第21話 事後報告ほどタチが悪いモノはない。(1)
ルイのお兄ちゃん、ルイン目線になりまーす。
ちょっとずつ上がっていくぜ、ヤンデレモード!
それでは、今後とも〜よろしくどうぞっ(・ω・)ノ
ルイの腕の中ーー。
泣き疲れて寝てしまったアリエスを見ながら、俺は溜息を零した。
今日は本当に驚いた。
急にシエラから連絡が来たと思ったらアリエスがいなくなったって聞いて。
探索の精霊術を使えば、王都中に発生していた複数の違和感。
片っ端から違和感を発生してるだろう人物達を制圧して(何が起こるか分からないから、取り敢えず気絶させた)。
それからルイに指定された場所に来てみれば……見るからに怪しい奴と、ナイフを突き立てられた我が家の使用人達の子供達の姿。
…………完全に面倒ごとの予感しかしなかった。
というか、実際に面倒ごとだったね。
《邪神兵団》による召喚師拉致未遂ーーとでも言えばいいのか。
アイツらはアリエスを手に入れるため、我が家の使用人の子供……オリーを傀儡化、セルとメイサを扇動して彼女を屋敷から連れ出した。
もし、ルイが間に合っていなかったらーー。
アリエスは傀儡化されてしまい、手遅れになっていただろう。
《邪神兵団》……相手が固有能力持ちだというのは知っていたが、まだ認識が甘かったらしい。
精霊術が効かない、という事実に対する対策も甘かった。
アリエスがいなくなるということがなければ、王都に奴らが忍び込んでいたこと自体に気づかなかった。
異常があれば精霊達が自主的に教えてくれるから、それに慣れてしまっていたのも悪かった。
精霊が気づかないーーそれが、《邪神兵団》なのだ。
…………奴らは、危険だ。
やろうと思えばこちらに気づかれずに王都を墜とすことができる。
今までそうなってなかったのは、運が良かったに過ぎない。
…………だが、これからはそうとは限らない。
…………できることなら、シエラのことだけを優先したいんだけどなぁ……。
今の俺には、背負うモノが多くなり過ぎた。
このまま《邪神兵団》を放置することはできない。
それに……。
俺は、聞かなきゃいけない。
「ルイ。説明してくれるんだろうね?」
アリエスの頭を撫でながら柔らかく笑う弟に声をかける。
ルイはチラリとこちらを見て……また、直ぐに彼女に視線を戻した。
「まぁ、約束したからね。話すよ。でも、その前に……」
「まだ何か?」
「傀儡化を解かないとね」
「!」
はっきり言って、俺には傀儡化が分からない。
精霊術だったなら問題なかったけれど……傀儡化は固有能力によるものだ。
言い方から〝人を操る能力〟だとは察しがつくけれど……解くことはできない。
なのに、ルイはそれを解くと言う。
…………本当。
俺の弟は何になったのかな……?
「他の人達は?」
「…………気絶させた後、屋敷の中庭に転移させてあるよ」
本当は王宮の牢屋に入れたかったんだけど……昔と違って、今は警備上の都合で王宮敷地内にて転移の精霊術は使用不可になっている。
そのため、エクリュ侯爵家の屋敷の中庭に転移させるしかなかった。
固有能力がかけられていたから転移ができない可能性もあったけれど……可能だったのは、運が良かったかな。
「そう。なら、先にそこにいる奴らからだね」
「「…………ひぃっ!?」」
ルイが倒れている男達とオリーの方へ視線を向けたら……何故か側にいたセルとメイサが涙目で震え出す。
…………? 一体、何に怯えて……?
「オ、オリーのことっ……! 殺すのかっ……!?」
「や、止めてよぉっ……オリー君を殺さないでよぉっ……!」
「「「…………は?」」」
俺達はその言葉に首を傾げる。
そして……顔を見合わせながら、念話をした。
『これ、ボクがオリー……だっけ? を殺すと思われてるの?』
……必要なこと以外に関心が薄めのルイらしく、どうやら彼らが使用人の子供達だとあまり覚えていなかったらしい。
『そうみたいだね』
『……ちょっと話を聞いてみるわ』
そう言ったシエラはしゃがみ込んで……涙目のセルとメイサと視線を合わせる。
「セル、メイサ。なんでそんな風に思うのかしら?」
そう質問されてセル達は口を開こうとするが、ルイの視線に気づいたのか……怯えたように口を閉ざす。
このままでは埒があかないと思った俺は、セル達に声をかけた。
「大丈夫だから、答えてごらん」
「だ……だ、だって……!」
セル達は……俺の後押しもあって、勢いよく喋り出す。
そして……思いっきり、本音を吐露した。
「オレらがっ、死んでも構わないって……!」
「いつも怖いけどっ……今は、もっと怖い感じを出してるんだもんっ……!」
「「「…………………」」」
……俺達は再度顔を見合わせる。
ルイがいつも怖いって……この子達はそう思ってたのか?
でも、俺はそんな風に感じたりしないんだが……子供は色々と敏感だから、何かを感じてるのかな?
そんな風に考えていたら……ルイが思い出したかのように、念話で呟いた。
『あぁ、さっきのか』
『……さっきの?』
『兄様達が来るまで時間稼ぎしてた時……傀儡師に〝子供達を殺す〟的なこと言われたんだけど、殺したければ殺せば? って答えたと言うか……』
『『…………』』
俺とシエラはなんとも言えない顔をしながら、ルイを見つめる。
その視線に気づいたのか……ルイは若干据わった目を返してきた。
『なぁに? 兄様だって、同じ反応するでしょう?』
………いや、まぁ……確かに。
俺も同じ反応をしないとは言い切れない。
もし、シエラが無理やり連れ出されてーーそれで危険に晒されたら。
連れ出した奴を呪って、殴って、蹴って、折って、斬って、潰して、八つ裂きにして、灰の一つも残さずに燃やし尽くす自信がある。
だって、それぐらい……シエラが大切だから。
…………彼女を病的なほどに愛してるから。
だけど……。
『流石の俺も、子供の前では素直には言わないって。そういうのは心の中で思うものだよ』
『………あぁ。そうなんだ』
ルイはそれを聞いて納得したように頷く。
どうやらまた、ルイのズレてるところが出てしまったらしい。
俺は再度溜息を零して、子供達に声をかけた。
「安心しなさい。ルイはそんなことしないから」
「で、でもっ……!」
「本当に君らを殺すつもりはないよ。そんなことしたら、アリエスが悲しむかもしれないし……ボクがアリエスに嫌われるかもしれないからね」
……多分、その言葉に嘘はない。
俺にとっての最優先がシエラのように。
ルイにとっての最優先はアリエスだ。
愛しい人に嫌われないために、俺達は異常性を抑え込む。
現時点のアリエスの性格は……良くも悪くも常識的だ。
だから、きっと……彼女は自分の保護者が人を殺したと知れば悲しむだろう。
自分が関わることで誰かが傷ついたり、死んだりすれば……アリエスは自分を責めるだろう。
そして……。
彼女はルイを軽蔑するだろう。
そうなったら、ルイはきっとマトモでいられない。
下手をすれば、死んでしまってもおかしくない。
だからこそ。
最愛に嫌われる可能性があるなら……ルイは絶対に、嫌われるようなことをしない。
…………まぁ。普通の子達にはそれを理解できないかもしれないけど。
ルイは面倒そうな様子を隠そうともせずに溜息を零すと……倒れた男達の前に立った。
「まぁ……君らがボクを怖がろうがなんだろうがどうでもいいけど……取り敢えず、すべきことはさせてもらうよ。《創造せよ、顕現せよ、降臨せよ》」
ゴォォォォォ!
凄まじい勢いで黒炎が噴き出し、ルイの手に集まって形を成していく。
それは……黒い……。
………………黒い……。
…………………なんでハリセン……?
「………………なんでハリセン……?」
怪訝な顔をしたシエラが、小さな声でぽつりと呟く。
あっ、同じことを考えたのは俺だけじゃなかった……。
ルイはチラリとこちらに視線を向け……ハリセンを振るいながら、答えた。
「これが一番、良いかと思って?」
スパーンッッ! コロンッ〜☆!
……………え? 星が、男の頭から飛んだ?
あっ……星が消えた。
スパーンッッ! コロンッ〜☆!
また子供の落書きみたいな星が物理的に出て!? 消えたっ!?
「………………」
ルイはオリーの前でハリセンを持ち上げ……固まる。
そして、考え込むように視線を彷徨わせ……セルにハリセンを投げた。
「えっ!?」
「君が叩きなよ。ボクがやったら、また騒ぎそうだし。ちなみに……星が出たら、傀儡化の解除成功ね」
『えっ!?』
あの星は解除成功の合図だったのっっ!?
「じゃあ、ボクは先に屋敷に行って解除を始めてるね。後はよろしく」
「あっ……ちょっ!?」
そう言った弟はその場から消え去る。
……残された俺達は、互いに顔を見合わせるばかり。
………………それから……セルがオリーを叩き、本当に傀儡化が解除されたのを確認してから転移した俺は……。
やっと、ルイとの話に至るのだった……。




