたのであった。




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