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―第二章― 画家が心に描く景色 1



彼女は売れない画家

心に見た風景に触れるために筆を握り

想いを色に託して散りばめる


崩れ落ちる波 あの空に波打つ雲

雲から降り注ぐ滝 涙に暮れる雨

昇る瞬間の太陽 月夜の静けさに舞う桜

あの人の笑顔 手に触れた温もり


描くだけなら

写真を写し取るのと変わらない


ただ見た物を描きたいわけではない

しかし見えないものを絵に加えたいわけでもない


それは心に感じた躍動

美しいと思わず溜息が漏れた瞬間

そしてささやかな幸福に満たされた思い出

放たれた想い


しかし仕上がった作品には何の感動もなく

あの時の心が震えた瞬間はどこにもなかった…


―思うように…描けない…


苛立ち キャンバスを破り 筆を投げ捨てたこともあった


それでも彼女は新しいキャンバスを立てかけ

新調した筆でもう一度描くのだった


何度でも 届かなくても

救いを求め 希う指先のように


心に見た眩しさを この絵に描きたくて

心に触れた温かさを この眼に見てみたくて


そしてその景色を見るのは自分だけではないと

同じ世界に生きているのだと

―信じたくて


それは彼女が見た夢だったのかもしれない


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