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03:フラグは折れるがすぐに立つ


「私の好みの男性ですか?」


ランドグリフィンさん自己紹介事件から数日経ったある日、珍しく夕方にお客さんが居らず、クレアと2人きりになったので思い切って好みの男性を聞いてみた。


「そう、この前常連さんとそんな話になってね。そういえばクレアの好みの男性ってどんな人なのかなって気になったのよね。」


本当は常連さんと話題になったのは好みのお茶の熱さについてだけど。

“好きなもの”について話したのは間違いないし、嘘はついてない、うん。


「へぇ!珍しいですね、サーラさんがそんな話しするの。」

「え?いや、まあ、多少はね?」

「サーラさん、あまりそういったこと言わないので、私てっきりサーラさんは恋愛とか興味ないんだと思ってました。」

「ふふ、私だって女だもの、少しくらい興味はあるわよ。」


すみません少しくらいなんて嘘です。興味ありまくりです。三度の飯より他人の恋愛見るのが好きです。


それにしても、今まで口出しせず見守るのに徹していたせいか周りから私はそう見られてたのか…。

ランドグリフィンさんがクレアの好みの男性と一致してるか確認するはずが、思わぬ所で新しい情報を得てしまったようだ。


「それで、クレアの好みの男性ってどんな人なの?」

「そうですねぇ、まず、体の大きい人がいいですね。」


おお、まずは第1関門突破だねランドグリフィンさん。彼は騎士だからがっしりしているし、背も結構高かったはずだ。よしよし、いい調子。


「それに、金髪に青い瞳とかも私と正反対の色味で良いなって思います。自分にないものへの憧れっていうか。」

「えっ!?」

「?ど、どうかしましたか?」

「い、いえ!何でもないの、続けて!」


金髪に青い瞳って!金髪に青い瞳って言ったよこの子!

体が大きくて金髪で瞳が青い人なんてこれはもうランドグリフィンさんってことじゃないの!?ねぇ!?もう私それしか考えられないよ!?

私はやや興奮気味にクレアに続きを促した。


「年齢は年上がいいですね。やっぱり頼りたいっていうか、甘えたいっていうか。」

「ええ、それがいいと思うわ。素晴らしい願望よ。」


満足のいく答えに私は力強く頷く。


「それに、お仕事がパン屋さんっていうのもステキです。」

「ええ、……え?」

「でも目つきは鋭くて、声もドスがきいてたりして、近所の子供達には怖がられてて、それを本人は実は気にしてたり…ふふっ、可愛いですよね。」

「…?」


んんっ?待て、一旦落ち着こう。

まずランドグリフィンさんの職業は何?もちろん騎士だ。そしてクレアが今言ったのは、パン屋。


「…えええええ!?」

「っ!さ、サーラさん!?」


思わず出た大声にクレアが驚いているが今はそれどころじゃない。

クレア、あなたがさっき言ってた人はランドグリフィンさんじゃなかったの!?ていうか人相悪くて子供達に怖がられてるパン屋営んでる人って、向かいの店のローレンツじゃん!!!

あのヤクザみたいな顔して可愛いオレンジのエプロンつけて美味しいパンを売ってるギャップ萌えの塊みたいなローレンツじゃん!!!


「あ、あなたローレンツが好きだったの!?」

「やっぱり分かりました?そうなんです。」


ふふふとクレアは余裕ありげに笑ってみせるがほんのり耳が赤い。なんでもないように振舞っているが実は照れているのはお見通しである。かわいい、可愛すぎる。


「実はさっきまでのは好みの男性のことじゃなくて、ただ好きな人の特徴を言ってただけなんです。あ、意味的には同じかもしれないんですけど。」

「そうだったの…。」


そっか…、クレアはローレンツが好きだったのね…。

さすがに好きな人がいる女の子とはカップルにすることはできないわ…、下手すると地雷五奉行に触れてしまうかもしれないし…ごめんなさいランドグリフィンさん。

既に私の心の中でランドグリフィンさんはクレアに振られた感じになっている。うわ、次彼に会った時顔に出そうだな、気をつけないと…。


それにしてもローレンツかー。

強面でゴツいローレンツと美少女クレア……アリだわ。いや全然アリだわ、むしろ大好物だわ。


身分差はないにしろ体格差、年齢差は100点満点だ。

強面パン屋×美少女ウェイトレス…どうしよう、クール騎士×美少女ウェイトレスよりも魅力的に感じてしまうっ!!

じ、自分がこんなにも浮気性だったなんて…!


「…さん!サーラさん!」

「はい!」


名前を呼ばれて正気を取り戻す。危ない、新たな観察対象の登場に興奮して完全に思考の海に沈んでいた。

真横を見るとクレアが心配そうにこちらを覗き込んでいた。


「大丈夫ですか?サーラさん、呼んでも全然返事してくれないし、もしかして具合とか悪いんじゃ…」

「ごめんなさい、ちょっとボーッとしちゃっただけ。心配してくれてありがとう。」

「なら良いですけど…」

「本当に大丈夫よ。あ、そうだ。昨日届いた新しいお酒、戸棚にしまっておいてくれる?場所は分かるわよね?」

「はい、分かります。」


まだ腑に落ちないのかクレアはチラチラとこちらを気にしながらも大人しく倉庫に向かっていった。

ごめんねクレア、でも貴女の恋路に興奮してたなんて口が裂けても言えないの。


ーーチリンチリン


そうだ、仕事仕事!私はドアのベルの音で気持ちを切り替えた。…が、


息を飲み、固まる。そして感じるデジャヴ。


「…い、いらっしゃいませ。」


吃ってしまったのは許してほしい。

だってそこにはつい先程私の心の中でクレアに振られた男性ーーつまりランドグリフィンさんが居たのだ。




…ばっちり騎士服を着て。

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