第39.5話 転生モブメイドの困惑
いつぞやのモブ転生したメイドさん目線です!
それでは〜よろしくどうぞっ!
……皆様、こんにちは。
モブ転生したメイドことイリス・バレスです。
前世を思い出して早五年……もう十歳になりました。
アトム様も五歳になられて。まだ子供ですが……なんと言うか、攻略対象を小さくしたような感じになっております。
まぁ、それはさておき。
現在ーー私はとんでもなく困惑しております。
え? 何に困惑してるかって?
そりゃあ勿論……アトム様の兄君であられる、アダムス様の奥様にですよっっっ!!
キラッキラと輝く赤毛に豊かな胸元。真っ赤なドレスが超似合うゴージャス美女ことメルンダ・ノートン(旧姓・モルプ)様……。
うん。乙女ゲームのルイルートで出てくるお邪魔キャラじゃねぇですかっっっ!!!!
メルンダ・ノートン(旧姓・モルプ)様……。
乙女ゲームにおける彼女は、令嬢時代からルイに恋慕を寄せるキャラとして登場。
《狂気の将軍》、《非人道の策略家》、《イかれ侯爵》なんて言われてる父親(実際に出てきてないけど、キャラ設定はそんな感じだった)の政略で、他の男性と結婚したけど……攻略対象へのアプローチを止めることはなく。
というか、逆に『彼と接点はこちらにとって有益だし。既成事実でもなんでも作っちゃえば良いんじゃない?』と実父の許可の下、めっちゃルイに接触しまくるキャラなのです。
もっと分かりやすく言うと、ルイとのデート(曜日制で平日は学校。休日は攻略対象とお出かけできる)で毎回邪魔される。邪魔されない休日がない。
……って感じです。
ちなみに……ハッピーエンドだとメルンダ様の邪魔を退け、ルイと結ばれます。
バッドエンドだと、メルンダ様とルイの間に子供ができちゃって……ヒロインとルイが破局します。
…………。
………………。
……………………私が困惑する理由が分かりましたか?
ゲームのメルンダ様は、父親の駒として動いていますし。完全にモブ家のモブキャラと結婚していました。
ですが、私の知るメルンダ様は……。
・アダムス様とデキ婚した。
・エクリュ侯爵家(ルイの実家)で家庭教師してる。
・なんか色々と事情があって? 軍部にて家庭教師中……。
…………いや、なんでっっっ!?!?!?
この世界は中世ヨーロッパ風のファンタジー世界。だからなのか、貴族社会では恋愛結婚も増えてきたけど……政略結婚が普通なのに!!
なのに、デ・キ・婚!!
私、お二人が偶に顔を見合わせながら、「酒は飲んでも飲まれるな」って言ってるの知ってるんですからね!?
まさかの酒の流れでそうなったんですかっ!? めっちゃ現代チックですねっ!?
そ・れ・にっ!!
思わず私がルイ関連の話を聞いちゃった時(だって、気になっちゃったんだもんっ!!)のメルンダ様の態度ったら!
めっちゃ落ち着いて……いや、若干遠い目してたよ!!
ほわんほわんほわ〜ん〜 《回想》
『……あら、誰に聞いたのかしら? ……まぁ、わたくしがルイ様に懸想していたのは有名な話でしたし、隠すようなことではないから話すのは構わないのだけど。確かに、五年前のわたくしはルイ様にご迷惑をおかけしてしまいました。きっと、あのままだったら今でもしつこく付きまとっていたでしょうね。でも、今はそうならなくて良かったと思っていますわ。アダムスと……まぁ、えぇ。結ばれ方はとんでもなかったですけれど、幸せですし。可愛い子が生まれましたし。それに……』
『それに……?』
『…………わたくし、お手洗い以外四六時中拘束されるのは……ちょっと』
『……………………』
………あれぇ? 乙女ゲームでは、そんなのなかったぞぉ?
『後、もうあの時点でルイ様ってアリエス様にお会いしてたから……わたくしの存在がアリエス様を不安にさせたりさせてたら、殺されたんじゃないかしら?』
『ころされた』
『…………いえ。逆にわたくしの存在を当て馬にして、更にアリエス様を依存させてたかしら……? あの方ならそうしてそうね……まぁ、何はともかく。今の方が幸せだわ。絶対』
ほわんほわんほわ〜ん〜 《回想終了》
とのコトです。
…………ぶっちゃけ、何が起きてるのかな? って更に困惑しました。
だって……ゲームじゃトイレ以外四六時中拘束なんてされてなかったし!!
そもそもの話っ……!!
アリエス様って誰なんですかっ!?!?
いや。実際に会ったことはないけど、ちょくちょくアダムスご夫妻のお話には出てきてるんで……多少は知ってるんですけど。
なんか主要人物(?)と近しい距離にいる子らしいのですが。
…………ゲームじゃ〝アリエス〟なんてキャラ、出てきてなかったじゃん……。
……。
…………。
やっぱり、ここら辺は……この世界がゲームじゃないって証拠なんでしょうか?
それとも、そのアリエスという子は……私と同じように転生者で。
ゲームの登場キャラ達と親しくして、ゲームシナリオの改変しているのでしょうか?
………。
………………。
彼女の正体と目的を知るために、一度会ってみないと駄目かもしれません。
それで、もしも自分に都合が良いように改悪をしているようならばーー。
世界を滅ぼさないためにも。
アトム様のためにも。
……いつか世界を救ってくれるヒロインのためにも。
今すぐ、シナリオの改変を止めなくてはいけません。
けれどーー。
「…………伯爵家の使用人でしかない私が、そう簡単に会えるでしょうか……? 相手……エクリュ侯爵家にいるんですよね……?」
会おうと決意した瞬間ーー初っ端から壁にぶち当たった私は、困った声でそう呟きました。
今日、私の他作品のコミックス2巻発売日でした。
もしよろしければ、そちらもどうぞ〜(・∀・)ノ




