七曲目 中学卒業 次なるステージへ飛べButter-Fly!
「やるせない世の中じゃ常識外れも悪くはないかな」
だって真面目に生きてたら息苦しいですし。適度に力抜いてフィクションの中へ逃避するぐらいでちょうどいいでしょう。
十一月の大勝負も終えて。
いよいよ季節は十二月に移る。あと一か月程で高校受験が始まってしまう。今年は大勝負に次ぐ大勝負で大変だ。そんな少年ジャンプ的展開でとても忙しい。
隼人君たち三人は高校でまた軽音楽部をやり直すために一緒のS高校に受験するようだった。僕はその高校より二つランクの高いY高校を受験するつもりだったけど、取りやめた。その理由も“いじめられっこに遭わないため”って薄っぺらい理由だったし、僕も隼人君たちと同じS高校を受験する事にした。
嫌味な言い方になってしまうけど、僕にとってS高は今受験しても受かる自信がある程の高校だ。決してS高が偏差値低いと言う訳じゃないし、むしろ平均よりやや高い程なのだけど、それ以上に僕の内申が高いから余裕だ。……口にしたら今追い込みしている隼人君たちに殺されそう。
学校での生活は受験一色になってしまって、僕としてはちょっとだけ寂しい。隼人君たちも受験勉強に集中して、ハコライブから一度も皆で練習していない。僕もしばらくギターに触っていない。受験勉強があるからね。
そうこうしているうちに十二月も終わり。
新年の一月が始まった。我が家の新年最初の行事は初詣。商店街から少し歩いたところにある、お山の大師寺に参拝に行くのだ。
そして、毎年、初詣は夜霧家と共に行くのが恒例だ。
元旦の朝日がまだ白んでいるぐらい早い時刻に、我が海藤家と夜霧家は集まって一緒に詣でるのだ。
「あけましておめでとう、シン」
「うん。今年もよろしくね」
両親が挨拶を交わす横で、僕も夜霧さんと挨拶を交わす。
今日も今日とて、彼女から爽やかなソーダミントめいた香りが漂う。息も白むほどの気温なので、大きなコートやマフラーを身に着け、頬を赤くしている夜霧さんはとても可愛い。まさに眼福。
挨拶もそこそこに、二家族揃って大師に向かう。
「真一君、真一君」
その途中、夜霧さんのお父さん――おじさんが小声で僕の耳打ちをしてきた。
「何ですか、おじさん。そんな忍者みたいにこそこそして」
「そりゃあ忍ぶさ。何せ冬華の前だからね」
僕らの様子を気にしてか、すぐ前にいる夜霧さんがちら、と意識を向けて来た。ドーモ、ヨギリオジ=サン。でも別に僕、ニンニンしなきゃいけない事してないと思うんですけど……。蛇博士でも無いですし……。
「この前のデート、どうだったんだい?」
「は――? えっ?」
そう言えば、と僕も思い出した。……おじさんには確かにお世話になった。とは言っても……。
「彼女とか、出来たのかい?」
「彼女って……。いや、まだですって。この前のが初めてのデート? でしたし……」
「そ、そっか」
僕の返答に、おじさんは「ふぅ」と安心したように一息ついていた。……前で歩いている夜霧さんも、気持ち肩を落として安心したような気配を見せた。
「そんな期待されても答えられませんよ。僕は女の子受けするような性格じゃないですし……。それに、この前もデートって言うより、ただの買い物? 遊び? みたいなものですから」
「そ、そうだったのか……。いや、ならいいんだ。うん」
おじさんはそう言って、何故か嬉しそうに表情を明るくした。……前の夜霧さんは小さくガッツポーズした気がした。な、何なんですか……?
そうこうしているうちに、目的地の大師寺に到着した。
しかし、流石は元旦と言うべきか、参拝客で境内はごった返しており、歩くだけでも精一杯といった様子で、詣でるのに苦労する羽目になってしまった。
「シン! おみくじでもやっていかないか?」
「うん、いいね」
柄にもなく、おみくじでテンションを上げている夜霧さんの提案を微笑ましく思いながら、僕と二人でおみくじを引いた。
「…………末吉って」
僕の結果は末吉。“凶一歩手前だけど、まぁこれから頑張れば道開けんじゃね?”っていう意味だ。
【願望】たゆまず努力すれば吉。【待人】こちらから向かうが吉。【争事】勝つも負くるも険し……なにこれ。全然先行き不透明なんだけど!?
「大吉だ……。いける。今年はいけるぞ私……!」
そんな僕と隣では、夜霧さんが頬を少し緩ませていた。大吉か。流石だ。その運気、僕も少しもらいたいね。
「そろそろ戻ろうか」
「あぁ」
と、僕達を待っている両親の元へ戻ろうとしたその時だった。
いきなり後ろから、団体の年配のご婦人たちが歩いて来て、道を譲らず、夜霧さんを後ろから押してしまった。
ブーツを履いていた彼女は不意の衝撃でよろけ、そのまま、目の前にいた僕へ体を傾ける。
「おっと!」
そんな彼女を、反射的に胸に受け止める。目の前に自分がいてよかった。新年から転ぶなんて、受験生として縁起が悪いからね。
「―――――――――――。」
「大丈夫? 全く、いくら混雑してるからって人をはねのけて進むなんて…………夜霧さん?」
彼方へ行ってしまったご婦人たちに恨みの視線をかけていたら、僕の腕にすっぽり入った夜霧さんが地蔵のように固まってしまっていた。距離が近くなって、彼女の髪から香るにおいが強くなり、否が応でも僕の胸がドキドキしてしまう。彼女の二の腕をただ軽く支えている指先が、今はものすごく神経が鋭くなっているように思える。
「……いける。今年はホントにいけるぞ私……!」
「夜霧さん……ほんと、許して……」
これ以上は僕には刺激が強すぎると言うかなんと言うか、畏れ多くて死にそうですごめんなさい!
「ぁっ、すまない!」
彼女もそこで、とても恥ずかしそうに僕から離れた。……ちょっとだけ残念に思ったのは内緒だ。
……刺激が強すぎるが、僕にとって大吉なハプニングであった事は確かだった。今年の夜霧さんは本当に幸運の女神になるのかもしれない。何かある時には拝んでおこうか。
◇
そんな事もあり、一月下旬。
いよいよ公立高校入試が始まった。母さんと父さんに見送られ、僕は志願するS高校に行く。どうやら普通の教室で入試を受けさせるみたいで、僕は一年A組教室に案内された。
「やぁ、シン」
僕の座る席はどこだろうか、と探していると、不意に僕を呼ぶ声がした。ていうか、その声は!
「夜霧さん……!」
声を潜めて彼女に話しかける。よく確認すれば、彼女の座っている席の前が僕の席だった。まさか、パン屋以外の場所で会うなんて思わなかった!
「驚いた。S高校に受験するなら教えてくれればいいのに」
「ふふ、君を驚かせたくてね」
「本当にびっくりだよ……! どうやって僕の受験校を知ったの?」
「シンのお母様から聞いたのさ。Y高校を受験する気だったのに、いきなりS高校に切り替えたって」
「そこまで知ってるのか……。まぁ、いいけどさ」
夜霧さんに知られたからってどうって事は無い。むしろ、もしかしたら一緒に通えるかもしれない。そう思うと嬉しくなる。
「これで、やっと君と学校に行ける。私の夢が一つ叶いそうだ」
「気が早いなぁ。まだ受かった訳じゃないよ? 僕、落ちちゃうかも」
ウッキウキな声音の彼女に、僕もおどけて答える。すると彼女は、とても可笑しそうに微笑んできた。いい、笑顔です……。
「何を言う。君の成績は把握している。落ちる訳が無い。無論、私も」
「だろうね」
僕らと同じ受験生には大変申し訳無いが、既に合格枠は最低二つ確保されてしまっている。一つは僕。そしてもう一つは彼女でね。
「さて、それじゃあ」
「あぁ。一瞬で終わらせてやろう」
何故ならば――夜霧冬華は、僕が逆立ちしても勝てないほどの才能を持つ天才だからだ。
◇
そして、思っていたよりもあっさりと試験が終わった。
まぁまぁの手ごたえ。僕の内申点も悪くない筈だし、合格は間違いないはずだ。きっと。
「帰ろっか」
「あぁ」
軽く背伸びをしてから、僕と夜霧さんは席を立ち教室から出た。ふふ、楽しみだな。これから彼女と一緒の高校に通えるなんて。
夜霧さんの通っている、G中学校の制服はひどくもっさりした色合いで、里芋の煮物のような地味な印象を受けるものだ。それを着ていても全く色褪せない、清らかで凛とした彼女を見て思う。神様ありがとう。僕を彼女の幼馴染にしてくれて。僕は幸せ者です。
「あっ、真一君!」
校門を出ようかという時、ふと後ろから声がかかった。その愛らしい声は間違いなく!
「どーん!」
「おぉ!」
秋人君、と答えようとして振り向くと、その彼がいきなり僕の胸に飛び込んで来ていた! 思わず受け止める。受験が終わってはっちゃけてるんだね! 分かるとも!
「お疲れ様、秋人君。手ごたえは?」
「多分大丈夫! 真一君は……まぁ、余裕だよね」
「うん。なら良かった。これで高校でも一緒だね!」
やったー、わーい、と秋人君とフレンズめいた感じに手を繋いで回っていると、彼の後ろから隼人君と奏ちゃんも来た。三人は僕とは別の教室で受験していたみたいだね。
「隼人君、奏ちゃん、お疲れ様」
「あぁ。そっちもな」
「なんか超疲れた……ライブよりずっときついわね、受験って……」
出し切ったのか、どんより疲れた様子の二人に苦笑してしまう。でも、悪くない手ごたえみたいだ。あとは天命を待つのみ、って奴だね。
「……そいつは? 彼女か?」
そこで隼人君が夜霧さんを見つけた。説明しよう!
「僕の幼馴染だよ。夜霧冬華さん」
三人に紹介すると皆がぎょっと驚いた表情になった。分かる、僕にこんな綺麗な幼馴染がいるの、自分でも信じられないから。
「夜霧さん、こっちは中学校の友達。柊隼人君と、神室奏ちゃん」
「ちゃん……って……」
いきなり紹介されたからか、夜霧さんは戸惑いの表情を浮かべていた。でも、戸惑うのはまだ早いんだな、これが。
「で、僕にくっついてるのが水城秋人君。男の子だからね?」
「えっ?」
あ、今、素の「えっ?」が出た。瞬間、腕の中の秋人君の顔が凍り付いてしまう。
「やっぱ駄目なのかな……ボクもう男になれないのかな……」
「そ、そんな事無いって! 諦めたらそこで試合終了だよ!」
秋人君は意気消沈して小さくなってしまった。さ、流石だ夜霧さん。あの秋人君を即死させるなんて!
「ちょっと、シン?」
「うげぇ!」
そんな秋人君を蹴り飛ばし、奏ちゃんが物凄く不機嫌そうな声音で迫って来て、いきなり僕の胸倉掴んできた! な、何で!? ちょっと、気道が、苦し……!
「あんた、友達いないんじゃなかったの? あたしに嘘ついたの?」
「嘘じゃないってば! 本当に友達いなかったよ、学校には!」
「学校にはって何! じゃあ友達と遊んだ事無いってのは嘘なの!?」
「それもホント! 奏ちゃんが初めて! だから離して、苦しい……!」
「そ、そう……」
僕の懸命な訴えが功を奏し、彼女はすっと冷静になって僕の胸倉を離してくれた。よ、よかった。
「ごめんね、誤解させる言い方して」
「……いい。あたしも早とちりだったし」
奏ちゃんはそう、恥ずかしそうに髪を撫で付けながら言った。今日の彼女は受験だから、髪も黒染めして、ツインテも解いて、普段より大人しい姿をしている。でも、いきなり怒るから驚いたよ……。
「……奏、ちゃん……ちゃん呼び……」
いつの間にか、夜霧さんがしぼんだ花のように意気消沈した様子で俯いていた。え? 今度は何?
「……こいつ、才能ありそうだな」
そんな彼女を、隼人君がギロリと観察しながら呟いた。流石隼人君、お目が高い。だけど出会うなり他人をロックの物差しで測らなくても……。
「うん。彼女は天才なんだ。僕よりずっとセンスあると思う。けど、そういうのには全然興味無い人だから……」
「そうか。……じゃあな。ギター練習、サボんなよ」
「分かってるよ、またね」
隼人君はそう言って、夜霧さんから視線を外して去って行った。……やっぱり、バンドマン以外には興味無いんだね……。
「……ふっ、そう。ロックやらないんだ」
何かに完全勝利したような笑みを浮かべて、奏ちゃんは夜霧さんを一瞬見やる。
「…………何だ?」
「いえ、別に? シン、また今度ね」
「うん、奏ちゃんも今日はお疲れ様」
「えぇ。秋人、そろそろ起きなさいよ」
「……ボク、まだ負けないよ……」
奏ちゃんは軽く僕に微笑みかけ、朽ち果てかけている秋人君を引っ張り起こして引きずって去って行った。秋人君、大丈夫だよ。何なら僕が君のお嫁さんになるからね……。
「…………シン」
「ん?」
去りゆく三人の背中を見送っていると、夜霧さんが物悲しそうな声をかけてきた。な、何が起きたんだ、今の瞬間で。いつも凛としていて自信に満ちあふれている彼女がこんな、しおれかけの雑草を連想させるほど落ち込むなんて!
「仲、良いんだな……彼女と」
「え? まぁ……うん。そうだね。奏ちゃんだけじゃなくて、あの三人は僕にとって特別なんだ。だから、すごく大事に思ってる」
「ロック……そう彼女が言っていた。この前言ってた、軽音楽部の事か?」
「まぁ、そんなものかな。それを教えてもらってる。すごく楽しいよ。高校でも軽音楽部に入るつもり」
夜霧さんはいきなり現れた三人にまだ理解が追いつかないのか、戸惑っているような表情をしていた。初対面の人でも話が出来る、コミュ力お化けの彼女にしては、こんな態度は珍しい。
「……だけど、高校ではあの三人とは一緒にやらないかもしれない」
「え?」
正確にはやらないじゃなくて、出来ないの方が正しいんだけどね。
――だって、僕の野望はまだ半分しか叶ってないのだから。
◇
「えっ、ホントにいいの!」
「あぁ。……まぁ、やる事もねぇしな」
後日。
久しぶりにCLEARWAVEの面子が柊スタジオに集まった。受験も終わったし、思う存分ロックをやろうって話になったからだ。そこで、隼人君が物凄い事を言ってくれた。
「アニソン、そういうのもロックと無関係じゃねぇ。何か一緒に叩いてやるよ」
何と隼人君が「アニソンを演奏してやる」と言ってくれたのだ。僕のつま先から頭頂にかけて凄まじい興奮が駆け抜けていき、身体が震える。
「この前のライブも、真一君が入ってくれたから成功したようなところもあるしね。お礼って事で」
「……あんまり変なのは遠慮したいけど」
秋人君も奏ちゃんもそう言ってギターを取り出してくれる。おぉ、おぉ! お任せあれって感じだ! 大丈夫、僕が一番やりたいアニソンはそんなカオスなものじゃない。
「じゃあ、これをお願い」
スマホでユーチューブを開き、そのアニソンの動画を皆に見てもらう。
「これ知ってる! アニメの再放送見た事あるよ」
「俺もこれなら知ってる。いいぜ、なかなかそそるじゃねぇか」
「あたしも聞いた事ある。ギターこんなかっこよかったんだ……やりがいありそう」
そんな、皆の言葉に僕も嬉しくなり、さっそく演奏のための準備を始める。
コピー演奏は、基本的には音源と楽譜が必要だ。音源を何度も聞きながらリズムと音色……コードを掴み、楽譜に沿って音を鳴らす。コピーする曲がロックじゃない場合、それをロックバンドで演奏出来るように楽譜をアレンジする必要がある。これは少し大変だけど、今回はそれほど必要無い。そして何より、CLEARWAVEほどの実力があればそれは容易く行われる。もっと簡単な曲なら耳コピすら出来るかもしれない。
「……古い曲だからか、楽譜がネットにいっぱいあるな」
「それだけ、この曲を演奏したい人がいるって事だよ」
隼人君と良い感じの楽譜をネットで拾い、それに沿って、何より本家本元の音源をリスペクトしてそれを練習してみる。
「……弾ける。僕、これ弾ける……!」
「当然でしょ。誰が教えたと思ってんのよ」
奏ちゃんが呆れ混じりの微笑みを向けてくる。その通りだ。僕は本当にいい人たちに教えてもらった。アニソンを弾ける感動、これ、しゅごい気持ちいい……!
「ボーカルは真一君がしなよ。いいでしょ、奏ちゃん」
「……仕方ないわね。あたしも歌いかったけど」
「我慢しなよ。これは男の子の曲だもん」
秋人君もそう言ってくれたので、この曲に限り僕がギターボーカルを担当する事になった。練習すらも楽しい。大好きな音楽が出来上がって行く感覚、感動すら覚える。何より、友達とそれが出来る喜び、こんなの、病みつきにならない訳が無い!
そして数時間の練習を積み、いよいよ一サビまで本気で合わせて見る事にした。
「じゃあ、皆、よろしく。ブチかますよ!」
僕の声で、皆が息を飲む事が聞こえた。無言の返事、確かに受け取った!
シャンシャン、といつも通りに隼人君がハイハットを四度叩く。四度目が終わった時が演奏の始まりの合図。
奏ちゃんと秋人君がまず軽快にギターを響かせる。すぐに隼人君も続いてドラムを鳴らし始めた。僕もギターを曲に添える。さぁ、楽しいロックの時間だ!
――その曲はまず軽快なギターから始まる。メロディもリズムも簡単で軽快、しかしだからこそ熱く力強いボーカルが映える。さぁ、そろそろそのタイミングだ。息を肺に軽く吸う。
『ゴキゲンな蝶になって きらめく風に乗って 今すぐ キミに会いに行こう』
……時は一九九九年。僕がまだ生まれてすらいない時。とある一つのコンテンツが誕生した。
『何が WOW WOW~ この空に届くのだろう』
デジタルモンスター、略して【デジモン】。どこかで聞いた事あるフレーズだがそれもそのはず、これはポケモンをリスペクトした作品なのだから。
『だけど WOW WOW~ 明日の予定も分からない』
主人公の少年が、異世界の冒険やデジモンとの触れ合いを通じて立派に成長していく物語。それがデジモンだ。ピンチの時に熱い挿入歌と共にデジモンが進化するところとか激アツすぎて泣きそうになる。そんな作品。その一番最初のオープニングソングを務めたのがこの曲。その名も――!
『無限大な夢のあとの 何もない世の中じゃ そうさ愛しい 想いも負けそうになるけど』
【Butter-Fly】! 成長する思い、そして次の世界へ飛び立つ翼。それはきっと、今の僕たちが唄うに相応しい! 僕達のロックはこれからなんだから!
『Stayしがちなイメージだらけの 頼りない翼でも きっと飛べるさ』
おぉぉぉゥまぁぁぁいラァァァァヴ!
気持ちいいいいい! とりあえずはここまで! でも一サビまで完璧だね!
「……最高。隼人君愛してる」
「止めんぞ練習」
冗談でも言うな、とばかりの表情で一蹴されてしまった。お互いに笑みが零れる。彼も楽しそうでよかった。
「やっぱあたしが歌う! あたしの方が上手く歌えるから!」
「じゃあ次は二人で歌おうか。ツインボーカルってやつ!」
「はいはい真一君! ボクも歌いたい!」
「カラオケじゃねぇんだぞお前ら!」
隼人君がいて、奏ちゃんがいて、秋人君がいて。そして、ロックがある。
この光景が幸せなものでない筈が無い。今の僕は満たされている。やっぱりアニソンはいい。心の栄養だね。
……決めた。やっぱ我慢出来ない。
――――僕は、しばらくCLEARWAVEを抜ける。
書いた! 第一部完! ドーモ、作者です。
これにて中学三年生時代は終了。次から高校生編となります。ここまで長ったらしい説明の多い文章で申し訳ありません。しかしここからが本編。
拙作は高校一年生終了までを完結予定としています。
引用
曲名:Butter-Fly
作詞:千綿偉功
該当箇所
『ゴキゲンな蝶になって きらめく風に乗って 今すぐ キミに会いに行こう』
『何が WOW WOW~ この空に届くのだろう』
『だけど WOW WOW~ 明日の予定も分からない』
『無限大な夢のあとの 何もない世の中じゃ そうさ愛しい 想いも負けそうになるけど』
『Stayしがちなイメージだらけの 頼りない翼でも きっと飛べるさ』






