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第7話 ま・さ・か・のっっっ!


よろしくねっ☆

 







『お父さん、調べるの頑張ったんだぞ?』






 ルイ君がどっかから召喚(転移させた)ガーデンテーブルチェアーに座って、私は頬を引きらせる。


『なのに、ウザいとか……ウザいとかぁ〜!』


 地面には未だにゴロゴロと転がるルイ君のお父さん(精霊王)

 だけど、ルイ君はガーデンテーブルの上にお菓子を並べたり、ティーセットを並べたりしながら……そんな精霊王を完全無視ガンスルーしていた。


「はい、アリエス。紅茶だよ」

「………あ、ありがとう……」

「こっちのお菓子も美味しいから、お食べ」

「…………いただきます」


 ルイ君が入れてくれた紅茶を飲みながら、チラリと精霊王の方に視線を向ける。

 ……本音を言えば、精霊王を放置していいのか疑問でしかない。

 だって、一応この世界を管理する神様なんでしょう?

 もっと……なんか敬わなきゃいけない感じなのかな? とも思うんだけど……この感じからしたら、そうでもなさそうで。

 というか……このヒト、少しでも接し方次第では面倒なことになりそう……。

 ……そうした結果、精霊王の扱いに慣れているだろうルイ君の行動に合わせるという結論に至ると……。



『無視は酷くないかな、ルイ!?』



 精霊王はいつまで経ってもルイ君が構わないことに腹を立てたのか、ガバッと勢いよく起き上がり抗議をする。

 しかし、ルイ君はそんな父親に冷たい目を向けた。


「だって、きちんと相手にしたら父様は調子に乗って、話を脱線しまくって、いつまで経っても本題が進まないじゃん」

『うぐっ』

「こっちの時間とあっちの時間の流れは違うんだよ。時間を無駄にしたくないから、早く本題に入ってくれる?」

『いやぁぁぁ! 息子が冷たいぃぃぃ!』


 子供のように手足をバタバタさせながら、叫ぶ精霊王。

 ……………えぇ……何この態度……子供なの……?

 思わず私も冷たい目で見てしまう。

 だけど……。


「いい加減にしてよ、精霊王。ボクは()()()()()()()()()()()()って言われたから、ワザワザここに来ているんだよ? アリエスに何かあるんだったら、保護者として早急に対処しなきゃいけないんだから、早く話してよ。あぁ、それとも……無理やり聞き出す方がお好みなの? それならそうと言ってよ。そっちの方が何千倍も早いんだから」



 私よりも氷点下対応の人がいました。



 ルイ君はそう言いながら、ゆっくりと手の平を精霊王に向ける。

 それと同時に彼の足元から黒い鎖が向かって放たれて、勢いよく精霊王を拘束していく。

 精霊王は『待って、落ち着け、ちょっとこれはヤバイからぁぁぁぁ!』と叫びながら……鎖で簀巻すまきにされた。

 …………うん、この親子ヤバイわ。


「よし」

『よし……じゃない! お父さんに対して、酷くないか!?』

「ちなみに、話すのが遅くなればなるほど鎖が締め付けるから」

『あっ、本当だ。ちょっとずつ苦しくなってる……って、話すから! これを外してくれぇぇぇ!』

「言ったね? 言質は取ったよ? 話さなかったら、また簀巻きにするからね?」


 しゅるりしゅるりと鎖が空気に溶けて、精霊王は自由になる。

 だけど、私は思わず遠い目をしたままだった。

 いや……私のためなのは分かってるんだけど……子が親を簀巻きにするって、どうなの?


「言っとくけど……兄様もよく殴ってるよ」

「なぐってるのっ!?!?」


 私の心の声に答えたルイ君に、思わずツッコミ。

 だけど、彼は酷くウンザリした顔で答えた。


「だって……父様、時々すっごいウザいからね」


 ……ま、まぁ……今の短時間でこのヒトがウザいんだろうなぁ〜ってのはよぉ〜く分かったけど。

 ………結構、過激だな……おい。


『うぅ……ルイが酷ーー』

「簀巻きがお好みで?」

『…………大人しく話します、はい……』


 精霊王は涙目になりながら、正座をすると……大人しく話し始める。

 私達は〝やっとか〟って気分になったけど……話を聞き進める内に、思わず頭を抱えたくなった。


『結論から言うと。アリエスは乙女ゲームのヒロイン達の敵……つまり、()()だ』

「「…………は?」」

『つまり、悪役令嬢ならぬ(本物の)()()令嬢ってことだな!』


 親指を立て(サムズアップし)ながら、そんなことを言う精霊王。

 というか……ちょっと待って?

 乙女ゲーム……乙女ゲームっ!?

 えっ!? 私、乙女ゲームの関係者なんですかっ!?

 そもそもっ! 本物の悪役令嬢って、意味が理解できないんだけど?

 悪役令嬢に本物も偽物もあるの!?

 呆然とする私と、そんな私を見て心配するような顔をするルイ君。

 ルイ君は大きく息を吐くと……据わった目で、精霊王を睨んだ。


「父様。ちゃんとイチから詳しく話さないと、ぶん殴るよ?」

『………お前、ルインに似てきたな……?』

「……………」


 ルイ君は無言で拳を鳴らす。

 そんな息子の姿を見た精霊王は、慌てて口を開いた。


『いや、あのっ……精霊達に情報を集めてもらっていたらな? 辺境の方で、乙女ゲームとかモブ転生とか言ってる子を見つけたんだ。その子の記憶をコソッと覗いてみたら……《精霊と乙女と愛のワルツ4》というゲームに関わりがあるって分かったんだ』


 ……………ん?

 それ、なんかそれ……どっかで聞いたことがあるタイトル……?


「まさか……兄様がラスボス兼攻略対象で、義姉様が当て馬令嬢だったとか言ってた、乙女ゲーム?」


 ルイ君が答えを言ってくれたから、私はハッとする。

 なんか聞いたことあるなと思ったら、それだ!


『あぁ、その続編だ。ぶっちゃけ、わたしの息子()は乙女ゲームに呪われてるのかな? って思い始めてる』

「つまり……アリエスだけじゃなくてボクも、関わりがあるの?」

『そうだ。一応、ゲームのシナリオを説明しておこう』




 《精霊と乙女と愛のワルツ4》。

 このゲームの主人公ヒロインは《精霊姫》候補に選ばれた少女で、攻略対象となるのは《精霊姫》の守護者候補達。


 ヒロインはもう一人の候補者(こちらが悪役令嬢らしい)と競い合いながら、六人の守護者候補達と共に巷で起こる様々な事件を解決したり、交流をしたり。

 恋やR-18なこともしつつ……最終的に世界を滅ぼそうと暗躍していた《邪神兵団》とラスボス(異界から召喚されし邪神)を愛の力で倒す……というのが、大まかなストーリーらしい。




 というかね? というかだよ?

 現時点で少し気になることがあるのですが。


「……………ちょっと待って」

『ん? どうした?』

「…………そのゲーム、R-18なの……?」


 ………数秒間の、沈黙。

 しかし……精霊王は哀れむような顔をしながら、頷く。


『…………あぁ。グロテスクじゃなくて、エッチな方だ』


 スンッ……。

 真顔になりつつ、頭を抱える。

 そして、思いっきり心の中で叫びました。



 ま・さ・か・のっっっ! 十八禁ゲームっっっ!



 なんで!? なんでなのっ!?

 どうしてそんなゲームの(類似)世界に転生したんだ、私っっっ!?

 私、セクハラとかはバンバン戦えるけど、エッチな感じ系の耐性一切ないんですけどっっ!?

 どうすればいいのぉぉぉぉぉぉぉお!?


「…………アリエス、大丈夫?」


 呻く私を心配してくれたのか……ルイ君は顔を覗き込んでくる。

 でも、そんな彼に思いっきり首を振って返事をした。


「うぐぅぅ……むりぃ……! エッチなのはたいおーがいですぅぅぅ!」

「…………いや、アリエスが実際にそういうのに関わる訳じゃないんだから……そこまで深く考えなくてもいいんじゃない?」

『そうそう。関わるのはルイの方だ。ルイは攻略対象の一人だからな』

「「えっ?」」


 ガバリッ!

 勢いよく振り向いた私達は、精霊王の言葉に絶句した。


『言ったろう? 二人とも関わりがあるって』


 いや、まぁ……確かに言ってたけど。


『アリエスは《邪神兵団》の幹部で……その身をもって邪神を召喚する召喚師、または生贄姫だ』

「「生贄姫いけにえひめ!?」」


 なんか一気に物騒になったんですけどっ!?


『そして、ルイは攻略対象の一人……ヤンデレ軍人だ』

「…………なんか、アリエスの情報()が衝撃的すぎて、ボクの方はそんなんでもないね?」


 ルイ君は首を傾げながら、ぽつりと呟く。

 ………………あはは……微妙におんなじこと、思っちゃたよ……。


『まぁ、こちらも詳細を話すと……』



 ゲームの中の私はルイ君に拾われることなく、精霊王の支配から世界を解放すること(つまり、精霊王の殺害)を目指す《邪神兵団》に拾われて……幼い頃から育てら(洗脳さ)れて、召喚師として幹部になる。

 そして、最終局面で自らの命と巷で起こした事件でゲットした媒介(人々の負の感情)をもって……異界から邪神を召喚するキャラなんだとか。


 ルイ君の方は、守護者候補として軍部から推薦された軍人。

 ルイ君ルートのハッピーエンドに進むと、溺愛されて、甘々コースになって愛の力でラスボスを倒すのにも成功して、沢山の子供達に囲まれて幸せ〜な感じになるらしいけど……バッドエンドだと、ヤンデレ大暴走して「邪神にボクら以外の全員を殺してもらおうね」と永遠に世界に二人だけ〜な展開になるらしい。



 いや、私の方も相当アレだけど……ルイ君の情報も結構、物騒だよ。うん。

 全然、ルイ君の情報もそんなんでもなくなかった!


『とまぁ、こんな感じだ』

「いや、父様……殺害を目論まれるって、何したの?」

『何もしてない! 今回は完全にわたしも被害者!』

「………………」


 精霊王はそう言って否定するけど、ルイ君は何かやらかしてるだろうと言わんばかりの目で睨む。

 しかし、精霊王は更に本気で否定した。


『本当だって! 今回ばかりは完全に! とばっちりだぞ!』


 精霊王はペシペシと正座している(というか、まだしてるんだね……)自身の太腿を叩きながら、《邪神兵団》の目的を話し始める。


『《邪神兵団》というのはなんかこう……腹にドス黒いモノを抱えた奴らが集まっているらしくてな? 彼らは色々と壊してしまいたいらしいんだ。世界も、精霊も、精霊王わたしも、この世界に生きる生命達も。わたしが殺されそうになってるのは……この世界の生命達を守る存在だかららしい』

「……………守る、存在……」

『そう。わたしが死ねば、精霊も死ぬ。わたしが死ねば、管理されることがなくなった世界も滅ぶ。世界が滅べば、その世界で生きる生命達も死ぬ。しかし、先にこの世界、今を生きる生命達を虐殺しようとすれば……管理者たる精霊王わたしが立ち塞がる』

「…………あぁ……そういうこと。だから、父様を殺そうとしてるんだ」


 …………なるほど。

 精霊王が《邪神兵団》の一番の障害になるからこそ……彼らは精霊王を消したい。

 そして、精霊王の殺害=世界滅亡に繋がるから……《邪神兵団》は精霊王を殺すことを目的としてるんだね。




『ゆえに、《邪神兵団》はアリエスを狙う』




「「………………へ?」」


 精霊王から唐突に告げられた言葉に、私達は目を見開く。

 いや……なんで、そこで出てくるのが……私?




『何故なら……アリエスはこの世界で唯一、精霊王わたしを殺せるモノ……つまり邪神を召喚できるからだ』




 ………………その瞬間ーー。




 私は本気で倒れたくなりました(マル)







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