コラム「都市同盟の身分制度」
古代末期では基本的に万人が平等な権利を有していたとされる。だが、古代末期が終わり、あらゆる社会秩序が昔に逆流していく中で、人間の地位に対する思考もまたその動きを免れ得なかった。
力の有無、さらには上下だけが問題となった世界においては、単純に力の強い者、あるいはその集団が力のない大勢を従わせる構図が各地で再び姿を現し、ここに文化・経済資本が組み合わさることで複雑な身分性が醸しだされていく。
都市同盟でもっとも大きな地位を持っていたのは成人男性の市民であり、民会に参加して政治を動かすだけの権利を持っていた。市民は基本的に数が少なく貴族層として認識されており、税金や労働から自由の身だった。とはいえ没落の危機がないわけではなく、そのため平民身分の支持を維持するために彼らを被保護者として迎え入れ経済的な支援を与えることがよくあった。
平民は多くが商工業や農業に従事し、政治に関わる権利はほとんど有していなかったが、戦争などで功績を挙げれば市民にのしあがることも。
キューシューだけでなく、世界規模で復活した社会制度が奴隷制である。奴隷は困窮して税を払えなくなった平民や戦争捕虜がなる道だった。時には植民市が先住民に対して奴隷狩りを行うこともあり、悪名高い商売ではあるが経済の基盤を構成。その身分は世襲であり、自由人との子であっても基本的には奴隷とされる。
奴隷は解放されれば平民と同じ権利を有する存在として昇進することもできた。解放奴隷は都市同盟の成立初期の頃は数は少なかったものの、次第に増えていき、政界の有力者の中にもその血を引く者も現れてくる。のみならず、むしろそのことを誇る人間さえ。
これら三つの階層からなる身分制度は必ず絶対的なものではなく、常にある程度の流動性を有した。都市同盟が次第に衰退していくころ、市民は解体され、平民内での格差が細分化されていくが、奴隷に関してはやはり社会の負の遺産としてこびりつき続ける。