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01おまけ

シモンズくんとハンナちゃんの小話。

ハンナちゃん視点です。

私とシモンズくんは今日も薬草を採りに森に入っていた。


「ここら辺に入るのは久しぶりだね。」

「はい、半年ぶりでしょうか。」


私たちが住むナルアの町のすぐそばにある、ここカナデイアの森はとにかく広い。

慣れた人じゃないと迷ってしまうのに加えてモンスターが出ることもあり、ナルアの町の人以外はあまり近づかない森だ。まあそのおかげで薬草を採り尽くすこともなく、助かってはいるんだけどね。


「ここに来る途中に痺れ止めの薬草も見つけたし、今日は幸先いいな〜」

「ハンナさんが嬉しそうで何よりです。」


すぐ横を歩くシモンズくんが、切れ長の目を細めて、にっこりと笑いかけてくれる。頰に少しできるえくぼが可愛い。

シモンズくんって普段は精悍な顔立ちで冷たい印象を持たれがちなんだけど、笑うと纏う雰囲気がガラッと変わって、私はこの表情を見るといつもすごくふわふわした気持ちになる。


「ふふ、この先も沢山あるといいね、薬草!」

「はいーーハンナさん、下がって」


突然顔を引き締めたかと思うと、レヴォリくんは私を庇うようにして前へ出た。

これもいつもの光景なので私は別段驚かない。前を見ると毒々しい色をしたモンスターがいた。

どうやら今日は毒系のモンスターらしい。蜘蛛のような手足で敵を刺し、そこから毒を注入するのだ。


「そこの木の陰に隠れていてください。」

「分かった、気をつけてね!」


そう言うとそくささと私は言われた通り少し離れた木の陰に身を隠す。

一緒に戦うなんて命知らずな真似はしない。

私は戦闘なんて専門外のただのしがない薬師だし、何よりモンスター退治はシモンズくんの仕事だ。


「シモンズくん!隠れたよ!」


私が木の陰に隠れたのを確認するとシモンズくんは腰にあった剣を抜いてモンスターに向かっていく。

先程とは打って変わって彼の目は鈍い光を宿し、鋭い。


あっという間にモンスターは切り刻まれ彼が優勢だ。モンスターが伸ばした手足をシモンズくんは難なく避ける。


「がんばれー!シモンズくーん!」


私はいつもの様に木の陰から彼に声援をかける。実に間抜けで、まるで何かのスポーツの大会の応援だ。


(なんか気の利いたこと言えないかなぁ…)


こうしていつも守ってもらっているわけだけど、シモンズくんがとても強いとはいえ命をかけて戦っているのに、こんなへなちょこな声援しか出来ないのは居た堪れない。

黙って見るという方法もあるのだが、それも何だか違う気がするんだよなぁ。


そんな時、私は昨日町の酒場のお姉さんと交わした会話を思い出した。


『…シモンズくんが戦っている間居た堪れないって?』

『そうなの。シモンズくんガンバレとかは言ってるんだけど、どうにもしまらなくって。かと言って黙って見てるだけっていうのも何だか嫌で…』

『っ!フゥ〜』

『どうしたの?深呼吸なんかして。』

『いや、気にしないで。続けて。』

『変なの〜。でね、何か気の利いた応援の仕方とかない?』

『そうねぇ………それじゃあ、こんなのはどう?』


そうだったそうだった!私は昨日気の利いた応援の仕方教えてもらったんだった!

…でもただアレを変えただけでそんなに変わるのかな?

半信半疑ではあるが、私はとりあえずアドバイス通りの声援をかけた。


「がんばれー!レヴォリくーん!」

「っ!?」


彼の名前を呼んだ瞬間、シモンズくんはものすごい勢いでこちらを見た。

いや前見て前!!モンスターまだ倒してないよ!


「し、シモンズくん!モンスター!モンスター見て!」

「……」


シモンズくんはそう言われてやっとモンスターに向き直る。そうそう!その調子!

…かと思いきやさっきとは比べ物にならない速さでモンスターを切り刻むと、あっという間に倒してしまった。は、速すぎじゃない?


そして倒したモンスターには見向きもせず、ツカツカとこちらに歩いてきた。


「シモンズくん、おつかれさま!すごい速さだったね。」

「……」

「シモンズくん?」

「……あの」

「うん?」

「俺のこと、さっき下の名で…」

「あ、さっきのレヴォリくんって言ったやつ?」

「っ、そ、そうです…。」


心なしかシモンズくんの顔が赤い。

それに、何かを耐えるようにプルプル震えてるような…。


「大丈夫?顔赤いよ?」

「い、いえ…、しばらく経てば落ち着きますので。それでその、もう一度、呼んでいただけませんか。」

「レヴォリくん」

「っ、」


どんどん彼の顔が赤くなっていく。

ほ、ほんとに大丈夫?下の名前で呼ばれたかったのかな?


「下の名前で呼ぶのが気に入ったならこれからそう呼ぼうか?」

「いや、それは色々耐えられなく……いえ、今まで通りで大丈夫です。ありがとうございます。」

「そ、そうなの?」


呼べって言ったり、今まで通りでいいって言ったり、少し変なシモンズくんに、私は首をかしげるばかりであった。


後日酒場のお姉さんにこの顛末を報告すると、「ヘタレ属性もあったのね…」としみじみ言っていた。どういうこと?


サーラが深呼吸をしていたのは心を鎮めるためです。

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