第20.5話 同僚は、いつかやらかすと確信していた。
いつも読んでくれてありがとうございます!
今回はルイの同僚目線!
それでは、よろしくねっ☆
オレ(ちなみにオレの名前はゲイルな)と同期で軍部に入ったルイ・エクリュ二等兵は、はっきり言って……どこか浮世離れした感じだった。
まず、その容姿。
近衛騎士団とか精霊術師団とかと比べると……軍部は基本的にむさ苦しいのが多い(※オレは茶髪と茶色の瞳の、普通体型だ)。
なのに、ルイは無駄に中性的な美貌を持っていて。
というか、男相手にこんなこと言うのも嫌なんだけど……。
無駄に幻想的って言うか……儚いって言うか……。
女装したら完璧に見抜けない。深窓の令嬢って言われたら納得する。
…………はっきり言って、場違い感が半端じゃなかった。
というか、今でもそう思ってる。
軍部の中じゃあ、ルイに只ならぬ想いを向けるヤツだっているぐらいだし。
次に、言動。
最初は天然なのか? とも思ったけど……それが世間慣れしてないがゆえの、常識とのズレだと気づいた時にはどんな箱入り息子だったんだよ! と思った。
でも、こんなに顔がよかったら……そうなるのも仕方ないのか?
なんか、外にいるだけで面倒が起こりそうだもんな……色々と。
最後に、ルイの持つ力。
精霊術師団ほど精霊術に精通してる訳じゃないけど、ルイの持つ力はとんでもない。
一般的な標準から、一線を画してる。
だって、転移の精霊術が使えてる時点でヤバいし。
精霊術師団でも転移が使える人なんて、そんなにいないんじゃないか?
なんで、そんな高度な精霊術使えるのに軍部入ってんの?
エクリュ特務(一線を退かれている、軍部の顧問のような方)がいるから?
(実際に身内かどうかは聞いたことがないが、多分身内だと思う。容姿が似てるし、姓が同じだし。)
……まぁ、そんな感じで。
これらの理由で、ルイはとんでもなく浮世離れしていた。
ついでに言うと。
現時点ではそんなに目立った行動はしてなくても(……いや。王宮敷地外に出た瞬間に転移してるのは、目立つ行動か?)……。
どっかズレてるルイのことだから、いつかやらかすとは思ってたんだ。
だからーー。
ルイが、同じく同僚のガランをぶっ飛ばすのを見た瞬間ーーオレは素直に〝あ。とうとうその日が来たのか〟と思った。
「うわぁぁぁ!?」
「壁に叩きつけられたぞっ!」
「ちょっ……誰か回復! 回復の精霊術っ!」
大騒ぎになる訓練場。
まぁ、そりゃそうだ。
だって……ガランは訓練場の壁に叩きつけられて血を吐いてるし。
ルイは雲一つない空を見つめながら、ブツブツと呟いているし。
混沌この上ない状況だよな。
「き、貴様ぁっ! 何をしているっ! これはあくまで模擬戦だぞっ!?」
我らが第一部隊の部隊長であるオートン隊長が、ただでさえ厳つい顔に怒気を滲ませながら叫ぶ。
だけど、その怒りも間違いじゃない。
模擬戦ってのは本気でやるモンではあるけど、ぶっ飛ばすのは流石にやり過ぎだ。
模擬戦で大怪我をしたら元も子もないからな。
でも……ルイはそれに反応せずに、空を見つめたままだった。
「おいっ、聞いているのか! ルイ・エーーーー」
「ーーーーアリエスのために、力を貸せ」
『………………へ?』
…………ぶっちゃけよう。ルイの声に全身が、ゾッとした。
ゴゥッッッッ!
ルイを中心に黒炎が渦巻く。
その禍々しさは尋常じゃなくて、恐ろしくて。
オレらじゃどうしようもできないんだって。
本能的に、その黒炎はやばいヤツだって、理解した。
だけど、その黒炎は周りに散らばることはなく……ルイの目の前に集まっていく。
そして……。
それは、大男に見間違うかのような巨大な黒鳥へと姿を変えた。
うん。それはそれで大騒ぎになるがな。
『ぎゃぁぁぁあっ!?!?!? 化鳥ぃぃぃぃぃぃぃぃいっ!?!?!?』
大混乱になる訓練場。
だと言うのに……そんな大混乱に叩き落としたルイ本人は、その黒鳥に乗っかってどっかに飛んでいく始末。
あまりにも呆気ない展開に……騒いでいた奴らはぽかんっと口を大きく開けて、彼が飛んで行った空を見つめていた。
『…………え?』
多分、この時ほど間抜けな軍人達はいなかったと思う。
オレも飛んでくルイを見送って、心の中で呟く。
…………いつかやらかすとは思ってたけどさ?
流石にこんな堂々とした職務放棄(※模擬戦も立派な勤務内容)は予想外すぎるぜ、ルイ。
「何をしているんだぁぁぁぁぁぁぁ! アイツはぁぁぁぁ!」
その後ーー我に返った隊長の叫び声が、遠くまで響いていったのだった……。




