例のアレ① (幣原)
クソッ・・・・・・なんでこんなことに―――。
幣原大知は焦っていた。
彼もヘビースモーカーでかなりの煙草好きだ。
だが彼は若槻たちの輪に加わるつもりはなかった。
先ほど自分と取っ組み合いをした若槻が自分に煙草などくれないことなど分かりきっていた。
だが理由はそれだけじゃない。
畜生・・・・・・本当に何処に言ったんだ?
アレがひとりでにケースの外に出るわけがない。
ここで目が覚める前の記憶はあまりないが、アレをケースの外に出すはずがない。
―――とすれば可能性はひとつ。
俺をこんな連中と一緒に閉じ込めたいかれたクソ野郎が奪いやがったんだ!
「クソッタレのサイコ野郎が・・・・・・」
狂ったヤツのことをサイコパスというらしいが本当にそんなヤツがいるなんて―――。
だいたいなんで自分なんだ?
なんで自分が選ばれた?
俺はまっとうに生きてきた。
小中高とトップの成績を収めた。
受験戦争を乗り越えて見事トップで合格し大学でも気は抜かなかった。
就職戦争を制して大企業に就職して次は出世戦争だ。
残業もたくさんした。家に帰れなかったことなんてザラだ。
遅れず、サボらず、ミスもせず、ゲスな上司にはオベッカだ。
そんな俺を会社は認めてくれた。
結果、この年齢で専務にまでのぼりつめた。
社長にも気に入られていてる。次期社長も夢じゃない。
こんな俺がなんでこんな社会のクズどもと監獄みたいな場所に押し込められてんだ?
俺の今まで辿って来た道に汚点なんて何ひとつない。
何ひとつ―――。