第30話 邪神降臨は幼女に防がれる
更新がマイペースでごめんなさいっ‼︎
今後とも気長にお付き合い頂けたら、幸いです‼︎
という訳で……皆様も体調に気をつけてお過ごしください‼︎
それでは、よろしくどうぞっ( ´ ▽ ` )ノ
※17話に伏線を追加しました。
わたくしの名前はメルンダ・モルプ。
モルプ侯爵家の長女であり、軍部の将軍を父に持つわ。
そんなわたくしは出来る限り軍部に来るようにしているの。だってね? 軍部には将来、わたくしの夫となる方がいて、わたくしはその方を横恋慕する者達から守らなくてはいけないの。
その相手は……ルイ・エクリュ様。
漆黒の髪は艶やかで、真紅の瞳はまるで宝石のよう。
ハーフエルフだからか顔立ちも整っていて、そこら辺の男では比較にすらならない。
彼の纏う空気はミステリアスで。けれど、わたくしを前にすると素直になれないのか、いつも淡々とした態度を取る。
最初はそう言った態度に腹を立てていたけれど、今では可愛らしいと思っているわ。
そんな素敵なルイ様だから、彼に恋慕を向ける有象無象は沢山いる。
軍部の女性兵士だけでなくて、男性兵士も。王宮の人達も、近衛騎士団も精霊術師団にだってルイ様に好意を寄せている人がいるわ。
本当、いい迷惑。わたくしの夫になんていう感情を向けているのかしら!
だから、わたくしは彼を守るために。牽制をするために軍部に来る。
流石に夫を守るため……なんて理由では《黒水晶宮》に入れてもらえないから、父への昼食を届けるため……って言っているけれど。
だから今日も……こうしてルイ様の元を訪れたのだけど……。
この時のわたくしは思いもしなかったわ。
まさか……あんなことになるなんて。
*****
「ルイ様っ!」
まるでお姫様みたいな人だった。
くるんくるんっに縦ロールした赤毛に、鮮やかな碧眼。赤いドレスはフリルとか刺繍とか沢山してあって……キラキラゴージャスという言葉がぴったりで。
……きっと、ルイ君の隣に立ったらお似合いだと思うくらいに、綺麗な人だった。
ーーモヤモヤ……。
……?
私は自身の胸を押さえて首を傾げる。なんか胸がモヤモヤする……?
「……アリエス?」
ルイ君が心配そうな顔をして、見つめてくる。
私は「なんでもないよ!」と首を振って……小走りで駆け寄ってきた美少女さんの方へと視線を向けた。
「………」
最初はニコニコとしていた美少女さん。
だけど……ルイ君の腕に抱かれている私を認識すると、見るからに嫌そうな顔をした。
「…………まぁ……ルイ様。その幼女はなんですの?」
「…………」
「わたくしのルイ様に抱き上げさせるなんて……なんて烏滸がましいのかしら!」
般若を思わせるような顔をしながら彼女は叫び、私を睨んでくる。
………えっ!? なんでよく知らない人に、私怒られてるの!?
というかっ……なんか凄く修羅場感があるんだけ……どっっっっ!?
ーーがばりっ!
私は漂ってきた冷気に驚いて、勢いよく顔を上げる。
そして……すっごい驚いた。だって……。
ルイ君、めっちゃ無表情なんだもん……。
「………お前……なんの権利があってアリエスに怒ってるの?」
怒りを隠そうともしない、ゾッとするほどに低い声。
聞いたことがないようなその声に、シンッ……と訓練場が静まり返った。
けれど、それに気づかないらしい鈍感なゴージャス美少女さんは、豊満な胸元を主張するように胸を張りながら、大きな声で叫んだ。
「権利は勿論ありますわ! 貴方はわたくしの夫となるんですもの! たとえ幼女であれど、他の女を抱き締めるなど……言語道断ですわ! 今すぐその幼女を下ろしてくださいませ!」
「…………は?」
ーーぞくりっ!
なんか色々と聞きたくなったけれど、そんなことを考えられないぐらいに思考も身体も固まった。
だって、ルイ君の声が更に冷たくなった。
ルイ君から放たれる殺気がとんでもなかった。
私は驚きのあまり、何も言えない。
そして、そんな威圧を真っ正面から向けられたら美少女さんは……顔面蒼白で、その場に尻餅をついていた。
「お前、何言ってるの? どういうつもりなの? ボクがお前の夫? 寝言は寝てから言えよ。まぁ、そんな人の神経逆撫でにするような寝言を実際に言ってたら、聞いていられなくて二度と声を出さないようにしてしまいたくなるけれど」
「あ……あぁ……」
ルイ君が緩慢な動きで美少女さんに近づく。
一歩一歩進むたびに、その足元から黒い影が湧いては消える。
それを見た訓練場にいた兵士さん達と美少女さん(withメイドさん)が「ヒィッ!?」って悲鳴をあげる。
だけど、ルイ君は悲鳴を気にすることなく足を進め……美少女さんの前に立つと、極寒零度の視線を彼女に向けた。
「と言うか……そもそもお前は誰? 初対面のクセにいきなりそんなことを言ってくるとか……妄想もふざけるのも大概にしろよ」
「…………ぇ……?」
………いや……え?
私は思わずルイ君を二度見する。
いや、だってさ? 美少女さんはルイ君を知ってるみたいでしょう?
なのに、ルイ君は知らない。
……え?
まさかの……美少女さんはストーカーさんですか……?
美少女さんはぶるぶると震えて、信じられないモノを見るかのような顔で彼を見上げる。
そして、震える声で質問した。
「………う、嘘でしょう……? ルイ様……? わたくしですわよ……? メルンダですわ……」
「…………誰?」
「っっっっ!?!?」
メルンダさんはその言葉を聞いて、涙をボロボロと零しながら絶句する。
……うん。ルイ君はこの人のこと、本気で知らないな……?
声音からして、そんな感じがする……。
多分、今この場にいる人達全員が心の中で「うわぁ……」って思ってるよ……(実際に声に出してる人いるな……?)。
…………。
…………方や極寒、方や号泣。
この状況を誰か説明しておくれ……。
この状況を誰かどうにかしておくれ……。
「……取り敢えず、アリエスに理不尽なこと言ってたから……消しとこうか」
「『っ!?』」
物騒な呟きに私と兵士さん達はギョッとしながらルイ君を凝視する。
あっ。この顔は本気っぽそ〜う☆
消すがどういう消すなのかが分からないけど、絶対物騒な感じだよね。
私は救いを求めんとばかりに、ルイン様に慌てて視線を向ける。
すると……ルイン様はにっこりと笑って、親指をサムズアップした。
「多分、ルイを操れるのはアリエスだけだと思うよ。俺をどうにかできるのもシエラだけだし。どうにかしたいなら、君がなんとかしなきゃね」
責任がっっ! 重いっっ!
待って!? なんでそんな責任重大なの!?
というか、ルイ君の私を抱っこしてるのとは反対の手になんか黒い影が集まってるぅ!
私は混乱状態になりながら……慌ててルイ君の首にむぎゅっう! と抱きついた。
「はいっ、ルイ君! ストーップ! 消すのはだめっ、です!」
ーーピタリッ。
ルイ君の動きが止まって、緩慢な動作でこちらを見つめてくる。
彼の顔には肌が粟立つぐらいに、色気ムンムンの微かな笑みが浮かんでいて。
………ちょっとだけ、彼の纏う危うさを孕んだ耽美感に見惚れたのは……気の所為ってことにしておきます。はい。
「どうして止めるの? こいつ、アリエスに理不尽なこと言ったんだよ?」
「……いや、まぁ……いきなり怒られたのはおどろきだったけど……」
「なら、目障りじゃない?」
「うん、おちつけ。私は気にしてないから」
「でもなぁ……」
ルイ君はまたメルンダさんの方へと視線を向ける。
……うん。諦めてないな?
チラリとルイン様を見れば「押せ押せでいけば、なんとかなるよ」と無駄に煽っていて。
でも……ルイン様を見て、ふと思い出した。
……そういや……シエラ様とお茶してる時に、雑談と称してヤンデレ惚気話聞かされてたな……?
………もしかして……いける、かも?
「ル〜イ君」
ーーグイッ。
私は彼の両頬に手を添えて、無理やりこちらに向けさせる。
至近距離で交わる視線。真っ赤な瞳に宿った……濁った光。
そんなルイ君の目から目を離さないようにしながら……私はにっこりと微笑んだ。
「せっかく私といっしょにいるのに、他のひとを気にしちゃイヤです。他のひとなんかに意識をむけちゃイヤです。だからね? そんなひとじゃなくて、私だけをみてて?」
「っ!」
『ゴホッ!?!?』
周りの兵士さん達が驚きのあまり噎せてたけど……今回は無視だ、無視。
ルイ君は私の言葉を理解したのか、徐々にその綺麗な顔を真っ赤にしていく。
そして……。
「アリエスのっ! 嫉妬がっ! 可愛いっっ!」
ルイ君は、満面の笑みで私を強く抱き締めたよ。
うん、やったね。この様子なら、メルンダさんがルイ君に消されることはなさそう。
というか……。
………………今更ながら、めっちゃ恥ずかしいこと言ったな……私……?
…………よく知りもしない相手のために、私は地味に身を削った気分になったのでした。




