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よろしくお願いします!
「…ラン、そんなに大声を出さなくてもきこえるから。クラスメートに迷惑なのでもう少し声量を抑えて。それに走り方がはしたない。」
「そんなこと、今はどうでもいいんですよ!!姉様昨日の…お父様はどうなったんですか!?昨日お父様もお姉様もお兄様もいなくなっちゃって何もきけなかったし…モゴっ」
私は急いでランの口を抑え、耳元で告げる。
「それは今日にでも家でお兄様と一緒に説明する。家の事情を学校中に広めるつもり?」
「…分かりました。じゃあ殿下とのことはどうなっているんですか!?」
「ただ婚約が解消になっただけだよ。」
「でもでも!それって多分殿下からじゃなくて姉様から言い出した事ですよね?」
「…まぁ、そうだけど」
「ひどいです、姉様…最初は私が殿下の婚約者になる予定だったんですよ?だけど姉様の方が美人だし、頭も良いし、相応しいと思ってたから我慢したのに…」
「…」
あぁ、またはじまってしまった。
ランの『悲劇のヒロインごっこ』が。
始まったが最後私がランの我儘をきかないと終わらない。
しょうがないな…
とでも言うと思ったか!
私はもう自由に生きるのだ。
お馬鹿な婚約者にも自分勝手な義父にも我儘な妹にも、もう振り回されない。
「姉様はいつもそうですよね。何でも出来るから平気な顔して私から皆奪っていく…」
「で?」
「…え?」
「だから、それが何?私があなたより優れているというならそれは私の才能じゃなくてあなたの努力不足。だってランはいつも面倒臭いこと全部私にやらせてきたよね?宿題も裁縫も何だかんだ理由を付けて。それなのに全て私のせいにするのはおかしいと思う。いや、おかしいよ。そうやって嫌なこと全部押し付けてきたから成績も伸びなくてお父様にも怒られてたんでしょ?最初はお父様だってあなたを殿下の婚約者にするつもりだったの、知ってたはず。まぁ、やってあげてた私も悪いんだけど…これからは一切やらないし、手伝わないから。私を逃げる事の理由にしないで。」
「なっ…な…」
「でもいいんじゃない?今から殿下と婚約しても。似たもの同士でお似合いだもの。」
「っ!」
あっやば、言いすぎたかも。
フォローしとこ…
「…つまり私が言いたいのは努力して努力してここ止まりの私よりあなたはまだ無限の可能性があるから頑張りなさいってことで…あぁ、ダメだ。ごめん、ナギ!フォローしといて!!」
「えっ俺かよ!えっ…まぁとりあえず落ち着けよ、ラン。」
…私はもしかしたら興奮すると言いすぎてしまう癖があるのかもしれない。
現に2人程放心状態にさせてしまってるし。
うん、気をつけよう。
…でもちょっとスッキリしたかな。
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家に帰ってお兄様と一緒にお父様のことについて説明するとランは何だかそこまでショックをうけていなかった。
「私お父様嫌いだったんです、会う度兄様や姉様を見習えーだのこの出来損ないがーだの。人には言うくせ自分は仕事を執事に任せて愛人の所に通って…母様のお墓参りにも行かない。ざまぁみろってかんじですよ。」
肉親にまで見放されてるとはお父様は相当に最低な人間だったようだ。
それにしても「ざまぁみろ」、か。
なんだかしっくりくる言葉だ。
…あと、何故か私がランに説教もどきをした日からランが異常に私に懐いてくる。
怖い。普通に怖い。
えっ、だってあれだけ言われたら普通恨んだり嫌ったりするものじゃないの?
ランが新たな扉(ドM)を開いていないことを願うばかりだ。
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また文章量についてご意見くださった方々、本当にありがとうございました!
調節していきたいと思います!