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夜襲





「本当に?本当に彼らがここに居たの?」


驚いた様子でミーナは酒場のバーテンに詰め寄る。



「あぁ、突然のことだったから俺も驚いたわ・・・・連中、一瞬で酒場にいたチンピラどもを全員殺しちまったんだ・・・・奇妙な魔術道具を使ってな・・・。」

「魔術道具?」

「それはどういうものなの?」

「さぁな、俺は奥のほうから隠れて様子を見ていただけだからよく見えなかったけど、先に槍が付いた黒っぽいモンでな。そいつがな!ババババンってまるで雷みたいな音を立てて火を吹いたんだ!あれはたまげたよ・・・」

「それでその連中は何処に行ったの?」

「え?さぁな・・・・あの後すぐにクロエとかいうダークエルフの娘と一緒に行っちまって、多分もうこの街にはいねぇな。たしか西のほうに向かうとか言ってたけど。」

「昨日出て行ったってことはまだそう遠くへは行っていないはず・・・・シルヴィア!急ぎましょう!」

「はい!ミーナさん!」


祖国パルミリアの為、二人の侍女と騎士は彼らを追ってシドの街を立つ。

一方その頃、彼女たちより先にシドの街を立った我らが秋山小隊はクロエに案内され西の森を進んでいた。


それはというのは、クロエは秋山らに自分たちの食糧を提供する代わりに囚われている仲間を助け出して欲しいと申し出たのだ。



「アンタたちが引き受けてくれてよかったよ。私一人じゃアイツらに太刀打ちできなかったからさ。」

「中尉殿、本当によろしかったのですか?」

「何れにしろ我々には食糧が必要だ。持ってきた分は全部食ってしまったからな。それに剣と盾だけの連中相手なら俺たちだけで十分制圧できる。」

「そういうことではなくて、信用できるんですか?」

「これは俺の感だが、彼女は嘘を言っているようには思えん。だから俺は信じる。もし仮に罠だとしても俺たちには銃がある。最悪、人質にとって憲兵に引き渡すだけだ。」


秋山は西村伍長にそう話し、また煙草を一本取り出すと歩きながらそれを吹かした。



「アキヤマ、それはなに?」


クロエは秋山が吸っていた煙草を差してそう尋ねる。



「何って、これは煙草だ。貴様らの国にはないのか?」

「タバコ?そんなものいままで見たこともないわ・・・・」

「一本吸ってみるか?」


秋山はそう言うと、クロエに煙草を一本差し出す。

煙草を受け取り、クロエは見よう見まねで口にくわえると、秋山は愛用のライターを取り出してクロエの煙草にも火を付けてやった。



「それで吸ってみろ。」

「・・・・ッ!?ゲッホゲホッ!!」


初めて煙草を吸ったクロエは思わず(むせ)てしまった。



「なッなにこれ!?煙たい!!」

「まぁ初めはそんなもんだ。時期に慣れてクセになってくるぞ。」

「アンタよくこんなもの吸ってられるわね・・・・・異界人って不思議だわ。オマケに妖精まで連れているし・・・。」


クロエはリリィーを見てそう答える。



「私はこの人たちに危ないところを助けてもらったからお礼に付き合ってあげてるの。村に戻りたいけど帝国軍に焼かれちゃったから行くとこもないし。」

「ふーん、じゃあアンタ野良妖精ってワケ?」

「野良って言わないで!私はれっきとしたアレフの森の民よ!!」


クロエに茶化され、リリィーは顔を膨らませて怒った。


そして一行はクロエに連れられて彼女の塒である西の森、ダークエルフの集落跡に到着する。

村は廃屋のような建物が点在し、人が居る気配はまるでない。



「他の連中はいないのか?」


秋山がそう尋ねると、少し間をおいてからクロエは事を語った。



「みんな、帝国軍の奴らに捕まって連れて行かれたの・・・・。だから今この村には私たち以外誰も居ないわ。」


それから彼らは案内され、集落の外れにある洞窟へとやってくる。



「ここよ、食糧はここに貯えてある分が全部よ。」


クロエは洞窟の中に秋山らを通し、備蓄してある肉や魚などの食糧を確認した。



「この肉はなんの肉なんだ?」


秋山は洞窟内に干されている肉のうち、一つを指差してクロエに尋ねる。



「それはワイバーンの背中の肉よ。丸焼きにすると美味しいわよ。」

「ワイバーン?そりゃあ何だ?」

「もしかしてそっちの世界には居ないの?」

「あぁ、聞いたこともない肉だ。」

「ワイバーンっていうのは翼竜の子供よ。この近くに巣穴があるの。たまにしか獲れない貴重なものだから普段は非常用の食糧として保管してあるんだけど、この際アンタたちにあげても構わないわ。」


それから秋山らは一晩その村に留まり、作戦を立てて翌朝に出発することになった。

小隊らは背嚢を枕に薪を囲んで眠りに付き、上等兵は木に寄りかかって小銃を抱えたまま眠っている。その木の上ではリリィーがおなかを膨らせてぐっすりと眠っていた。



「なんだ、アンタ寝ないのか?」


一人、薪の前に腰掛けて煙草を吹かしている秋山に気がつき、夜の見回りから戻ってきたクロエがそう声をかける。



「あぁ、今はまだいい。」

「そう・・・・ところでさ、あんたの国ってどんな国なの?」


ふと、クロエはそんなことを尋ねる。



「俺たちの國か?どうってことはない普通の國だ。まぁ国土はこっちよりは大きいがな。」

「オスロニアよりも大きいのか?」

「それよりは小さいな。ま、中ぐらいってところか。」

「ふーん・・・・。」

「お前たちの國はどんなところだ?」

「綺麗なところよ、でも帝国軍の連中が攻めてくるまでは・・・・」

「お前も兵士なのか?」

「どうして?」

「腰の剣、街にいたほかの連中はそんなもの提げてなかったからな。」

「私は兵士じゃないわ。私はダークエルフ族の勇敢な戦士よ。」

「戦士・・・なるほど、民兵みたいなものか。」

「そうね、一般ではそう呼ばれているわ。でもここでは戦士なの。ねぇ、あなたも剣を持ってるじゃない?」


クロエは秋山が持っていた九八式軍刀を指してそう聞く。



「剣?あぁ、これは剣じゃない。刀だ。」

「カタナ?それはなんだ?剣とは違うのか?」

「見てみるか?」


秋山はそう言うと、クロエの前に軍刀を差し出す。

刀を受け取ったクロエは、柄や鍔などの細かな装飾に少し見とれた後に鞘から刀を抜き取り、その刀身を眺めて一目で言葉を失う。



「なんて綺麗な剣なの・・・・これほどの武器は今まで見たことがないわ!これは武器というより芸術品よ!」


刀身に映りこむ自分の顔を覗きならが、クロエは思わずそう感想を述べた。



「我々の國では(いにしえ)の時代からずっと使い続けられている武器だ。まぁ今の時代あまり使う機会は少ないがな。」

「刃に模様が付いてるわ!一体どうしたらこんなものを作り出すことが出来るの!?」

「俺は鍛冶屋じゃないからその辺はわからんが、よく斬れるぞ。試しにその辺の枝でも斬ってみるか?」

「いえ・・・・・遠慮しておくわ!このような美しい剣で斬るなんて、なんか恐れ多くて・・・・。」

「ははッそうか。」


クロエは刀を鞘に戻し、軍刀を秋山に返した。

それからクロエは秋山にもう一つの武器についても訊ねた。



「ねぇ、その杖は魔術道具か何かなの?」

「杖?あぁ、小銃のことか。」


クロエが次に指摘したのは、三八式歩兵銃である。

秋山は側にあった一挺を掴むと、今度はそれをクロエに見せた。



「コイツは銃だ。貴様たちの世界にはないのか?」

「ジュウ?これも初めて見る武器だ。どういう仕組みの魔術道具なの?」

「魔術道具?コイツは魔術じゃない、ただの道具。武器だ。」

「武器!?じゃあ昼間に酒場でチンピラたちを蹴散らしたのも同じものなのか!?」

「あぁ、あれは機関銃といって同じ武器さ。」


それを聞きクロエは驚く。



「一体どういう仕組みなの?弓銃(クロスボー)とは違うの?」

「コイツは三八式歩兵銃といってな、使い方は簡単だ。ボルトを起してから引いて、ここに弾を込める。」

「タマ?」

「コイツが弾だ。」


そう言うと秋山は弾薬盒から五発の6.5mm実包を取り出してそれを見せると、機関部に弾を込めて見せた。



「コイツを機関部に装填するんだ。あとはボルトを閉じればこれで発射可能だ。」

「武器ということは私にも扱えるのか?」

「あぁ、明日教えてやる。それより早く寝たほうがいいぞ、明日は早いからな。」


秋山はクロエにそう言い、先に横になった。それからクロエも剣を側に置いて横になり、眠りに付いた。




そして翌朝。早朝6時。


総員起床し、秋山は近くの井戸で水を汲むと、その水で顔を洗い、眠気を覚ます。

実家の店の名前が印刷された手ぬぐいで顔を拭いていると、そこへ伍長が顔を洗いに訪れる。



「伍長、飯を食ったらすぐに出発だ。各自食糧と荷物を纏めておくように伝えてくれ。」

「わかりました。」


秋山は伍長にそう伝えると桶を伍長に渡し、食糧を受け取りに向かった。

その後、朝食を済ませると一行は出発の準備を整えた。クロエは剣の他に、愛用の弓と矢を持ち出して戦いの準備を済ませる。



「準備は出来たか?」

「ええ、じゃあ行きましょう。案内するわ。」


エルフの集落を後にし、我らが秋山小隊はクロエに案内されながら、彼女の仲間が捕らえられているというルガッツ城跡へと向かった。


ルガッツ城とはかつてパルミリア西部の領主であるルガッツ伯爵が建てた館で、伯爵が亡くなったあと管理する者が居なくなった館は廃墟と化し、その後は盗賊や山賊の塒になっていたが攻め込んできたオスロニア軍に占拠され、現在ではオスロニア軍の捕虜収容施設として使用されている。




途中、休憩と昼食を取りながら一行が館がある森に到着したのは夕方だった。館の離れた位置から状況を確認して周囲に見張りの敵兵が居ないかを確認すると、クロエに仲間が収監されている場所を教えてもらい、作戦決行は夜と決まった。




そして夜9時。電気のない異世界は当然ながら夜の闇に閉ざされ、館のほうからは松明の明かりが星のように輝いて見えていた。



「伍長、百式をくれ。」


秋山は伍長から百式機関短銃を受け取ると、二式銃剣を装着する。

各自、擬装網にその辺の草木の枝を挟んだ九〇式鉄兜を被り、小銃に弾を込めると総員夜襲の準備を整えた。



まずは館の外側にいる見張りを倒すべく、クロエは秋山の指示で弓を構え、館の外を巡回する敵兵に向かってその矢を放つ。



ビュッ


「うぐッ」


矢は見事見張りの敵兵の首に刺さり、敵兵はその場に崩れ去る。

さらに続けてクロエは矢を取り出すと、残りの標的の見張りの兵士に向かって矢を放ち、再び外れることなく命中させて見せる。


その様子を側から双眼鏡で見ていた秋山は彼女の弓の腕前に感銘を受けた。



「大したもんだ。夜目でも目視のみでここまでの腕前とは・・・・。」

「エルフ族は目がいいから夜でも明りなしでもよく見えるわ。」


外側の障害がなくなったのを確認し、秋山たちは愈々行動を開始した。

暗闇に紛れ、わずかな月明かりを頼りに館に近づくと、小隊は二手に別れ、伍長と上等兵の二人は館の門の前の茂みに身を隠すと、そこに陣取り九六式軽機関銃を構え、そのすぐ隣で上等兵は八九式重擲弾筒を携えて双眼鏡越しにじっと敵が来るのを待って待機した。



一方でクロエ、そして4名の二等兵を連れた秋山は裏口から気づかれることなく館内に侵入すると、近くにいた敵兵に忍び寄り、軍刀を鞘から抜くと口を押さえて咽を斬り付けて無力化を図った。



「よし、進むぞ。この先か・・・。」


しかし、順調に進んでいると思われたが表を巡回していた敵兵がまだ一人残っており、仲間が倒れているのを見つけると大声で仲間に知らせる。



「おーい!敵だ!!敵が入り込んだーッ!!」


叫ぶ敵兵に味方歩兵の小銃の弾が眉間から頭を貫き、叫んでいた敵兵はその場に崩れる。

突如表から聞こえた銃声に気がつき、館内にいた敵兵たちは騒ぎ出す。



「今の音はなんだ!?」

「見て来い!」


館の最高指揮官は兵士にそう命じ、兵士たちは槍を持つと部屋を出て確認に向かう。

だが、これも最初から計画の内に入っていた秋山たちは動揺することなく冷静に行動を続けた。



「居たぞー!侵入者だーッ!!」


秋山たちに気がつき、敵の兵士たちが槍と剣を手に向かってくる。

クロエは剣を抜き、高く飛び上がると壁を蹴って敵兵の頭上を舞い、二人同時に首を斬り付けて無力化させた。



「早えぇ。」


思わず秋山はそう呟く。

その間もクロエは素早い身のこなしで敵兵を次々と襲い、自らがただの亜人ではない、エルフ族の勇敢な戦士であることを知らしめてみせたのだ。



「居たぞーッ!捕らえろーッ!!」


背後からも敵兵が迫る。しかし秋山は臆することなくクロエの前に出ると、機関短銃のボルトを引いて弾を装填すると、槍を持って迫り来る敵兵に向けて射撃体勢を整えた。



「うおおおおーッ!!!」


敵兵が近距離まで迫ってきたその瞬間、遂に秋山の機関短銃が火を吹いた。

あっという間の出来事にクロエはまたしても驚いた様子だった。毎分、450発という速度で発射される8mmの弾丸は敵兵の鎧を貫き、機関短銃の掃射を受けた敵兵はバタバタと目前で倒れていく。


そして、30連マガジンを撃ちつくす頃にはその場には5~6名ほどの敵兵が血を流して倒れていおり、床には幾つもの拳銃弾の空薬莢が散らばっていた。



「よし、進むぞ。」


秋山はそう言うと空になったバナナマガジンを外してその場に放り、予備のマガジンをリロードする。



「クロエ!案内しろ!」





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