戦車兵と女騎士
「クロエッどっちだ!?」
「こっちよ!」
クロエに案内されながら、秋山らは館内を突き進む。
そして彼らは遂に地下牢獄へと通じる階段にたどり着くと、クロエは先陣を切って階段を降って地下へと降った。
「何者だぁ!?」
「でやあぁぁーッ!!!」
叫びながらクロエは飛びかかると、剣で監守の兵に斬りかかり、さらに足蹴りでもうひとりの監守を蹴り倒す。
「小柳、柴田、松本。貴様たちはここで警戒して連中を食い止めろ!池山、ついて来い!」
「はッ!」
4名を地下通路入り口付近で待機させ、秋山は歩兵一名を連れて地下牢部屋へと潜入すると、見張りの監守を倒して牢屋へとたどり着いた。
「みんなーッ!」
「クロエ!クロエなのか!?」
「助けに来たわ!今出してあげる!」
クロエは監守から牢屋の鍵を取ろうと手を伸ばそうとするが、監守はまだ意識があったようで鍵を取ろうとしたクロエの手を掴みかかり、襲い掛かった。
「この亜人ごときが・・・ッ!!」
「っぐ!!」
不意をつかれ、クロエは監守に咽元へ短剣を突きつけられた。
「クロエ!!」
牢屋の中から仲間のエルフたちが叫んだ絶体絶命のその瞬間、ダンッと一発の銃声が轟き、監守の兵は動かなくなった。
「大丈夫か?」
そこには、銃口から白い煙が立ち上る十四年式拳銃を構えた秋山が立っている。
「アキヤマ・・・・助かったわ・・・私は平気よ。それよりみんなを!」
「わかってる。」
秋山はクロエから鍵を受け取ると、牢屋の鍵をそれで開けて中に囚われていたダークエルフ男女合わせて30名ほどを牢屋から解放した。
「クロエ!」
「リア!よかった!無事だったのね!」
クロエは牢屋から出てきた一人のダークエルフの娘と抱き合い、再会を喜び合った。
彼女の名はリア。クロエと同じくダークエルフ族の戦士であり、クロエの親友であった。
「クロエ、この人間たちは何者?」
「大丈夫よ、この人間たちは私の味方よ。」
クロエがリアにそう話していると、階段のほうから銃声が聞こえてくるのが分かった。このとき、小柳、柴田、松本の三人が小銃を手に槍と剣を持って攻めてくる敵兵と交戦状態になっていたのだ。
「始まったか、クロエ急ぐぞ!」
それからすぐに彼らは地下牢を脱出し、歩兵の援護を受けながら館の外を目指して廊下を突き進む。
「正面から出る!貴様らは彼ら(エルフ)を先導しろ!」
「了解!」
背後から剣を持って何人も向かってくる敵兵に向かい、秋山は百式機関短銃を発砲して突進を食い止める。
一方その頃、館の門前で軽機を構えて待機していた伍長は門から見方がエルフたちを連れて出てくるのを確認すると、隣にいる上等兵にも知らせる。
「出てきたぞ!準備しろ!」
伍長がそう言うと、上等兵は八九式重擲弾筒にピンを抜いた榴弾を挿入して地面に台座を接して角度を決めると、引き金の紐に指をかけて構えた。
正面の門からは次々と救出されたエルフたちが味方歩兵に誘導されながら外に出てくるが、まだ秋山が出てくる様子はなく、秋山は時間を稼ぐために敵兵の足止めをしていた。
「クソッタレが!おいクロエ!まだかッ!?」
「みんな出たわ!早く逃げましょう!」
全員が館の外に出たのを確認すると秋山は九七式手榴弾を取り出し、ピンを抜いてそれを向かってくる敵兵めがけて投げ飛ばす。
「投擲ーッ!」
ドゴン!!と炸裂音が轟き、辺りは硝煙と白い煙が立ち込めた。しかしそれでも尚、敵兵は加勢しようと追撃を止めず、秋山はさらにもう一発手榴弾を投げるとクロエとともに門の出口まで走った。
「走れぇーッ!!」
門の前の茂みに隠れて待機していた伍長と上等兵の二人は、門から出てきた二人の姿を確認する。
「川島、中尉殿たちが出てきたぞ!用意しろ!」
「はッ」
伍長は二人が逃げたのを確認すると、門の外に向かって追撃してくる敵兵に対し、軽機を発砲した。
ダダダダダっと銃口から火を吹くと同時に、放たれた曳光弾は夜の闇にキラキラと輝く。そしてその弾丸の雨は確実に敵兵の命を削り取っていく。
伍長の機関銃の発砲と同時に上等兵は八九式重擲弾筒を発射し、榴弾を浴びせて敵を混乱させた。
「敵だ!!敵の攻撃だ!!」
「闇魔道師の攻撃だ!!」
敵兵は機関銃の攻撃を魔道師の魔術道具による攻撃と思い込み、足に機銃弾を受けた者はあまりの激痛にそのばに倒れて泣き叫んでいた。
「なッなんだこれはぁぁッ!?足がぁ!!俺の足がぁ・・・!!」
さらに伍長は館のほうに向けても軽機を撃ち込み、上等兵は続けて2~3発、榴弾を同じ方向に向けて撃ち飛ばす。
「よし!川島、もういいぞ!先に行け!」
伍長はそう言うと、川島上等兵は伍長が軽機を撃って敵を食い止めているうちにその場から離脱し、伍長もある程度撃った後に合流地点へと向かい、小隊は館の森を離脱した。
そして翌朝、夜が開けるとルガッツ城の帝国軍兵士たちは被害状況を目の当たりにして驚愕する。
「閣下!捕虜が数名脱走しました!」
「クソッ!!異界人どもめ!!」
帝国軍将校は屈辱のあまりテーブルの上をダンッと叩いた。
「閣下・・・いかがなさいますか?」
「奴らを追え!!一人も逃がすなッ!!」
将校の指示により、ルガッツ城からは騎馬に跨った兵士が次々と出て行き、追撃に向かう。
馬を繋いだテント付きの荷車の荷台にクロスボーを持った弓兵が乗り込むと、騎兵の後に続いて彼らも追跡に向かうのである。
一方その頃、ルガッツ城から捕虜となっていたエルフたちを連れ出してきた秋山小隊であるが、集落に戻るために夜に通った森の中の獣道を進んでいる最中であった。まだ集落まではだいぶ距離があったものの、全員夜通しずっと歩きっぱなしであったので、秋山も流石にここまで来れば追っ手に見つかる心配もないと感じ、その場で朝食も兼ねて休憩を取ることにした。
互いに落ち着いたところで、助け出されたダークエルフたちの一人の長老と思しき杖を持ったエルフの老人が、秋山たちにお礼を述べる。
「助かりました・・・・ところであなた方は一体・・・・?」
彼らがそう尋ねると、クロエが答えた。
「この人たちは向こう側の世界から来た異国の兵士よ」
「なんと・・・・!」
その話を聞き、彼らは驚いた様子だった。
更に彼らは日本兵の姿を目の当たりにして彼らが亜人や魔道師などではないただの人間だということが分かり、衝撃を受けた。
初めは警戒して距離を置いていたエルフたちだが、時間が経つにつれ、秋山らとも徐々に打ち解け、互いにいろいろと故郷のことや食べ物のことなどを話し合うようになった。
「ダイニッポン帝国?初めて聞く名前の国だな・・・・。」
「やはりそなたたちが異界から来た者たちであったか・・・・・数日前から気配は感じておったわ。」
白い髭を蓄えたエルフの長はそう答える。
秋山も一目でこの老人がエルフたちの中心的存在であるということを認識し、秋山は長老に問いかけた。
「長老さん、話を聞こうか。」
「うむ。そなたたちには恩義がある。何でも申されるがよい。」
「他にも仲間がいたのか?」
「我らは元々流浪の民、この地をあちこちさ迷って暮らしていた。しかし邪な人間たちはある日、我らから大切な宝を奪い去った・・・。」
「宝?」
長老のその言葉に、秋山は訊ねた。
「我らエルフ族に代々伝わる聖なる石じゃ。その昔我らの祖先が神から授かったと伝えられておる。言い伝えでは、その石を扱う者には幸福を齎すといわれておる。」
「幸福?」
「そうじゃ。しかし、心の邪な者がその石を扱うとその者に不幸が訪れるとも伝わっておる。」
「なるほど・・・・。」
「奴らは恐ろしい。我らエルフの亜人種族だけではない、村の人々を襲い、女子供を攫って奴隷にしておるのじゃ。」
「奴隷だと?」
その言葉に秋山は驚くと、長老の隣にいたエルフの男は秋山に話した。
「我らだけではない、多くの者があの館に捕らえられているんだ・・・。」
「異界の戦士よ、どうかお願いだ。我らの宝を、そしてこの地を救ってはくれまいか?」
長老は秋山にそう訊ねた。しかし秋山は難しい顔をする。
「話は分かった。しかし我々だけの判断で行動するのは難しいですな・・・・・。」
秋山がそう答えると、長老の隣に立つエルフの男は問いただす。
「それはどういうことですか!?何故に!!」
「ザーズ、落ち着け。彼らにも都合があるのだ。我らのようにはいかないのだ。」
仲間のエルフが興奮する彼をそう言って嗜めた。
その直後、リリィーが何か気配を感じたのか、秋山の側に飛んでくると、秋山にそのことを知らせる。
「アキヤマ!アキヤマ!」
「どうした?」
「気配がする!多分追っ手だと思う。すぐにここを移動したほうがいいわ!」
「追っ手だと?」
話を聞き、秋山は伍長と上等兵に河原まで出て様子を見てくるように指示を出した。
「伍長、上等兵を連れて河原まで様子を見て来い。」
「了解。」
伍長と上等兵の二人は小銃を持って河原へと向かった。そして秋山は各自にすぐに出発できるよう仕度を済ませることを伝える。
その頃、川を挟んで対岸に位置する森のほうから追っ手の敵兵約39名がゾロゾロと列を成して足跡を追って迫りつつあった。
「川島、見えるか?」
「まだ確認できません・・・・。」
河原の側の茂みに身を隠し、伍長は木陰に隠れて河原のほうに向けて小銃を構え、その傍らで茂みに身を伏せながら上等兵は双眼鏡を覗いて対岸の様子を窺う。
「伍長殿、あの妖精とやらが言っていたことを信じるのですか?」
「俺は中尉殿の言っていることを信じてる。お前はどうなんだ?」
「自分も同じです。ただ現地の連中を信用して大丈夫なのかと・・・・」
「それは俺も同じだ。だがこの地に一番詳しいのは彼らだ。」
その直後上等兵は双眼鏡越しに遂に敵兵の姿を確認する。
「出ました!目視確認!」
「お出でなすったか・・・・。」
河原の対岸の森の中から、馬に跨った甲冑姿の騎士と、槍を持った兵士が姿を現す。
敵兵集団の姿を確認した伍長と上等兵の二人はすぐに戻り、秋山たちに知らせた。
「中尉殿ーッ!」
「伍長、どうだ?」
「来ました!奴らです!騎兵が十名、歩兵数十人ほどが川を渡ってこちらのほうに!」
「やはり来たか・・・・すぐに移動するぞ!準備しろ!」
彼らは直ちに移動を開始し、森を抜けると整備されたような一段高い土を盛ったような上に作られた道路へと出た。
「この道の先がエルマン。本当にそこに仲間がいるの?」
「居るもなにも、我々はそこから来たんだ。駐留地に行けばここよりはマシだ。」
その時、リリィーがまた再び何かが近づいてくるのを感じ、秋山に伝える。
「アキヤマ!大変よ!こっちの森の方からも何かが来るわ!」
「何?数はどのくらいか分かるか?」
「わからない・・・・荷車みたいなのが複数近づいてくる!」
「荷車だと?」
「中尉殿!どうしますか!?」
「総員戦闘準備!非戦闘員は後ろに隠れていろ!」
秋山はそう指示を下すと、伍長は二脚を広げた九六式軽機関銃をその方向に向けて構え、他の歩兵は小銃を構えた。そして戦闘経験のあるクロエや他のエルフ族の戦士は弓を構えて援護体勢を取った。
「来るわ!もうすぐ出てくる!」
リリィーは秋山の隣でそう答えた。そしてその次の瞬間、向かい側の森の中からそれは姿を現した。
「小隊銃構え!」
秋山がそう指示を下し、将兵たちは小銃を構え、引き金に指をかける。
しかし、それは敵ではなかった。
森の中から姿をあらわしたそれは、車体に草木を擬装網であしらった友軍の八九式中戦車と随伴の九四式軽装甲車TKであった。八九式の砲塔上のキューポラからは車長が身を乗り出しており、車長は一瞬秋山たちを敵兵と見間違えて車載機銃の銃口を秋山たちのほうに向け、装甲車も機銃砲塔を向けて一触即発の事態になった。
「待てッ撃つな!俺たちは味方だ!」
「銃下ろせ!友軍だ!」
「!?」
すぐに車長は気づき、機銃の引き金から手を離す。
こうして秋山たちは幾日かぶりに友軍との再会を果たした。味方だとわかり一触即発の事態は避けられた。
八九式中戦車の車長は戦車から降り、秋山と握手を交わした。
「危なかったな、危うく射殺するところだったぞ!貴様はどこの部隊だ?」
「自分は歩兵第一連隊、第二中隊第一小隊の秋山中尉であります。」
「俺は戦車第二師団第一連隊第一中隊、車長の緒方義郎大尉だ。」
互いに味方であることが分かり、秋山は緒方大尉に事情を説明し、敵が迫っていることを伝える。
「それで追っ手の敵の数はどのくらいだ?」
「詳しくはわかりません、恐らく騎兵十名、歩兵30名ほどかと思われます。」
秋山が話している側で、エルフたちは物珍しそうな様子で戦車の周りに集まって戦車を見ていた。
「これは何だ?帝国軍には木甲車という荷車を改造した馬車があると聞いたが、これは鉄で出来ているぞ。」
「奇妙な模様をしているわ・・・・馬が居ないようだけど一体どうやって動かしているのかしら?」
クロエも興味津々に八九式中戦車の車体を手で触って見回す。車体の側面には日の丸と車体番号が記されており、それを不思議そうに他のエルフたちは見ていた。
「そんなに戦車が珍しいのか?」
その様子を見ていた緒方大尉がクロエにそう話しかける。
「センシャ?これはセンシャという乗り物なの?」
「あぁ、コイツは八九式中戦車だ。後ろのもう一台は九四式軽装甲車だ。」
「は、ハチキュウ?キュウヨウ・・・?ヘンな名前ね・・・・。」
緒方はそう説明するが、言葉が難しすぎてクロエは舌をかみそうになった。
「ところで貴様たちは我々の言葉がわかるようだが、何処で習ったんだ?」
「言葉?」
「この世界の連中は日本語が通じないのだ。今話した限りだと貴様たちは日本語を理解できているように思うが・・・・。」
緒方の疑問に答えたのはリリィーだった。彼女が目の前に現れると、緒方は驚いた様子で彼女を見た。
「私が魔法で言語を彼らに通じるように変換しているのよ。」
「!?なんと!!これまた奇怪な・・・・・昨日は鬼に出会ったが今日は小人に出会うとは・・・・まったく奇妙奇天烈な異世界じゃのぉ・・・・。」
「緒方大尉、紹介する。こちらはリリィー。この地に暮らしている妖精という種族の精霊だそうだ。」
「精霊?神か仏か何かか?」
精霊という聞きなれない言葉に緒方大尉は首をかしげる。
そんな時、リリィーが再びまた敵の気配を感じ取り、秋山たちに知らせた。
「来るわ!アキヤマ!今度は間違いなく追っ手よ!」
「よし、すぐに迎え撃つ準備だ。伍長、軽機の弾薬はまだあるか?」
「弾倉はあと四本、いざとなったら小銃で突貫するまでです。」
自信満々に伍長は秋山にそう答え、秋山は頷いた。
歩兵も近くの茂みに身を隠し、そこから小銃を構えて総員戦闘態勢を整えた。
戦車兵の緒方も戦車に戻ると、戦車を敵が来るであろう方角に斜めに止め、砲塔を向ける。緒方大尉はキューポラの上から九一式車載軽機関銃を構え、その下では砲撃手が戦車砲をいつでも撃てるように待機し、八九式中戦車の前に出ていた九四式軽装甲車も機銃砲塔を同じ方向に向け、戦車の背後には小銃を構えた歩兵と、弓を構えたダークエルフの戦士たちが並んでいつでも撃てる態勢でいた。
「クロエ、おまえたちも戦うのか?」
「もちろんよ。私たちは戦士よ!戦士が戦いを目の前にして背を向けるなんて私たちにはありえないことよ!」
「我らとてあなた方に借りを作ってはいられません。それに覚悟は既に出来ております故。」
クロエの隣に立つ同じ戦士であるエルフの青年は秋山にそう言う。秋山は彼らに守備を任せることにし、自分は緒方大尉から借りた四四式騎兵銃に弾を込めると、軽装甲車を盾にしてそれを構えた。
「来たぞ!」
キューポラの上から双眼鏡で覗きながら緒方大尉が秋山たちに知らせる。
再び彼らに緊張が走った。緒方大尉は双眼鏡越しに道の向こうからやって来る二人の人影を確認し、機銃を向け、秋山たちも小銃の銃口をその方向へと向けた。
「おかしい・・・・二人だけだと?騎兵や他の歩兵は何処に隠れてる?」
秋山は様子がおかしいことに気がつき、自分も双眼鏡でその姿を確認すると、向かい側から走ってくるその二人の姿に驚くのである。
「女?クロエたちと同じヤツか?」
秋山がそういうのは、突如目の前に現れたそれは、マントを羽織った二人の女騎士の姿だった。女騎士は腰に剣を下げており、コチラへと向かってきていた。
「攻撃用意!銃構え!」
号令とともに緊張が走った。しかしその時、秋山は待てと叫んだ。
「待てッまだ撃つな!」
「どうした!?なんなんだ中尉?」
「何か様子が違うようだ・・・・俺が話す。」
「あッ!おい!!」
緒方大尉の制止を振り、秋山は九四式軽装甲車の陰から前に出る。
一方で二人の女騎士は戦車の前に出てきた秋山の姿に気がつき、二人は叫びながら手を振るった。
「おーい!おーい!」
二人の女騎士はまるで助けを求めるが如く、秋山らのほうに近づこうとした。しかし、秋山は戦車の前に立ちはだかると、持っていた四四式騎兵銃を近づく二人に向けて構え、二人にその場に止まるように叫んだ。
「止まれーッ!!止まらんと撃つぞ!!」
「!?」
突然のことに二人の女騎士はその場に立ち止まる。
緊張が走る。周囲の草むらの陰からは歩兵が小銃の狙いを定め、戦車のキューポラの上からは緒方が機銃を女騎士に向けている。
「何者だ!?何処から来た?」
警戒した様子で秋山はそう訊く。
女騎士は一目で彼らが自分たちに向けている武器がクロスボーか、あるいは魔術道具の類の武器だと認識し、二人は手を上げて自らの名前を叫んだ。
「待ッて!撃たないで!!我が名はミーナ・クロウ!パルミリア王国女王、セルシア陛下に仕える近衛騎士団の騎士!」
「わっわっわわッ私はシルヴィア・ペリウス!同じく王国近衛騎士団護衛騎士ですッ!」
武器を向けられ、二人の女騎士は慌てて両手を上げる。
これが日本軍と二人の女騎士、ミーナとシルヴィアとの初めての邂逅であった。
「その騎士とやらが我々に何の用だ?」
銃を向けながら秋山はそう訊ねると、ミーナは答えた。
「私たちは決して怪しいものではありません!!どうかパルミリアを!この国を救ってください!!」