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第一話 -5

夜。

静春は一人で夜道を歩いていた。


今日の業務は書庫の書類整理。

オロチがいなくなってから犯罪件数が多くなり、こまめに整理しておかないと後々大変になるのだ。

それだけならもっと早く終わらせて帰ることができたのだが……


突然書庫内に黒い霧が発生し、飛び出してきたのはパルティネ。


久しぶりに会った二人。今までのこと、近況報告、バカな話、いろいろなことをしゃべり、気付いたら数時間が経っていて、今まで残って仕事を終わらせてきたのだ。


あー、帰って飯作るのめんどくさいな。どこかで食べて帰ろうかな。


そんなことを考えていると、道の先で金髪の少女が路地裏に入っていくのが見えた。


「……ティネ?」


もしそうなら、飯でもさそってみるか。


静春も路地裏へと入る。

道はせまくて暗く、偶然なのか人が一人もいない。


「あれ?見失ったか」


脇道が多く、曲がられたら探すのは困難だ。そもそも、本当にパルティネだったのかもわからない。

静春はそれ以上追うのをやめ、引き返そうと後ろを振り向く。


「……っ!?」


そこに、金髪の少女が立っていた。


背は静春より少し低い。ヘソ出しのTシャツにホットパンツという服装だが、少女の雰囲気のせいか色気より活発さを連想させる。

肩甲骨が隠れるくらいに伸びている金髪は毛先の方だけ少しカールがかかっており、前髪にはその少女がつけるにはちょっと幼すぎるデザインのカチューシャ。


「…………」


言葉もなく、ただ少女を見つめる静春。

彼女のカチューシャには見覚えがあった。


どことなく静春に似た顔立ちの少女が微笑む。


「久しぶり、静春」




数日後――


「……ん……?」


深夜一時過ぎ。

寝返りをうった巧は何か違和感を感じ、目を開いた。


「おはよう、巧」


「…………ちょっ!かなめ!何でここに痛っ!!」


びっくりしてベッドから転がり落ちる巧。となりにかなめが寝ていた。

部屋に鍵をつけているわけでもない。いつでも入ろうとすれば入れるのだ。ただ、今までそういうことがなかっただけで。


「……大丈夫?」


「うん……」


ベッドに座るかなめに手を引かれ、起きあがる。


「巧、パジャマ脱いで」


「えっ!?」


突然の言葉に、巧の心臓が跳ねあがる。


少し潤んでいる瞳。全世界のほぼ全員が「美少女」というであろう整った顔立ちに、柔らかそうな唇。胸のふくらみはまだ発展途上だが、襟元からのぞく素肌は今の巧には刺激が強い。正座のように膝を曲げお尻をぺたんと床につける、通称女の子座りをしながら上目づかいで見つめてくるかなめに、巧の理性は崩壊寸前だった。


「…………」


言われるがままパジャマを脱ぐ巧。

パンツ一枚になって顔を上げると、


「はい、これ着て」


恥ずかしそうに目線をそらしながら服を渡してくるかなめがいた。



「お、きたな」


着替えた巧がかなめに連れられて外に出ると、そこにはなずな、双、ソージュ、朱伽、陽芽が集まっていた。


「……かなめさん、顔赤くないですか?調子悪いんじゃ……」


陽芽がかなめの額に手を当てる。


「いや、心配なかろう。ちと照れくさいだけじゃ。な、巧?」


「ん?なんで僕?」


「んっふっふ~。このメンツで隠すことなかろう。とうとう結ばれたんじゃろ?」


「へ?」


「一緒に暮らしはじめてもう数ヶ月……最近の男子は奥手じゃのぅ。しかし、瑞穂ではなくかなめを選んだか。瑞穂には申し訳ないが……二人の友人として祝福するぞ」


「……いやいやっ!なんか話が飛躍しすぎてるからっ!何もないからっ!」


「寝ぼけてたのか、着がえてって言ったら目の前で脱ぎはじめてびっくりした」


真っ赤な顔でかなめが補足する。


「なんじゃ、そういうことか」


残念そうななずな。


かなめ、「着がえて」じゃなくて「脱いで」って言ったよね……という反論を飲み込み、


「ところで、なんで集まってるの?」


巧が問う。


「ソージュの追う女が行動を始めたようじゃ」


「えっ!?」


「オロチの封印に対して何か仕掛けてくるかと警戒しておったら、案の定封印が弱まったのじゃ。やられたのは『木』の(ほこら)。どうやったのかは知らんが、幸い祠は破壊されずに残っておる。静春がいればすぐに元通りにできるんじゃが、あやつも忙しいからのぅ」


巧が周囲を見渡す。静春は……いない。


「すみません、白宗さんは酔いつぶれててどうしても起きなくて……」


陽芽が申し訳なさそうに頭を深々と下げる。たしかに白宗の姿も見えない。


「陽芽が謝ることではない。急に集まってもらったわけだしな。青龍、白虎の不在に合わせてアマテラスの後任もまだ決まっておらんが、かわりにスサノオが三人おる。なんとかなるじゃろう」


なずなが空を見る。

その方向にあるのは、季里湖(きりこ)

巧達と当時オロチと呼ばれていた双の戦いにて起きた、季里区(きりく)を壊滅させた大爆発。それによってできたクレーターに河川の水や雨水がたまり、かつて広い公園だった場所は今では大きな湖へと姿を変えていた。


「ちと危険じゃが別行動をとろう。朱伽とかなめはそれぞれ『火』と『土』の祠へ。ソージュは白虎だったそうじゃな。『金』の祠へ向かってくれ。陽芽は『木』の祠へ。一番危険が少ないじゃろう。かわりにわしが『水』の祠に――」


「なずなさん!」


なずなの言葉を遮ったのは、陽芽だった。


「うちは玄武です。戦うことは怖いですけど……でも、守られてるだけなんて嫌です!うちもみなさんと一緒に戦いたい!」


陽芽がなずなを見つめる。


数秒見つめあった後、なずなに笑みがこぼれた。


「……よかろう。なら『水』の祠は陽芽に任せて、わしが『木』の祠に行こう。陽芽よ、敵がいても無理に戦うことは避けるのじゃぞ」


「わかりました!ありがとうございます!」


「他のやつらもじゃ!決着を焦る必要はない。封印が解かれてもまた封印し直せばよい。今回は偵察に行くくらいに考えておくように。皆の者、準備はよいか?」


気を引き締め、みんなそれぞれの目的地へと歩を進めた。

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