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星が照らす行先は  作者: 健健
一章 アルナイル
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 時刻は七時


ふと訓練所を見渡すと、気が付かない内に数人がアルナイルと同様、魔法の練習をしたり身体を鍛えていた。

ヒンギルはその様子を見たアルナイルに小声で話す。


「少し離れるか、いくぞ」

「え?」


そう言うなり訓練所の隅の方に移動し始める。疑問を持ちながらもヒンギルの後を追いかけ移動していると、アルナイルの疑問に答えるように足を進めながらヒンギルが説明する。


「別に光魔法がやましい魔法って訳じゃ無いんだがな。あの中に関係者がいるとも限らないからな」

「関係者?もしかして王家の事ですか」


ヒンギルが無言で頷く。


「王家は「継承者」、つまりは光魔法を使える者を見つけたら囲もうとするからな。俺が光の魔力持ちって判明した時は面倒だったぜ」

「そういえば、ヒンギルさんはどうやって光の魔力を持っていると判明したんですか?」


光の魔力持ちは自分では普通は気が付けない。アルナイルは先程まで自分がそうだったのを思い出してヒンギルに聞いた。


「年に一回、傭兵ギルドに国の兵士が派遣されるんだろ?俺がベナトとパーティーを組んですぐの時にそれがあってな。その時の派遣には、兵士の付き添いに王家の人間が居た。ギルド長との顔合わせの為に傭兵ギルドに来ていたその王家の人間が、依頼の打ち合わせで来ていた俺の顔を見るなり急に近づいて来てな。暫く俺の事を凝視した後、ギルド長の部屋に一緒に付いてこいって言われた。逆らうのは面倒だと思って付いてった」


「それからどうなったんですか?」

「そいつはギルド長に挨拶や諸々の話をした後言ったんだ。俺を王家の兵士として迎え入れたいとな」

「随分急な話ですね」


そうだろう?と笑いながら話を続ける。


「ギルド長も驚いてな?人払いして俺とギルド長とそいつの三人だけになって改めてそいつが理由を説明した」


要約すると


その王家の人間は、兵士の派遣の付き添いも兼ねて光魔法の素質有る者を探していた。

傭兵ギルドで光魔法の素質がある者に出会い、それがヒンギルであった。

王家は光魔法の素質有る者は大いに歓迎し待遇する。


「だから傭兵を辞めて王家に来ないか?勿論来るだろ??って感じだったからイラついてその時は断ったんだ。俺も若かったからな、上からの態度が気に入らなかった。以外にもその王家の奴は無理に引き留めようとはしなかった。気が変わったらギルド長を通して連絡しろってな。結局俺はこの話に乗る事にした。普通に旨い話だからな。だが傭兵自体は性に合っていたしベナト達の事も気に入っていた。だから条件を付けたんだ」

「条件ですか?王家の人はそれを受け入れたんですか?」


アルナイルが問う。


「あぁ。内容は当時俺が組んでいたパーティーが解散する事になったら王家に入る、これだけだ。王家も気長に待つと言ってたな。それから十数年、傭兵を続けてベナトの奴が抜けるってなってな。約束どうり王家に入って色々あって今、嬢ちゃんに光魔法を教える事になってるって訳だ」


丁度、訓練所の隅の方に着いたタイミングで話を終えて、アルナイルの方に身体を向けながらヒンギルが言う。


「巡り合わせってのは面白いもんだな、嬢ちゃん。ちゃんと光魔法が使えるようになるまでは面倒見てやるからな」


親指を立て笑顔を向けるヒンギルに、アルナイルは同じような事を感じていた。


「ありがとうございます。ヒンギルさんとこうして出会って、光魔法を教えて貰える機会に出会えて嬉しいです。それもベナトばあちゃんの知り合いなんて何か運命的な物を感じてしまいますね」

「運命とは又大きく出たもんだな」


そう言い合った後、改めて光魔法の訓練の続きとなった。



____________________________


「それじゃ今から改めて、光魔法を教える訳だが・・・実は正直な話俺が教えられるのは殆どない!」

「え?」


急にそんな事を言われたアルナイルは困惑するしか無かった。そんなアルナイルにヒンギルガ言い放つ。


「何故ならさっき言った通り、光魔法は光の魔力を練るようにする訓練に一番時間を使う。だが嬢ちゃんはそれがもうすでに出来ている状態だ。さっきも言っただろう?」

「はい」

「なら、俺が教えられるのはただ一つ。最後の総仕上げ、光魔法という名の固有魔法を完成させる手助けさ」

「・・・なるほど」


務めて冷静に返事を返したアルナイルだが、声色には嬉しさが隠しきれていなかった。内心はもう心臓もバクバクで気分は最高潮だ。


ベナトに内緒で固有魔法を習得する為に参考になればと、書斎から本を持ちだし朝早くから訓練所に来てみれば、いつの間にか光魔法という聞いた事もない魔法の、それも固有魔法を教えてもらう事になっているのだから。舞い上がって然るべき事だろう。


「それで肝心の光魔法の習得方法なんだがな、ちと特殊でな」

「特殊?」

「嬢ちゃんはベナトから魔法を習ったんだろ?どんな感じに習ったか覚えてるか?」


問い掛けれられたアルナイルはベナト達魔法の師との訓練の日々を思い出しながら答える。


「えーと・・・初めに魔力の練り方から教わって、次に各属性の魔力の性質の勉強をしました。魔力を使って自然の力に干渉し強制的に発動させるのが魔法であり、属性ごとに干渉出来る力が違う事も教えて貰いました。それから魔法の詠唱や実際に発動させる所を見て学んで、後はひたすら反復練習の繰り返しです」


その通りだと、ヒンギルは頷く。


「最初は魔力の鍛錬、次に座学、魔力の性質と魔法の知識。そして最後に、魔法発動の詠唱と発動させる為の自身の才能確認も兼ねた反復練習。一般的な流れだ、だが光魔法は普通の魔法とは違う。光魔法の発動には知識も才能もいらないんだ」

「どういう事ですか?」

「光魔法の発動に必要なのはただ一つ。心から想っている事の強さだ」

「心から想っている事の強さ?」

「ああそうだ、信念と言ってもいい。とにかく何でもいいから自分が強く考えている事、想いを魔力に籠めて、上手くいけば光魔法が発動する。固有魔法の完成って訳だ」


ヒンギルの説明を聞いて、アルナイルは思った事を正直に言った。


「信念や想いの強さって、なんだか感情論や根性論みたいで魔法らしくないですね」


 アルナイルが考える魔法というのは、地道な努力の積み重ねであり、そこを越えても才能という越えられない壁があり、それは努力では越えられない。


どんなに強く思っても、悔しさをバネに努力しても越えられない。魔法の世界では感情を力に変えれるのは、まだ才能の壁にぶつかっていない若い者だけだ。


アルナイル自身はまだ若く才能もあり、自身の壁を見る為に前向きな感情を持って日々努力している。

だがもし、壁に阻まれた時の為に心構えはしている。

壁の前で足掻く事はしないようにと決めていた。


だが、今アルナイルが教えて貰っている光魔法は想いの強さで発動するという。

今まで触れてきた魔法とは全く異なるモノに、アルナイルは少々否定的な感情を持った結果の先程の返答だ。


そんなアルナイルにヒンギルは相も変わらず笑顔で答える。


「光魔法は特別だって言ったろ?考えるより感じた方が早いんだ」

「想いの内容は何でもいいんですか?」

「何でもいい。これだけは譲れないモノ、死んでも叶えたい願い、とにかく強く想っている事を魔力に籠める。上手くいけば魔法が発動する」

「魔法の効果は籠めた想いの内容によって変わるんですか?」

「もちろんだ。光魔法は固有魔法だからな、似れこそすれ同じ光魔法は無い」

「なるほど・・・ちなみにこの本に歴代の継承者の光魔法については書かれていなかったんですけど、どのような魔法があったんですか?」

「そうだな・・・初めの巫女の島の発展と一族の繁栄、手に届く範囲の者全てを救おうとした聖女、悉くに負けない力を望んだ元奴隷の兵士、死んだ家族に会いたいと願った女、この四人は有名だな。魔法の効果も想い通りで凄まじかったと記録されてる」


少し聞いただけで、いかに光魔法が特別で優れた魔法である事が解る内容にアルナイルは驚いた。


そしてふと、光魔法の内容を聞いて興味が湧いた事が出来た。


「あの・・・ちなみにヒンギルさんの光魔法は、どのようなモノなんですか?」


ヒンギルも光魔法が使えるのだ。アルナイルは物凄く気になってしまい問い掛けた。


「俺の光魔法が気になるか?」

「はい」

「生憎と俺は何かを護りた、救いたい、力が欲しい、そんな大層な想いは持ち合わせていなくてな」


一度言葉を止めてアルナイルの顔を改めて見ながら話す。


「俺が光魔法に籠めた想いは唯一つ、それは・・・・家に帰る事だ!!」

「・・・家に帰る?」


予想してモノとは大分違う内容に拍子抜けしてしまったアルナイルを見て、しかし、ヒンギルは真面目に答える。


「ああそうだ。その結果、俺の光魔法はどんな距離でも一瞬で家に帰ってこれる、所謂「瞬間移動(テレポート)」に近い効果が発動する」


アルナイルは驚きを隠せなかった。


瞬間移動(テレポート)って、文献にしか載っていない本当に存在するかも怪しいと言われている太古の魔法ですよね?」

「確かにそう言われているが今の時代、瞬間移動(テレポート)の様に一瞬で遠距離との情報交換が可能な技術はあるぞ。まぁ俺の光魔法の様に、物、ましてや人を遠くに飛ばすのは未だに不可能らしいがな」


そう言うと、ヒンギルはアルナイルに問い掛ける。


「嬢ちゃんはあるか?歴代の継承者の様な大層な想い、俺の様に誰でも考えそうな平凡な想い、内容は何でもいい。強く想っているのが大事なんだ」


再びヒンギルが問う。


「決して人には譲れないモンを・・・嬢ちゃんは持っているか?」




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