4月29日
私はいつも通りネットサーフィンをしている。
ふと、昔ちらほら小説を書いていたサイトのことを思い出した。
"小説家になろう"というサイトだった。
パスワードを覚えておらず、何度かパスワードを打ち込むものの、全然ログインすることができない。
30分ほどやってると、閃きが下りてきた
"終末54321"
あの頃の私はこのパスワードを何故だか気に入っていた。
ログインすると、私が昔投稿した7作の駄作が転がっていた。
「ふふ、なつかしい。」
「異世界に転生したゾンビが異世界人達を次々にゾンビにしていく...」
「あー...これは結構恥ずかしいわね...なんだかあらすじだけで読む気にもならないわ」
私は次の作品をクリックする
「異世界に転生したエリンギが知能を授けられ、様々なスキルを使用して異世界の王を目指す...」
「これは何だか面白そうだわ。いけるわよ私。」
「...あちゃー。これは一ページしか書いてないわね。最初のインパクト重視で、見切り発車して、何も考えてなかったパターンね。これは。
「これも駄目と...」
私はその後も自分の駄作を批評していった。
案外時間を潰せたなぁと思っていると、書きかけの小説が一つあるのに気付いた
"4月28日"
タイトルはそう書いてあった。
「4月28日...」
中を見てみるとたった一行だけ書かれていた。
"だれかいませんか。ひとりぼっちじゃしにたくない..."
「なんじゃこりゃ...」
「...」
「まあ、お大事に...あの日の私...」
「ふぅ...」
私は背伸びをした。
「折角だし、なにか書こうかしら...」
「なんかいいネタないかしらねぇ...」
「私のこと...誰か覚えてる...?」
「ふと、カーテンを開け...窓の外を見た...みたいな...書き出しで...」
「...やっぱ才能ないし書くのやめようかしら...書いても意味ないし...」
「うーん...そうね...現状をそのまま書き出してみるっていうのは?...意外と面白くなるかも」
タイトルは "4月29日"
「えーっと...カーテンを開けて...」
カーテンレールはシャーッと無機質な音を立てる。
「窓の外を見ると...」
昼なのに夜みたいだった
「ついこの間まで、町だったところは、水浸しで」
黒い人の形をした もの がそこらじゅうに浮かんでいた
「動くものはなく」
あたりはしんとしずまりかえっていた。
「きぼうはみえない」
ディスプレイの明かりだけが部屋のなかを照らす
「おそろしく」
けれど、おちつく
「このよのおわりのような」
このよのはじまりのような
「こんな感じ...かな?」
4月29日 -終-