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星が照らす行先は  作者: 健健
二章 地下遺跡
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 時計の針が午後五時を刺した頃、自身の鍛錬の為にと仕事を終えた兵士や騎士達が、訓練場へと訪れる。


「ん?なんだあれ??」


訓練場へと足を踏み入れた兵士達の目に真っ先に映った光景は、訓練場の片隅で大きな岩や大量の石ころ、砂山に囲まれた女性の姿であった。


初めこそ疑問に思う兵士達。が、すぐに理解する。

あれは魔法か何かの訓練なのだろうと。


瞬く間に兵士達の興味は薄れ、自身の鍛錬の為に空いている場所へ歩いていくのであった。




 岩や石ころ、砂山に囲まれている女性

 名をアルナイルという


「・・・〈形状変化〉の習得には、まだまだ時間が掛かりそうですね」


四時前からかれこれ一時間、アルナイルは土属性の〈形状変化〉を習得する為に〈創造〉(クリエイト)で岩を創り、それに対して〈形状変化〉を行うという動作をひたすらに繰り返していたのだ。


アルナイルの周りの光景を見る限り、思うような成果は出ていないようだ。


「うーむ、魔法自体はちゃんと発動はしている。問題は制御が全然ダメな事だな!」


一時間もの間、アルナイルの訓練を横で見ていたヒンギルがそう結論付ける。


ヒンギルの見立て通り、アルナイルの〈形状変化〉はしっかりと発動はしているのだ。


してはいるのだが、本人の意図する効果が発動しない。


「発動自体は成功しているのがもどかしいですね」

「最低でも〈創造〉(クリエイト)で創った岩と地面を〈形状変化〉で固定させる事が出来ないと、実戦で使い物にはならんぞ」


土属性魔法の戦闘での主な使用方法は、足場の確保、そして身を守る為の盾を創る事だ。


そのどれを取っても、〈形状変化〉での固定が重要だ。〈創造〉(クリエイト)でどれだけ大きな岩をを出しても、所詮は只の岩でしかない。


使えない事もないが、〈形状変化〉を使用できればその岩の使い道は多様に広がる。


「もう一度やってみます」


そう言いながら、アルナイルは再び両腕を岩に向けながら魔力を錬る。


「そういえば一つ聞きたいんだが、嬢ちゃんはどんなイメージをしているんだ」

「〈形状変化〉の事ですよね?」

「ああ」

「そうですね・・・上下に伸ばす様な押し潰すようにといいますか・・・広げる様にイメージして岩の厚さや幅を調整しようとしてます」

「ふむ、成程。だがな・・・」


言いながらヒンギルは、アルナイルの周辺を見た。


「今の嬢ちゃんの〈形状変化〉の結果を見ると、広げるというよりかは、バラバラに分解してるってのが正しい言い方なんじゃないか?」

「分解ですか?」


突然のヒンギルの言葉に理解が追い付いていないアルナイルに対し、ヒンギルが更に続ける。


「一つの大きな岩を、大量の石ころに分解した。砂山に関しても、砂粒程の小ささに岩を分解したって事になるんじゃねえか?」

「なるほど・・・」


言われてみると確かにそうだと気が付いたアルナイル。


「今度はイメージを変えてやってみます」

「その方が良いかもしれん」


岩に向け伸ばしていた両手に魔力を集中させ、アルナイルはヒンギルから得た助言を元にイメージする。


十分な魔力を錬り終え、今日で何度唱えたかわからない魔法を発動させる。


「〈形状変化〉」


しかし今回に限っては、岩が大量の石ころになったり砂山になったり、ましてや何も変化が無いといった事にはならなかった。


「・・・!やった!!やりましたよヒンギルさん!!!」

「なんだよ嬢ちゃん、やれば出来るんじゃねぇか」


アルナイルの目の前には、アルナイルの身長より少し高いくらいの岩壁が出現していた。


否、アルナイルの唱えた〈形状変化〉によって、只の大きな岩だった物が岩壁へと形を変えたのである。


喜ぶアルナイルを横目に、ヒンギルは岩壁に近づき何かを確認するかのように、岩壁の周りを歩いたり叩いたりしていた。


その行動を不思議に思ったアルナイルが、その行動についてヒンギルに質問する。


「ヒンギルさん、何をしているんですか?」

「ん?いやなに、ちょいと確認してるんだ」

「確認ですか?」

「そうだ、嬢ちゃんは傭兵だろ?これが実戦で使えるかどうか確認って事だ」

「なるほど」


それから数分程確認作業は続き、ヒンギルによる岩壁の評価がアルナイルに告げられる。


「さて、俺なりの評価をいうぞ」

「お願いします」

「まず〈形状変化〉による岩壁の生成速度だが、実戦で使うならもっと早い方が良い」

「はい」


「大きさに関しては、縦の長さは嬢ちゃんの身長を超えてはいるからいいんだが、横幅は今の三倍は欲しいな。今が大体一メートルだから三メートル程だ」

「・・はい」


「あと根元の方を見てみろ?今まで程の量とはいかないまでも、それなりの量の砂と石ころが転がってるだろ?岩の全部を壁に出来た訳じゃねぇ、半分は無駄になっている」

「・・・はい」


「最後に強度問題、地面との固定化は見た目は上等だ、だが見た目だけだ。殆ど表面部分しか固定されてないから倒れやすい。この岩壁に隠れて敵の攻撃を受けたら、嬢ちゃんはこの岩壁に潰される事になるだろう」

「・・・・はい」


「それに厚さも足りない。大体二十センチの厚さをしているが、この程度なら___」


ボコッ!!


「こんな風に、魔力でちょっと強化した肉体で殴るだけで貫通する。最低でも五十センチは欲しいな」

「・・・・・・」


ヒンギルが腕を引き抜き、そのまま倒れていく岩壁を眺めるアルナイルには、もはや先程までの喜色の表情は見られない。


「これらを踏まえた総評を告げる」

「・・・覚悟は出来てます」


この時のヒンギルの表情を、アルナイルは暫く忘れる事が出来なかった。


「全然ダメだな。大きさや強度もそうだが一番の問題は、〈創造〉と〈形状変化〉を同時に発動出来ない事だ。嬢ちゃんは一度、〈創造〉で岩を創ってそれから〈形状変化〉を唱えて岩壁にしたが、〈創造〉(クリエイト)だけで岩壁を創れる事が理想だな。〈創造〉と〈形状変化>の両方を使える奴が、それを同時に使えないって事はない。最低でもこれが出来ないと、三等級なんざ星に願っても叶わないぜ」


「・・・・・・」


矢継ぎ早にアルナイルの魔法を指摘するヒンギルの表情が傭兵ギルドのギルド長、ファンとそっくりな、人をおちょくる時のにやけ顔だったからである。


(・・・おのれギルド長、許すまじ、、)




     ~傭兵ギルド・ギルド長室にて~ 

                     

「僕に対する理不尽な怒りを感じる・・・まぁいっか、何時もの事だしね」







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