流星 5
正体不明の訪問者たちは、彼の携帯電話の呼び出し音に気がついた。
「お前は泥棒か!」
相手に詰め寄られ、健也は慌てて否定する。
「違う! 俺はこの家の者だ」
「では何故、このような場所にいる」
「ここの家の者なんだから、何処にいようと勝手だろ!」
腹を決めて再び携帯電話の着信履歴を見てみると、発信人は蒼馬だった。
健也は怒りをおぼえて、携帯電話のボタンを押す。
失礼極まりない二人は、健也の事を胡散臭そうに見ている。
(いったい何なんだ)
3コール目にして相手と繋がると、彼は思いっきり怒鳴った。
「蒼馬。お前の所為でヒドイ目に遭っているぞ。
早く来い!」
蒼馬という名前に、招かれざる客たちの表情が変わる。
だが、それ以上に彼らを驚かす事態が発生したのだった。
「それは悪かった」
携帯電話とすぐ傍から肉声が聞こえてきたのである。
門から一人の青年が携帯電話を使いながら現れたのだ。
しかも木刀袋を背負っての登場である。
「岩見 蒼馬!」
「早田さん。隣にいる人はどなたですか」
蒼馬の表情は険しい。
親の仇を見るような表情だと健也は思った。
「岩見、この方は……」
言い訳のように相手を紹介しようとしたが、早田は次の言葉が出ない。
何しろ紹介しようとしていた人物の顔が、ぐにゃりと変形したのである。
「この方は……誰だ?」
早田は助けを求めるかのように、健也と蒼馬を見た。
(誰だじゃない!)
健也は思わずツッコミを入れそうになる。
「貴様。突破者か」
蒼馬が木刀を出そうとしたとき、相手の右腕が伸び彼をなぎ飛ばした。
「蒼馬!」
だが、健也もまた、その左腕によって壁に押しつけられてしまう。
逃れようとするが、その腕は粘土のように不定形になりながら健也を捕らえ続けた。
『後継者ハ逃サヌ』
機械で作られたような声。
しかし、健也はドキッとした。
(イグニサスのことか!)
先程まで思い出せなかった剣の名を、はっきりと思い出す。
そして、ある場面もまた脳裏に蘇る。
(あの白い人は……)
自分の前に現れた人が叫んだ言葉。
「ルベオ イグニサス!」
小学生のときの不思議な出来事。
あの時、白い人がそんな言葉を言っていたような気がした。
どうして急に思い出したのかは、健也自身にも分からない。
ただ、その言葉を叫んだことがきっかけとなり、急に健也の身体から赤い光が現れる。
「何なんだ……」
蒼馬は友人が赤い光に包まれているのを、ただ見ているしか出来なかった。
健也の身体を覆う赤い光。
それが全身を覆う真っ赤な戦闘服の形になった時、健也の手にはイグニサスが握られていた。
同時に、健也を押さえつけていた粘土の手は、水分を奪われて脆く崩れていく。
『!』
「今度はこっちの番だ!」
彼は勢いを付けてイグニサスを振るう。
(炎……?)
蒼馬の目に友人の体を包む赤い粒子が映る。
粘土人間はその一撃で瞬時に水分を全て奪われ、その場に崩れてしまった。
その中から出てきたのは金属の箱のようなもの。
チカチカと光を発していた。
「健也。その箱を壊せ」
起き上がろうとしていた蒼馬に言われて、健也はイグニサスを突き刺す。
箱は簡単に金属の塊となり、光もまた消える。
健也は改めて自分のまとう赤い衣服とイグニサスを見た。
「これはいったい何なんだ」
思わず尋ねたが、蒼馬にも答えられない。
「もしかして、初めて見るけどイグニサス専用の防護服じゃないか」
早田はあっさりと言ったが、聞いた方の健也は何故か立っているのも辛くなって、その場にしゃがみ込んでしまった。




