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人の足音は彼方の雲の流れより遅く
それでいてその数は雨のようだった
その道の片隅に彼は座っていた
敷かれた布に並べられた作品は
木のように佇み 石のような自然さで
静かに風を受けていた
しかし手に取る人はおろか
立ち止まる人さえ疎らだった
彼らにはその作品群など見えてはいない
時計と追い立てる時間しか見えていない
静かに佇む彼とその作品は
まるで時に取り残されたかのようであり
濁流のような川の中で立つ一本の木のようでもあった
彼らにとってそれらの作品はそれ以前の
ただの木片でしかない
彼らがその意味を知ることはないのだから
それは仕方がないのかもしれない