第9.1話 とある専属料理人の誕生
前話とほぼ同じ時間の別視点なので、.1話です‼︎
本日は短いの2話‼︎
よろしくねっ☆
ワシの名前は、デイブ・ミーン。
五年前までは軍部の厨房で働いていたが……六十歳になり定年退職をし、今ではエクリュ侯爵家に雇われて料理人をやっている。
何故、ワシがこの家に雇われたか。
それは、簡単に言えばルイン・エクリュ特務に気に入られたからだ。
軍部の食事というのは、俗に言う大衆食堂の料理と変わらない。
まぁ、質よりも量と時短を優先するから当然なんだが。
だが、その味が良かったらしい。
『貴族が食べる豪華な料理より、普通の食事の方が性に合うんだよねぇ。ぶっちゃけ、デイブさんの料理って俺が二等兵だった時によく食べてた食事の味に似てるって言うか……懐かしい気持ちになるって言うか』
なんて言っていたが……エクリュ特務が二等兵だった頃って百年以上前の話だと聞いているんだが……?
…………エクリュ特務に気に入られる料理を作れることに喜ぶ反面……。
自分より遥かに若く見えるが、自分より遥かに歳上なんだよなぁ……と改めて実感した瞬間だった。
まぁ、そんなこんなで。
ワシはエクリュ侯爵家のタウンハウスで働くこととなった。
エクリュ侯爵家は特殊だ。
昼は各々の仕事や都合があるため別々だが……朝と夕は家人達だけでなく使用人も同じ席について食事をする。
そして、家人達に馴れ馴れしい喋り方をしても許されてしまう。
…………貴族らしくない。
だが、それが逆に温かくて……良い職場に就職できたものだと思う。
つい気を抜くと軍部で働いていた時の癖で沢山料理を作ってしまっても、笑って許してくれるしな。
いつもは作りすぎて申し訳ない気持ちになるが……。
今日ばかりは、ワシの作りすぎ癖が完全に治りきってなくて良かったと思った。
もぐもぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ。
エクリュ特務の弟君であるルイ・エクリュ二等兵の膝の上でひたすら給餌を受けるキラキラ光る幼女。
…………事前に新たに人が増えると聞いていたが、まさかこんなにも幼い少女だったとは。
いや、それ以前に……。
とんでもなく、飯を食っている。
最初は空腹で愚図っていたようだが、食事を食べ始めたら凄かった。
小さい手ではナイフとフォークが上手く使えなかったからか、途中からはエクリュ二等兵に食べさせてもらっているが……まだ食っている。
皿が空になれば、また泣き出しそうになり……エクリュ二等兵が慌てて自分の分を与えて、ワシも慌ててお代わりを厨房に取りに行った。
それから作りすぎた料理が底をつき始めて……慌てて追加の料理を作って、作って、作り続けて。
…………やっと食べる手が止まったのは、サラッと百人前分くらいを食い終わった頃だった。
長い、戦いだった。
長時間ゆえに、就寝準備のために先に食堂を退室する者(お嬢様など)や……沢山の料理に胸焼けを起こして逃げる者もいた。
だが、ワシらはやり遂げた。
料理長のモンドや先輩料理人のシターン、イロン(皆、ワシより歳下だが)は幼女があの量を食ったことにドン引きしていたが……ワシは逆にゲラゲラと笑ってしまったぐらいだ。
だって、作った料理を食べてもらうことは……料理人冥利に尽きる。
それに、沢山料理を作るのは改めて〝楽しい〟と思えたしな。
幼女……いや、アリエス様と言ったか。
ワシがこの家に雇われたのは、エクリュ特務に料理の味を気に入られたからだったが……。
それは、まるで大食らいのアリエス様と出会うための雇われた気がするほどの、素晴らしい食いっぷりだった!
この日から、ワシはほぼアリエス様専属の料理人となり……数十年後に開かれた大食い大会にて、手腕を振るうこととなる。
まぁ、大食い大会の話はまた機会があった時にでもするとしようーー。