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この作品を買った彼女はやはり―大事に胸に守り
育ててきた想いの花のように―愛しんで両腕に抱く
彼女はぽつりと口にする
もう友達もいない
そして家族もいない
そんな自分が
一体誰の心に残るのだろうか―と…
彼は拳を握りしめて頷いた
きっと残る―と…
それはただの慰めではなく
強い決意だった
彼女は寂しそうに微笑んで
深々と頭を下げ―背中を向けた
もう二度と会うことはないだろう
彼は彼女の後ろ姿を目に焼き付けた
最期に残しておくために
―忘れないでいて欲しい
それは数々の作品たちの訴えてきた想いが
垣間見えた風景に重なった瞬間だった