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星が照らす行先は  作者: 健健
一章 アルナイル
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 心から強く思っている事。


ヒンギルから伝えられた光魔法の絶対条件。

アルナイルは自らに問い掛け考える。


(私が想っている事・・・私の願いは_____)




 私は島の中心から離れた小さな村で、何一つ不自由なく、とは言えないまでも普通に暮らしていた。七歳の時に父を事故で亡くしたが母が私が泣いた分だけ笑い励ましてくれた。


夜中にふと目を覚ますと、母が居間で一人泣いていた事があった。私の前では母は絶対に泣かなったのに。

子供ながらに母を支えようと決意したのはその時だ。大人と言われる年齢になってようやく、当時の母の心境と心の強さ、偉大さを知った。


 そんな母を住んでいた村ごと亡くしたのは十歳の時だ。

夜中にこっそり星を眺めるのが好きで、何時ものように家を抜け出し村はずれで星を眺めていた。

戻った時にはもう村は壊滅状態だった。


建物には火が放たれ広場には逃げ惑う村の人達が、賊の手に掛けられ倒れていく光景が広がっていた。私は恐怖よりも先に母の事で頭がいっぱいになって村の外から家に走った。


家の裏手に着いた直後、目に映ったのは母が賊の一人に追われながら、此方目掛けて逃げている光景だった。


私がいた家の裏手は森になっていて、そこに逃げるつもりだったのだろう。

私はその時初めて恐怖が湧いた。


母がこのままこちらに逃げてきたら私も見つかってしまう。逃げ切る事も抵抗するのも無理だと悟った。私は恐怖で身体が動かず母がこちらに向かってくるのを見る事しか出来なかった。


その時、母と目が合った。

まだ少し距離が離れていたけど、確かに目が合った。

母は笑っていた。


私と同じ恐怖に怯え苦しみながら逃げていた表情を、私と目が合った瞬間笑顔に変えた。そして母は急に立ち止まりすぐそこまで迫っていた賊に身体ごとぶつかった。二人が衝撃で倒れ込む。


「逃げなさい!生きるのよアルナイル!!」


声を張り上げながら母は起き上がり、私の方ではなく逆に村の方に向けて走り出した。

走り去っていく母の背中から目を離せないでいると、賊が起き上がり母を再び追いかける。


そこでようやく私の身体は動き出した。森めがけて走った。村長に似た人の叫び越えも、隣に住んでいるいつも一緒に遊んでいる子に似た泣き声も、母の声そっくりの女の人の悲鳴も______


全部気のせいだ!気のせいだ勘違いだ!!


涙を流しながらひたすらに走った。夜が明けるまで走り王都に続く一本道に着いた時、身体と心と眠気が限界を迎え、道にうつぶせに倒れ意識を失った。


 そしてベナトばあちゃんに拾われた。

私を家に連れてきて面倒を見てくれたけど、私は長くは居れないと薄々感じていた。王都の教会は孤児を引き取っている事は知っていた。私もいずれはそこに行くのだろうと。


けど、その時の私はベナトばあちゃんから離れるのが嫌だった。見知らぬ場所に行くのが怖かった。

私はベナトばあちゃんに必死で自分を売り込んだ。村も知り合いも母も、全てを亡くしても私は生きていかなきゃならない。母の最期の言葉もそうだった。


文字の読み書きは母が教えてくれたのである程度は出来た。幸な事に、私でも少しはベナトばあちゃんの仕事の助けにはなったようで、そのまま家に置いてくれる事になった。


 それから数年後、私は王都で働いていた。

ベナトばあちゃんとはお互いに唯一の家族だと胸を張って言える程度の仲になっていた。


ベナトばあちゃんの事は亡くした母の変わりなんかじゃなく二人目の母だと大切に思っているが、母と呼ぶにはなんだか気恥ずかしくてばあちゃんと呼ぶ事にした。


王都に出て働き始めて数年、私は母の死を受け止めていた。

様々な人と関わり色んな出来事を経験してようやく区切りをつける事が出来た。今私がこうして王都で働いているのは、私に起こった様々な出来事の巡り合わせによる結果だ。


私の村が襲われ母諸共村が滅んだ事も、ベナトばあちゃんに拾われ再び家族を得て幸せの日々を送っている事も。


母の死が今の私の幸せを創っているとは言いたくない、だけど私の運命は物語っている。これも今の私の運命を創る為に必要な出来事パーツの一つだったのだと。


でも、だけど、だからと言って、これから先の運命が決まっている絶対のモノだと私は思わない。

運命が様々な出来事の巡り合わせなのだとしたら、一つ一つの出来事を変える事が出来れば、結果的に運命は変えられる。


村が襲われ母が襲われている光景を、私は唯見ている事しか出来なかった。けど母の最期の行動と言葉で私は生きている。

ベナトばあちゃんに拾われた時も、ベナトばあちゃんから離れたくないと思い行動しなかったら、私は孤児院に送られただろう。そうなっていれば、今の様な幸福な生活を送れたか分からない。


母の死からもう五年。もう数年経ったら母との思い出も薄れていくだろう。今だって、母の事を毎日考えているかと言われば嘘になる。母の死が現実とともに、私の中で過去の出来事になっていくのを実感している。


けれどもあの日からずっと、考えてしまう想いがある。

あの日私は本当に、逃げる事しか出来なかったのか? と___


当時こそ、この考えに囚われ罪悪感に潰されそうになったが、冷静になって考えれば私は逃げる事が正しい行動だと理解できる。

だけど、もし____


もし、私が星を眺めに村の外に言っていなかったら

あの時、母は私を探して逃げ遅れたのではないか?


もし、私に力があれば

母を追っていた賊は一人だった。母を助けて一緒に逃げ延びる事が出来たのではないか?


 私は特に後者の考えが強かった。

私の村は力有る者達に滅ぼされた。村を、家族を、己を護る力が無いが故に。私は力が欲しかった。


だけど私はまだ子供で生活の事もある。中々ベナトばあちゃんに言い出せなかった。けどベナトばあちゃんと王都で暮らせるようになって、どんどん想いは強くなり、ある日思い切って打ち明けた。

魔法を習いたいと


理由は言わなかったけどベナトばあちゃんは私が魔法を習いたがっていると薄々気付いていた様で、笑顔で首を縦に振ってくれた。


今思えばこの時の決断も、私の未来の運命を変えた出来事だったと思う。


魔法を習い始めた私は自身の魔法の才を知った。知ってしまった。

魔力を練るのが楽しい。知識を得るのが楽しい。魔法を使うのが楽しい。

魔法を習う程、魔法の才を知れば知る程、私は魔法にのめり込んでいた。


魔法という力を得た次は、これを存分に発揮できる場所を求めた。

今の仕事と生活に文句など何一つとして無いが、私は身を置く場所を変える決意をした。


ベナトばあちゃんが傭兵の経験があると気付いていた私は、ベナトばあちゃんと同じ傭兵を選んだ。ベナトばあちゃんの伝もあり、私は早くも一か月後には傭兵として働ける事になった。


 これから先の未来に期待と不安を抱きつつも、私は浮かれていたんだと思う。訓練所で偶然ヒンギルさんに出会って、光魔法を教えて貰える事になって、才能が有ると言われて。舞い上がっていたんだと思う。


心から強く思っている事


そう問われるまで、私は何で魔法を習ったのか、どうして力を得ようとしたのか、その理由を忘れてしまっていた。


「今は思い付かなくてもいいんだぜ?そんな急に言われてもって話しだしな」


暫く黙り込んで考えていた私に気を使ってか、ヒンギルさんが声を掛けてくれた。


思えば今日、こうしてヒンギルさんに合わなければ、私はどうなっていたんだろう?初心を忘れ自分の才能を鼻に掛けた嫌な奴になっていたんだろうか?


分からない。分からないが、今日ヒンギルさんに合った事も私の運命の巡り合わせの一つだ。


「ヒンギルさん、ありがとうございます」

私は思わずヒンギルさんに感謝の言葉を伝えた。


「あ?なんだ急に?」


ヒンギルさんは不思議そうな表情し、思わずクスッっと笑ってしまった。


「忘れていた想いを思い出させてくれたので」


そう告げるとヒンギルさんは笑顔になった。


「その様子だと嬢ちゃんには有るんだな?心から想うモンが」

「はい」

「なら早速試しに光魔法が発動できるかやってみるか」


頷いた私は魔力を練っていく。


「魔力を練ったらひたすら嬢ちゃんの想いを籠めろ。成功すれば魔法が発動する」


私は魔力を練りながら籠める。ひたすら私の想いを籠める。


私の願い、強く思っている事____


少しずつ練り上げた光の魔力の輝きが身体の中で強くなっていく


私の想い____


更に魔力の輝きが強くなっていく


そして____


「光魔法・・・発動」



そう呟いた瞬間、訓練場は光に包まれた。




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