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第63話 先達からのアドバイス


お久しぶりです。お待たせしました、やっと更新だよ!


今回の見どころ〜٩( 'ω' )و

ヤンデレだって、成長する。

偶にはシリアスだって、やってくる。



という訳でよろしくねっ( ・∇・)ノ

 






 〝ジャクリーン平民学校〟とはーー約五十年前にエクリュ侯爵家(※というか、シエラ様)の提案の元、国の認可を受けて、レーフ侯爵家という歴史ある貴族の出資を受けて設立された学校なんだとか。





「〝平民〟って付いてはいるけれど、この学校は貴族だって通えるわ。平民だろうが孤児だろうが貴族だろうが、学ぶ意欲があるなら貴賤問わず入学を受け入れるのがモットーなの。まぁ、今でも貴族の子息令嬢は学園に通うのが主流だし? 平民と一緒に通うなんて嫌って言う人も少なくないから、金銭的な余裕がない低位貴族の子、平民になることが決まってる三男以下、それもちゃんと現実を見てる子ぐらいしか入学してこないんだけどね」


 そう言ったメノウ校長は学校案内のパンフレット(うわぁ……懐かしい……)を差し出しながら、説明を続ける。


「平民学校は十歳を越していれば、何歳だろうと入学出来るわ。でも、基本的には四年で卒業するようになってるの。成人が十四歳だからね。勿論、飛び級制度も編入制度もあるわ。カリキュラムはそこに書いてある通りよ」


 私を膝に乗せたルイ君にも見えるようにパンフレットを広げる。

 一年目は座学とかマナーとか色々教わって、二年目はそこに精霊術の授業とか剣術の授業が増えるんだね。三年目は専門科目に分かれて、四年目は提携を組んでいる職業先に臨地実習を受ける……ふぅん。小学校+職業訓練校(?)というか専門学校(?)が合わさってる感じなんだ?

 って……入学金と学費なし!?


「えっ!? 無料タダとか、それでやってけるんですか!? 運営とか維持費、どうしてるんです!?」

「あぁ、それ? ちっさいのによく分かってるわねぇ」

「アリエスの身体は小さくても精神は大人だよ。分からないはずないだろ」

「あぁ、そうなの? でも、そこら辺は一応なんとかなってるのよ」


 メノウ校長曰く。

 この学校は国からの補助金と各方面からの寄付で運営資金を確保しているんだとか。

 この学校が出来てから、平民の識字率が上がり……ついでに手に職をつけて働く人が増えた。結果として読み書きが出来ることで騙される人も少なくなり、詐欺紛い(ぼったくり)事案も激減。浮浪者でもこの学校に通えば職につけるため、治安の向上に繋がった。

 それだけでなく……優秀な人材を見つけるのにも役に立っており、今では平民出身の騎士や文官までいる。


「つまり、この学校はかなり国に貢献してるんだ。だから、補助金だって出てるし、エクリュ侯爵家(ウチ)を含めた貴族の連中からも寄付金が送られてる。それに、卒業生も寄付しているんだったか? そういうので運営費は補っているらしい」

「成る程……」


 ルイン様の話で私は納得する。

 要するに、貴族の義務ノブレス・オブリージュってヤツだよね? 高貴な人はそれに伴った義務が発生するっての。

 だから、学校に寄付するのは孤児院に寄付するのと同じなんだろうなぁ。


「とまぁ、大体の説明はこれぐらいね。他に気になる点とかはあるかしら?」

「今のところは大丈夫です。シエラ様発案だったら、多分私の記憶にある学校と似たような感じだろうし」

「………あぁ、確かに」


 もう十年もこっちで暮らしてるから時々忘れそうになるけど……私、シエラ様と同じ転生者だからね。

 ……………あっ。


「私達は、いつから通えばいいですか?」


 一番重要なところはそこだった。多分、もう新学期は始まってるよね?

 メノウ校長は「そうねぇ〜」と頬に手を当てながら、考え込む。


「通うのはそれこそ明日からだって構わないわよ。身分は平民でもルイン様のお家で暮らしてるんでしょ? なら、家庭教師も付いてるわよね? 既に教育を受けてるんだったら、途中入学でも大丈夫でしょうし」


 だけど、メノウ校長は伺うようにルイン様の方を見る。


「途中からの子は基本的に、三年生に編入するのが多いんだけど……多分、それじゃダメなのよね?」

「あぁ。二人は一年生からやらせる」


 その会話を聞いて、私とルイ君は互いに顔を合わせながら首を傾げた。

 すると、呆れ顔をしたルイン様は大きな溜息を零して指を二本立てる。


メルンダ(家庭教師)が学校に入学するように言った理由は二つ。一つ目は、箔付け。将来的にルイは貴族になる可能性が高い。だから、国の認可を受けてるこの学校を卒業してればまぁ、必要以上に貴族社会で舐められることはないだろう」


 ルイ君は能力的に、どの国もが欲しがる人材なんだとか。

 この国は昔から()()()シエラ様達がはっちゃけてるから他の国より融通してくれるから、将来的にこの国の貴族になって国の後ろ盾をもらった方が色々と安全なんだって。

 他の国だと利用しようとしてくるから面倒くさいらしいし。

 私にはこんなことあったよって伝えられるだけだけど、時々、馬鹿な国とか組織とかが〝平民のルイ君ならなんとかなるんじゃないか〟って取引して連れ出そうとしたり、無理やり拉致ろうとされたりしてるらしいし。

 まぁ、そんなこんなで。多分、ルイ君はこの国の貴族になる可能性が高いのであった(マル)


「二つ目は対人練習。何気にルイもアリエスも身内としかいないし、微妙に二人とも他人の機微とかも疎そうだからね。〝ジャクリーン平民学校は平民の方もいますが、貴族の方もいます。貴族だけの学園よりも気を張らずに、けれど貴族との対応の方法も学ぶことが出来るはず。これを機に他の人の転がし方ーーもとい関わり合い方も学んだ方がよろしいでしょう〟とのことだ」

「「……………あ、はい……」」


 うわぁ〜……にっこりとアルカイック・スマイルを浮かべるメル先生が想像出来るぅ……。

 最近、クレイジーメルパパさんの腹黒に、似てきましたね……。

 校長先生も「あ、明け透けね……」と苦笑いしてるし。

 まぁ、断る理由もないしメル先生の言い分も一理あるから反論しませんが。


「で……最後は俺からのアドバイス」

「「ん?」」


 ピシリッ。

 三本目の指を立てながら、ルイン様が笑う。

 私とルイ君は首を傾げながら、その言葉の先を待った。


「これはこの学校だけに限った話じゃない。これから先、どこでもいい。君らは信頼出来る人を作るといい」

「…………信頼出来る人、ですか?」

「そう。友達でも、仲間でも、ライバルでもいい。ルイはヤンデレだしアリエスもヤンデレ感染してるから、君らも俺らのように互いに互いがいればいいのも確かだろうけどね。でも、それはそれで、これはこれだ」


 若い見た目に騙されて、忘れてしまうけど……重みを感じさせる言葉で思い出す。

 あぁ、そうだ。ルイン様は百年以上の時を生きているんだった……。


「永い時間を生きると心が平坦になっていくんだ。生きることに慣れてしまうから。そうなると何事にも動じなく、感じなくなっていく。それは果たして……本当の意味で、生きていると言えるのか? 体は生きていても、心が死んでいるでも、同然じゃないか?」


 無意識に背筋が伸びていく。

 ルイン様の言葉を、脳に、心に刻み込んでいく。

 彼が語っているのは……私達への、忠告だ。


「………でも、人との繋がりは感情を大いに動かす。出会いの喜びがあれば、共に過ごす楽しみがあり、別れの悲しみがある。そうして紡いだ誰かとの思い出が、大切な人との思い出が、君らを生かしてくれる。だから、生きるために人との繋がりは大切にした方がいい」

「「…………」」

「精霊王の血を引く以上、出来ないことの方が少ないけれど……それでも出来ないことだってある。そういった時に手を貸してもらえる信頼出来る人がいるのは……結構、悪くないモノだよ」


 ルイン様は過去を懐かしむように目を細めながら、柔らかく告げる。

 私達はその言葉に黙り込み……私の心の声を代弁するように、ルイ君が質問した。


「それは、経験談?」

「あぁ、そうだ。……まぁ、偉そうなことを言っても、そう思うようになったのはかなり経ってからだし。今だからこそ、そう思えるようになって……こんなアドバイスを出来るようになったんだけどね。シエラとの思い出も大切だけど、他の奴らとの思い出もまぁまぁ大切なモノだよ。残される側だから、余計にね。…………そうだろう? メノウ」

「…………彼らってのが予想通りなら、あたし、コテンパンにされたのばっかりしか覚えてない気もするけど……でも、そうね。それでも、楽しかったわ。あの出会いがあったからあたしは最愛の人と出会えた訳だし。ジャクリーンとの思い出があるから、今も生きていけてるって……思ってるしね?」


 シンッ……と静かになった部屋に、沈黙が満ちる。

 人生の先輩が言うと、言葉の重みが違うね。

 真剣な表情を浮かべる私達にルイン様は穏やかな眼差しを向ける。そして、話はこれで終わりだと言わんばかりに、手の平をヒラヒラさせた。


「まぁ、真面目な話はここまでってことで。メノウ、取り敢えずルイ達は明日から通うってことで。二人もそれでいいね?」

「あ、うん。問題ないよ」

「わ、私もだいじょーぶです」

「えぇ、分かったわ。なら、教材の準備しておくわね」

「よろしく。じゃあ、帰ろうか」


 ルイン様はそう言うなり立ち上がり、挨拶もそこそこに退室する。

 私達もメノウ校長に見送られ、その場を後にした。

 言葉を交わさずに帰宅する私達だけど、多分……心の中では同じことを思っていると思う。






 ーーきっと、明日からの学校生活は忘れられないモノになる。



 なんとなく、そんな予感を感じていた。








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