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あおぞら魔法学校

次の休みの日、俺はコウタと例の公園へ来ていた。

コウタに魔法の基礎を教える約束をしていたからである。

何故か天羽もその場に付いて来ていた。

天羽も当初、俺の使った魔法を目を輝かせて見ていた為興味はあったのだろう。


俺はコウタと天羽に魔法の原則である「火・水・風・土・雷・氷」の属性についてや、魔法を詠唱する時に操る精霊の加護について、大地の気の流れについてを丁寧に教えていった。

そもそもこの土地には精霊がいるのか、大地に気が流れるという概念があるのかといった疑問もあった。

気については気功や風水という物があるので概念的にはあるのかもしれないという曖昧な感じだった

精霊はというと実際に妖精の類や小さなおっさんを見たという人はいるとの事だが、それも眉唾物で信じ難い内容だという。

小さなおっさんについては少し興味がある……

大きなおっさんなら毎晩横で下卑た顔をしてパソコンの画面を見つめている奴がいるが。


一先ず存在するという前提で教えていった。

大地の気の流れを掴み、自分の魔力へと変換するイメージと、精霊の加護を受ける様に存在を確認するイメージを伝えた。

天羽は教師という事もあって理解は早かったが、コウタは勉強は苦手な様で飲み込みが遅かった。

人それぞれ得手不得手がある事を説明し、各属性を1つずつ試していった。

その結果、コウタは雷属性に、天羽は水属性に特性がある様でそれ以外は全く扱えない様だった。


数時間に渡る特訓の結果、ついに2人はそれぞれの属性魔法の初歩を習得した。

習得したと言い切れるかどうかは分からないが2人の変化を感じる事は出来た。

天羽は常時掌が湿っている状態になり、コウタは常時静電気を帯電する体質となった。


「いやだー! こんないつも手が湿ってたら好きな人と手もろくに繋げないじゃないー!」


----- パチッ! -----


「痛っ! これ金属部分触ると静電気がいつも走って怖いぞ……」


2人は習得したといっても制御は出来ていない様子だった。

制御が出来る様になるまでは続けて特訓をしないといけない様だ。

天羽は手を振り水を辺りに振り撒きつつ泣き、コウタは落ちていたアルミ缶をおでこにくっ付ける特技を得て喜んでいた。

コウタはいつでも前向きで好感が持てる奴だ。

その日はそこでお開きとなりそれぞれ家路へと着いた。


後日状況を聞くと、天羽は必要に駆られ必死に特訓した結果、手を濡らしたり乾かしたり出来る様になったという。

コウタは空き缶だけではなくスプーンやフォークなども付けれる様になったと嬉しそうだった。

既に制御するという考えからシフトしていて実に頼もしい。

この調子でもっと大きな物も体に付けれる様になって欲しいものである。


その後の2人は魔法を使いたいという考えがなくなった様で特訓を止めてしまった。

とはいえ、天羽はテーブルを拭く時、布巾を濡らすのに手を湿らせて濡らすくらいには扱える様になっていた。

コウタもスプーンを5本おでこに付けられる様になっていた。

生活にはあまり役に立っていない様だが、2人とも今まで出来なかった事が出来る様になって喜んでいる様ではあった。


---


数日後、バイトから帰宅後天羽宅で晩飯も食い終わりテレビを見ながら寛いでいた所、天羽が突然叫び声を上げ俺をパソコンの画面へと呼び寄せた。

18禁の画像でも見せてくれるのかとパソコン画面を覗き込むと、そこには1つの動画が流れていた。

その動画は18禁ではなく動画投稿サイトのとある動画であった。

内容は1人の男が特技を披露していくという物だ。


覆面を被った男がおでこや体にスプーンやフォークを複数貼り付けていた。

どうみてもコウタだった。

そもそも「電撃コウタWORKS」と名乗っていたからバレバレである。


コウタの特技はバリエーションが増えていた。

スプーンやフォークはもちろんの事、空き缶ではなく中身の入った500ccの缶もくっ付けていた。

物をくっ付ける事に止まらず、自分が車にくっ付いてそのまま走るという芸当まで披露していた。

コウタの動画のアクセス数は凄い事になっていて、世界中の何万という人が見ている状態だった。

魔法を教えた事によってコウタの人生を変えてしまったかもしれない。


数ヵ月後、コウタは動画再生の収入でかなりの金額を稼いだ様であった。

俺のおかげだとコウタは稼いだ金でメイド喫茶へと連れて行ってくれたのだが、その時のお話はまたの機会に語る事にしよう。


---


本日はバイトの日である。


バイトを始めてから数日経過した為、仕事にもある程度慣れてきた。

体力を使う事は向いていないが、頭を使う事や手先を使う事は向いている様でパン作りも会計もお手の物だ。

今日の担当は学校がある日だったのでレジでの会計担当だった。

レジの仕事はつまらない。

客が来ないと仕事がないのだ。


そういう時はぼーっと外の景色を眺め、店の前を行き交う車や人の流れを観察していた。

駅前という事もあり人通りも車通りも多く飽きが来ない。

元の世界には無いデザインの服装の種類や、存在すらしない車の車種を目に焼き付ける様に眺める。

時には家に帰ってから天羽に聞いたり学校でコウタに聞いたりする為に、仕事用に与えられたメモ帳にメモを取っていた。

ぼーっとし、時にメモを取る姿は勤勉に思われるのだろうか店長からの心象はいい。


人混みの中に紛れてたまにコウタがパンを買いに来てくれる。

1つしか買って行かないが、コウタが来てくれる事で時間潰しとなり退屈な時間の一時を埋める事が出来るのでありがたい存在だ。

店長に睨まれるか睨まれないか微妙なラインまで立ち話をしてコウタは帰っていく。


いつもの光景である。

だが、今日はいつもと違った。


コウタがこちらに手を振りながら店の自動ドアを開け外に出て行くと、目の前に白くて長いいかにも高級車ですというピカピカな車が止まった。

コウタの目の前に止まった車の助手席から執事の様な服装の男が出てくると、後部座席の扉を開けた。

コウタのお出迎え……ではなく、中から高貴な服装と一目でわかる身形の貴族のお嬢様の様な女が出て来た。

堂々と路上に止められた車の前後には、後続で付いて来た黒塗りの車から出て来た、これも黒ずくめの服装をした屈強な男達が周囲を警戒する様に立ち並んだ。

呆気に取られ口が半開きになったコウタの横を素通りし、お嬢様を先頭に執事と黒服が1人、計3人が店の中に入ってきた。

店の入り口には黒服が2人周囲を警戒する様に立っていた。

物々しい状況に周辺には人だかりが出来初めていた。


「この店にあるパン全て購入します。今すぐ包んでください」

「全て……ですか?」

「そうよ、時間がないので早めにね」


当然といった表情をしたお嬢様の発言に呆気に取られていると、奥にいた店長がバタバタと音を立てて飛び出してきた。


「これはこれは、梅園寺様! この様な店に御出で頂きありがとうございます! 直ぐにご用意致しますのでしばらくお待ち下さい!」


お嬢様は偉そうな態度でコクリと頷き、それを見た店長はニコニコと満面の笑みを浮かばせながら両手を捏ね繰り回していた。

俺もレジから離れ商品の袋詰めを手伝わされた。

しかし全商品を買って帰って全て食べきれるのだろうか。

袋詰めをしながら店長の満面の笑みを見ているとお前も手伝えと思ってしまうが、上得意客様なら尚更今後の来店も繋ぎ止めておきたい所であろう。


店長が対応している上得意様はどうやらワールドサテライトカンパニーと言う世界的に有名な企業の社長令嬢らしい。

社長令嬢は令嬢と言う名の通り気品に溢れ、栗色で綺麗なウェーブの掛かった髪を揺らしながら店長と会話をしていた。

見たところまだ14~15歳といった所で、社長令嬢という事もあり店長への態度も少々横柄な感じが見受けられた。


パンの袋詰めをしながらも令嬢をチラチラ観察していた為か、1歩引いた所に立つ執事から訝しげな視線を送られていた。

お嬢様をチラチラと見ている俺の事を警戒しているのだろう。

その数歩後に立っている黒服もこちらをじっと見つめてきていたが、警戒の視線というよりは逆に俺を観察している様な視線であった。


奇異な視線に黒服へ視線を向けよく見てみると、その黒服は見たことある顔立ちをしていた。

金色のサラリと風に靡く髪とその隙間から覗く長く尖った耳。

その顔は端整な顔立ちをしていて、一言で言うとイケメンだ。

がっしりとした体格は全ての者からお嬢様を守る事が可能である事は想像するに容易である。

その全体像から見知った1人の人物像が浮かんだ。

というかあのいけ好かないイケメン顔は1人しかいない。


元の世界のギルドメンバーであり、俺がこの世界に飛ばされる直前まで一緒にパーティを組んでいた聖騎士リオナール スラッシュバイトだった。

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