第13話 健全な添い寝が朝チュンみたいになる朝
若干、復活の著者です!
お休みしてごめんね!
まだ気温に負けて、本調子ではありませんが……ゆっく〜りと(不定期)更新再開です(*´ω`*)
それでは、よろしくどうぞっ!
【前回までの雑なあらすじ】
朝、何も言わずにお仕事行かれて寂しかったので、文句(?)言いました。
言い訳をさせてもらうなら……私はあんな風にルイ君に当たる(?)つもりはなかった。
だって、ルイ君が朝、私を起こさなかったのは私のためだし。
お仕事があるから仕方ないって分かってたもの。
だけど、実際に顔を見たら……そんなの全部飛んでっちゃった。
帰ってきてくれたことが、とっても嬉しくて。
でも、我慢してた寂しさが溢れ出しちゃって。
精神が肉体年齢に引きずられたのか……あんな風に感情的になって、ルイ君に一方的に文句(……なんか言い方がアレだったけど、実際に言った内容って〝ルイ君がいない時間は寂しいから、朝、何も言わずにお仕事行かないで〟ってだけなんだよね……うん)を言ってしまった。
まぁ、その結果がどうなったかと言うと……。
…………ルイ君が、おかしく(?)なっちゃった……。
*****
身体を包み込む柔らかな温かさとふかふかのお布団の感触が気持ち良くて、意識をゆっくりと覚醒させ始めた私はふにゃりと笑う。
あぁ……〝幸せ〟ってまさにこのことだと思う。
このまま微睡みに身を任せて、怠惰な二度寝をしてしまいたい。
だけど……私の脇腹辺りにかかる重みと、頭を優しく撫でる手の感触が、それを叶えさせてくれない。
私はゆっくりと瞼を開けて……。
「んぅぅ……ん?」
視界に広がった白いシャツとその襟元から覗く……逞しい胸元に、思考を停止させた。
「…………へ?」
「あ。起きた?」
耳朶に甘ったるい囁き声が響いて、ビクリッと身体を震わせる。
恐る恐る顔を上げれば……そこには……。
恋人に向けるような……愛しいモノを見つめるような笑顔を浮かべながら、私を抱き締めるルイ君の姿。
固まること数十秒。
鈍い頭がやっとそこにいたルイ君の姿をはっきりと認識した瞬間ーー私は、私は声にならない悲鳴を上げかけて、慌てて口を両手で覆った。
「〜〜〜〜っっっ!?!?!?」
「おっと。危ないよ」
驚きすぎてベッドから飛び落ちかけるけれど、ルイ君がぎゅうっと優しく抱き締めてくれることで事なきを得て……一安心。
…………いや、一安心じゃないわ!
なんでっ! 朝からっ! ルイ君のドアップがっ! 目の前にあるのっっっ!?
というかっ! どうして一緒に寝てるのっっ!?
「ふふっ。おはよう、アリエス」
ちゅうっ……。
「っっっ!?」
リップ音をたてながら、私のこめかみにキスをするルイ君。
寝起き特有の気怠げな雰囲気も相まって、色気のダダ漏れ感が半端ない。
………刺激強すぎるその光景に再度、思考が止まったよね。うん。
「……アリエス?」
「…………」
「返事してくれなきゃ、唇にキスするよ?」
「ぴっっ!?」
ぞくりっ……。
肉食獣を思わせる獰猛な笑みに、背筋に痺れが走る。
身の危険を感じた私は、慌てて挨拶をした。
「お、おはよーございますっっっ! ルイ君!」
「うん、おはよう。良い朝だね、アリエス」
ほんの一瞬前までの獰猛な笑みを消し去って、にっこりと爽やかに笑うルイ君に……頬を引きつらせる。
だけど、ルイ君は頬を引きつらせる私を見ながらも……楽しげな雰囲気を隠さずに、質問してきた。
「ふははっ……朝からアリエスは元気だね。その様子じゃ、昨日、ボクと一緒に寝てたことも忘れちゃって……驚いた感じかな?」
「…………あっ」
ルイ君の揶揄うような言葉を聞いて、私は大きく目を見開く。
あぁ……そうだったよ……。
私は……どうして私がここにいるのか。
どうして一緒のベッドで目を覚ますことになったのかを思い出して……思わず遠い目をするのだった……。
◇◇◇
昨日……感情的に文句を言った後。
ルイ君は烏の行水並みの速さでお風呂を済ませたら、そっから私から離れなくなった。
〝寂しい思いをさせちゃったからね。今日はそのお詫びを兼ねて、ずーっと一緒にいようね?〟
……うん、本当にその宣言通りになったよね。
流石にお風呂は離してもらえたけど、ご飯食べる時もずーっと膝の上。
終わった後も移動も片腕抱っこ。
ルイ君の部屋に戻ってからも膝の上に横抱きにされたまま、顔中にキスされたり……その長い指先で髪を弄られたり。
そうして、自室に帰ることも許されず。
ルイ君にずーっと抱っこされたまま、彼のお部屋のベッドに連行。そして、強制添い寝……となった。
そして、目が覚めて……昨夜のことを忘れていた私は、目の前に色気ダダ漏れルイ君がいたことに驚き、今に至る……と。
◇◇◇
……いや、まぁ……ルイ君と一緒にいること自体は悪いことじゃないんだよ?
すっごい安心するし……一緒にいれるととっても嬉しいし。
でもっ……それに負けないぐらいに恥ずかしくて死にそうになるのっっっ……!
特にこのっ、添い寝しただけだというのに無駄に漂う朝チュン感っ……!
なんなのっ!? 何がスイッチで、ルイ君にこんな甘い恋人(?)仕様みたいなおかしな行動を取らせるようになったのっ!?
昨日よりも態度がっ! 声がっ! 行動がっ! 視線が甘々なんだけどっ……!
いや、それ以前に見た目幼女と美青年の過剰スキンシップ(?)って事案じゃないかなっっ!?
私、捕まっちゃったりしませんかねっっ!?
「うん。なんか変なこと考えてるなぁ?」
「んにゃっ!」
ひょいっ。
いつの間にか起き上がったルイ君にまた抱っこされてしまう。
ギョッとしながら、私は抗議をした。
「ルイ君っ!? 私、じぶんであるけるよっ!? 下ろしてっ!?」
「だーめ。昨日、寂しい思いをさせちゃったからね。そのお詫びに君を甘やかしたいの」
甘やかしたい……?
えっ……? これ以上……?
…………いや、もう充分お腹いっぱいですよ……?
……それ以前に……私、昨日の夜から自分の足で歩いてない気がするんだけど……?
もうそろそろ……甘やかされの容量過剰を起こしそうだから、止めて欲しい……。
「……あの、ルイ君……」
「うん? なぁに?」
「もう、じゅーぶんなので……そろそろ、甘やかすのをやめてくださーー……」
「ふふふっ。無理かな」
「なんでぇっ!? なにがルイ君をそこまで駆りたてるのっ……!?」
思わず叫ぶけど、ルイ君のニコニコスマイルが止まらない。
もうその笑顔の時点で、甘やかすのを止めるつもりがないのが分かっちゃうぅぅぅ!
「なんでって言われたら……アリエスを甘やかさなきゃいけないって使命感に駆られてるからだよ?」
「えぇぇ……? 使命感……? なにそれ……?」
「ふふふっ」
私を甘やかすのに使命も何もないと思うんだけど……。
でも、ルイ君の様子から察するに、彼は本当の理由を教えてくれるつもりはなさそうだった。
「一つだけ、確実に言えるのは……アリエスを甘やかすのは楽しいから、止めるつもりは一切ないってことだけだよ」
そう言って笑うルイ君の真っ赤な目は、〝これからもいっぱい甘やかすよ〟と雄弁に物語っていて。
つまり、もう諦めるしかないと言うことなんですね……?
私は乾いた笑みを零す。
そして……両手を上げて、観念した。
「もう……好きにしてください……」
「うん、そうするね」
私の言葉を聞いたルイ君は、これまでで一番嬉しそうな顔で笑いましたとさ。




