<妹>ーラン・ルピナスー
名前回です。ランは変態です、百合要素出てきます。気をつけてください。
次回はバカ王子の名前回を予定しています。
いつもに比べて長いですが、よろしくお願いします!
私のお父様が公爵様になって、私にはお姉様が出来た。
彼女とはじめて会った時は驚愕したものだ。
流れる美しい白金の髪に、白磁の肌。
長い睫毛に縁取られた大きな瞳は薔薇色で、まるで宝石の様に煌めいている。
一瞬で目が奪われた。
あぁ、こんなに美しい人がいるんだ。
まるで神話の女神の様。
「…私は今日からあなたの姉になるダリア。よろしくね。」
「っ!よっよろしくお願いします、ダリアさん!!」
「姉妹なのにそんな他人行儀な呼び方は寂しいな…」
「おっお姉様…!」
私がお姉様、と呼ぶとその人は少し目を細めて優しく笑ったのだった。
この時の私は、こんな美しい人…お姉様、が自分のことを見てくれて、自分の言葉で笑ってくれた、それがたまらなく嬉しかった。
そしてお姉様は容姿に限らず、全てにおいて優れていた。
座学、刺繍から礼節、人との関わり方まで。
お姉様はすぐに人気になった。
それに婚約者まで出来てしまった。
…あのクズ野郎がお姉様を幸せに出来るわけがない、と意気込んだものの相手は王子。
どうにも出来なかったのが悔しくて仕方がなかった。
それに私の焦りの原因は他にもあった。
お姉様が私を見てくれない。
目は合うし、こちらを向いている。
けれど感情はこちらに一切届かない。
どうすればいいんだろう、って思った。
お姉様にこっちを向いてほしい。
私を見て欲しい。
そのために何でもやった。
学園の勉強やマナーの勉強も頑張った。
けれど、お姉様の興味すらひけない。
…うちではアス兄も、お姉様も優秀だからそんな成績当たり前すぎて気が付きもしなかったのだろう。
妹として思いっきり甘えてみたり、お茶に誘ってみたりもした。
でもお姉様はあの王子の相手に忙しくてそもそもそんなにお茶出来る時間がなかった。
それに甘えてみても、完璧な微笑みで模範的な対応をされるだけだった。
どうすればいいんだろう、って思った。
どうすれば「完璧令嬢」は私を見てくれる?
その時気が付いたんだ。
今まで嫌われたくない、と思ってやらなかったけどお姉様が私の方を見てくれるならいいか…ってね。
私はそれからお姉様に嫌われる様なことばかりをした。
我儘を言って癇癪をおこして、思ってもいない悪口をお姉様に言って…少し心が痛かったけど、作戦は大成功だった!!
今まで私がなにをしても完璧な微笑みで対応していたお姉様に、少し嫌悪の色が浮かんだのだ!
そしてボソッと「やっぱりあの人の娘か…」っていう呟きがきこえた。
やった!
お姉様がどんなものでも私に感情を向けた。
やっと、やっとこっちを見てくれた。
それがたまらなく嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて嬉しくて、嬉しくて仕方がなかった。
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あれから数年、私は今日もドタバタと音をたてて走りながらお姉様の教室へ向かっていた。
別に普段からこんな走り方なわけではない。
ただ、こうするとお姉様が注意してくれるから。
「姉様ぁぁ!!これは一体どういうことなんですか!?」
廊下でそう叫びながら私は教室の扉を開けた。
教室の中を見るとお姉様と楽しそうに話す、ヤナギ・イキシアが目にはいった。
くそ…あいつ幼なじみだなんだとかいってお姉様に寄り付きやがって…
私が歯ぎしりしながら見ていると予想通りお姉様が呆れたように私を見ていた。
「…ラン、そんなに大声を出さなくてもきこえるから。クラスメートに迷惑なのでもう少し声量を抑えて。それに走り方がはしたない。」
あぁ、嬉しい。
お姉様が私を見てくれてる。
「そんなこと、今はどうでもいいんですよ!!姉様昨日の…お父様はどうなったんですか!?昨日お父様もお姉様もお兄様もいなくなっちゃって何もきけなかったし…モゴっ」
ひゃあっ近い!近いです、お姉様!!
お姉様が私の口を抑え耳元で告げる。
「それは今日にでも家でお兄様と一緒に説明する。家の事情を学校中に広めるつもり?」
それからの話はお姉様が近すぎて頭に入ってこなかった。
…超いい匂いする。
だって本当は別にお父様のこともあの王子とのことも興味がなかった。
ただお姉様と話すための理由に使っただけ。
私がお姉様を十分に堪能しながら適当なことを喋っていると、お姉様が決心したような顔をしてこう言った。
「だから、それが何?私があなたより優れているというならそれは私の才能じゃなくてあなたの努力不足。だってランはいつも面倒臭いこと全部私にやらせてきたよね?宿題も裁縫も何だかんだ理由を付けて。それなのに全て私のせいにするのはおかしいと思う。いや、おかしいよ。そうやって嫌なこと全部押し付けてきたから成績も伸びなくてお父様にも怒られてたんでしょ?最初はお父様だってあなたを殿下の婚約者にするつもりだったの、知ってたはず。まぁ、やってあげてた私も悪いんだけど…これからは一切やらないし、手伝わないから。私を逃げる事の理由にしないで。」
「なっ…な」
思わず間抜けな声がでた。
なんてことだ…あのお姉様が、「完璧」なお姉様が私に向かってこんなにも感情をぶつけてきている!?
歓喜に震えていた私は、やっぱりその後の話は全く頭に入らなかった。
ただ、気がついた時に、隣でヤナギ・イキシアが私を励ましてきたのが何かムカついた。
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帰ってアス兄とお姉様にお父様についての話をされた。
まぁ、昔から最低なヤツだとは思っていたけどここまでだったとは…
「私お父様嫌いだったんです、会う度兄様や姉様を見習えーだのこの出来損ないがーだの。人には言うくせ自分は仕事を執事に任せて愛人の所に通って…母様のお墓参りにも行かない。ざまぁみろってかんじですよ。」
私がそういうと、お姉様は少し目を見開いて、それからクスッと微笑んだ。
…天使かっ!いや、天使だった。
それにしても、親の仇の娘にもこんなに優しく接してきたお姉様はもしかしたら天使を通り越して女神なのかもしれない。
それからお姉様は私が話しかけるとちゃんと私を見て、話してくれるようになった。
これだったらもう、わざわざ嫌われる様なことする必要ないかな、良かった…。
邪魔者の婚約者もいなくなったことだし、ガンガンアタックして行こうっと!
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ランの変態さ加減分かっていただけたでしょうか…!