表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/37

天羽睦月の休日

私の名前は天羽睦月!高校の教師をしています。


今日は学校がお休みなので小春日和の良い天気に誘われてお外へお散歩に来て見ました♪

平日のこの時間、いつもなら授業中の時間だけど今は春休み。

教師も長期休暇を取れるすばらしい職場です。

とはいっても日直当番があるから週に何度かは学校に行かないとなんだけどね……


今日は朝からご飯を食べた後溜まっていた洗濯をしてお部屋をお掃除をがんばったの。

でもちょっと疲れたので気分転換に外を歩く事にしました。


春の匂いって感じがする心地よい風が私の頬を擽るとても気持ちいいお散歩日和です。

こんな日は愛犬のショコラちゃんのお散歩に出かけたいけど、うちは残念ながらペット禁止のマンションだから実家に預けてます。


観光名所巡りもいいけどこれだけ天気がいいなら川沿いを歩きたいなーと思って、まずは川沿いを目指します。

途中コンビニに寄ってアイスを買ってみました。

アイスの美味しい季節になってきてとってもうれしい。

私は冬でもアイスを食べるくらいアイス大好きなの。


しばらくフラフラと歩いていたら目の前に猫ちゃんが!

その猫ちゃんを追跡する事にしました。


猫ちゃんはトコトコと歩いては何かの臭いをくんかくんか。

またトコトコと歩いては車のボンネットに乗って伸び。

そんな姿を追いかけては携帯で写真をパシャパシャ取り捲りました。

しばらく追い掛け回すと川沿いの公園付近で猫ちゃんは寝転がりました。

チャンス!とばかりになでなでしようと近づくと、サッと飛び起きて公園の茂みに逃げ込んでしまいました。


残念……と思っていると公園の中から「うぉ」っという声が聞こえてきました。

公園の中に目を向けると何やら中二病に侵されていそうな出で立ちの人がいました。


私もアニメや小説などを少々嗜むけど、あんな恰好をして出歩く事は流石にはばかられます。

私はこっそりその子に近づいて後をつけてみました。

その子は猫ちゃんにビクビクとしながら辺りをきょろきょろ、少し進んではきょろきょろ。

車を見かけては茂みに隠れるという完全に不信人物そのものの動きをしていました。

よく見ると高校生くらいの男の子でした。

中二病はそろそろ卒業した方がいいぞーと思いながらこっそり観察していました。


その時突然、その子が持った杖の様な物の先がぼんやり光ったと思ったら先端から火の玉が飛び出ました。

私がびっくりして開いた口が塞がらないでいると、目の前の木に飛んで行った火の玉がその木をぼわっと燃やしてしまいました。

火事!火事!と私があたふたしていると、次は杖の先から水の塊が出てきてその火を消してしまいました。


呆然とその子を見ていたら、今の小火騒ぎで人が集まってきました。

野次馬というやつですね♪


どうやらその小火を起こした瞬間を見ていた人がおまわりさんを連れてきたみたいです。


「おまわりさん! こっちです!!」


遠くから女性の声が聞こえてきて、女性に連れられたおまわりさんの姿も見えました。

その子は手をパーにしたりグーにしたりして何やらブツブツ呟いていましたが、女性のその声で自分の周りに人だかりが出来ている事に気づいたようでした。

明らかに挙動がおかしい。

うろたえているようでした。


「君! こんな所で何しているんだ!!」


どうにも挙動不審な彼。

このまま連行されてしまってはさっきの不思議な光景について質問が出来なくなる!

なんとか救い出すことは出来ないか。

そんな事を画策しながら頭を捻っていると、突如地面から砂埃が立ち上がりました。

周りにいた野次馬やおまわりさんは、突然あがった砂埃に翻弄されていました。

砂埃が収まった頃、周囲を見るとそこには既にその子の姿がありませんでした。


「あ、こらまて!」


おまわりさんのその声を聞いて、その視線の先を見ると既にその子は橋の麓まで移動しているではないですか!

瞬時にあんな遠くまで移動できるなんてボ○トもびっくりです。

先程の火の玉や水といい、あの瞬間移動といい人間業ではありません。

胸がときめきます!

やはりとっ捕まえ……いや、優しく問いかけて何とか今の現象について聞き出さなければ。


私はおまわりさんが追いかけ始めた後ろを、やや離れた距離から追跡する事にしました。

高校教師ではあるものの、体育はからっきしの私は随分とおまわりさんとの距離を開けられてしまいました。

何とか連行される前に間に割って入って救出せねば!


うちの学校の生徒と言う事にしたら、身元保証人として引き受ける事が出来るかもしれない。

そんな事を考えながら橋を渡り切ると、そこにはまた少々の野次馬の集りが出来ていました。

人の波を掻き分けて中心にいるおまわりさんとコスプレイヤーへと近づいていきました。


「どうかされましたか?」


私は平静を装いその会話に割って入り、彼を悪の手先から救出する事に成功したのでした♪


---


人混みでの立ち話は辛いだろうという事で、天羽睦月に促され川沿いの椅子のある所へ移動する事になった。

ここで座って待つように言うと、天羽睦月はどこかへ走って行ってしまった。


戻ってくると鉄で出来た円柱状の物を2つ持っていた。

その内の1つを俺に渡して来た為、恐る恐る受け取りまじまじとその形状を観察していると、天羽睦月は一度俺から取り上げたそれの頂点部分に穴を開けて返してきた。

天羽睦月も自分の持っている物を開けると口元に運び傾けた。


どうやら飲み物の様だ。

恐る恐る臭いを嗅ぎ、毒が入っているかもしれないと考えつつも一口飲んでみることにした。

元の世界にはない様な、独特な渋みのあるでも不快感のない味わいの飲み物だった。


「お茶よ、ティー。分かる?」


ティー……ロイヤルティーやハーベストティーの様な物だろうか。

ああいった飲み物は飲む事で一定時間ステータス向上のバフを得られるという。

ここぞという戦闘の時の為に準備して火力の底上げを行う飲み物だ。


「落ち着いた? 君名前はなんていうの?」


見知らぬ土地にいきなり来て、おまわりさんに詰問され動揺している様に見えたのだろか。

天羽睦月はそう言うと心配そうな顔をしながら、しかし微笑みながらこちらを見ていた。


「賢二郎 上杉だ」

「外国人? には見えないか。帰国子女なのかな……? 出身はどこなの?」


天羽睦月は怪訝そうな顔をしていた。

外国人、帰国子女という単語はわからないが出身地という単語はわかった。


「グランビューテルだ」

「グランビューテル……聞いたことないわね」


天羽睦月は腕を組み小首を傾げるとうーんと唸っていた。

しばらくの沈黙が流れる。

俺は渡された飲み物を飲みながら川の流れを見つめていた。


「ところでさっきのあれは何? その杖の先から火が出たり水が出たり! あとあのビューンって凄い速度で走ってたあれも!」


天羽睦月は思い出したようなはっとした顔をした後、目を輝かせ俺に質問をしてきた。

この世界には魔法は存在しないのだろうか。

ビューンというのはスプリンタースキルの事だろう。

スキルという概念も存在しないのだろうか。

俺は天羽睦月に魔法とスキルについて1つ1つ説明していった。


「火や水は魔法だ。正確には黒魔術だな。黒魔術には火、水、風、土、雷、氷の6属性がある」

「ビューン? と言うのは恐らくスプリンタースキルの事だと思うが、冒険者になると使えるようになるスキルの一種だ。冒険者共通のスキルと職業ごとに使える固有のスキルがある」


天羽睦月を見るとポカーンと口を開け呆けた顔をしていた。

我に返った天羽睦月は手に持っていた鉄の飲み物入れをやや離れた場所に置いて戻ってきた。


「あの缶目掛けて雷の魔法撃ってみて!」


やや遠くに置かれた缶と呼ばれた鉄の飲み物入れを指差しながら俺を輝かせた目で見つめてきた。

MPの無駄使いだとは思いつつ、助けてもらった礼と思いしぶしぶ頷いた。

ゾーグルポールに魔力を込め、やや遠くに置かれた缶を目標に雷矢を放った。

パシーンという音と共に上空から一筋の雷が降り注いだ。

やはり通常の威力よりやや弱かったが缶を吹き飛ばすくらいには十分の威力だった。

まだ飲みかけの缶を置いたようで、中に入っていた液体を撒き散らしながら缶は弾け飛び地面に叩き付けられるとカコーンという音を響かせた。


天羽睦月を見るとブルブルと身体を小刻みに震わせていた。

雷矢の威力に恐怖しているのかと思いきや、目を丸くして驚きの表情をしながら両拳を握り締めていた。


「やっぱり! 異世界人! こんな事地球上に出来る人いないもの! 私の知る限りでは……」


天羽睦月は興奮していた様だ。

やはり目を輝かせながら俺に駆け寄り握られた拳をブンブンと上下に振っていた。

もこもこを思い出す仕草だった。


天羽睦月の言う様にやはりこの世界は元の世界とは違う<異世界>なのだ。

そしてこの世界の人々は魔法を使えない様だ。

俺はその異世界という言葉に戸惑いを隠せなかった。


「おい、ここはなんていう土地なのだ?」


唐突な質問に天羽睦月は不機嫌そうな顔をして応えた。


「どう見ても年上なんだからその呼び方はないでしょ。せめて名前で呼びなさい。ここは日本の深草という所よ。日本が国名で深草が地名ね。あなたはどうやってここに来たの?」

「対岸に見えるあの深緑地に気が付いたら立っていた」


不機嫌そうな顔をした天羽睦月に俺は応えた。

天羽睦月は腕を組み難しそうな顔をして考え込んでいた。


「あなたこの土地の人じゃないみたいだけど今日の夜はどこで寝泊りするの? お金も持ってないでしょ?」


その問いに俺は鞄の中身を弄り手持ちの金を取り出すと、天羽睦月に手渡して見せた。


「今持っている金はこれくらいだ」

「こんな物じゃこの土地では何も買えないわ」


天羽睦月は手渡された金の裏表を見たり空に透かして見たりして顎に手を当ててまじまじと眺めていた。

書かれている文字を天羽睦月は読めないらしい。

言葉は通じるが文字が異なる様だ。

天羽睦月はウーンとまた腕を組み悩んだ顔をした後、ポンと掌を叩いた。


「よし、今日はうちに泊まりなさい。どうせ野宿したってまたおまわりさんに追い掛け回されるんだし。行きましょう!」


天羽睦月はそう言うと手招きをして移動を開始した。

俺は天羽睦月の言葉に甘え後を付いて行く事にした。


「しかし君の服装は目立つわね……すれ違う人がみんなこっちを見てきて恥ずかしいわ。着いたらまず着替えね」


天羽睦月は頬を赤らめながらそんな事を言ってきた。

周りを見渡すと、言われた通り俺の服装は浮いていた。

多種多様な色とりどりな服装をしている。

その人々の誰もが装備という装備をしていない。

この土地はとても安全な土地なのだという事がうかがえる。

通る道に見える全てが新鮮で見たこともない物ばかりであった。

後日、天羽睦月に案内させて解明していこう。


小一時間歩いた所で天羽睦月の家に着いた。

一言で言うと狭い。

初心者冒険者が泊まる様な格安宿くらい狭かった。

しかし、その実態は恐るべき文化の違いを目の当たりにする結果となった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ