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憤怒 (黒住)

「・・・・・・で? どーだった? 今のPRで何か見つかった?」

「うむ・・・・・・まぁ今のところは特に・・・・・・」

「やるだけ無駄だったってことじゃん」


 若槻が煙草を取り出しながら加藤にそう言った。

 今時の小娘はこんなのばっかなのだろうか?

 でも他の同年代くらいの子達はおとなしい。

 煙草を持ってるあたりコイツがちんちくりんなだけだろう。

 こういうタイプのAD(アシスタントディレクター)に出くわしたことはあったがその度にイジめてやった。

 若王子はプロデューサーからの受けも良い感じだが、私から見ればそんなのただのご機嫌取りにしか見えない。


 

 実は黒住麟と若王子匠はディレクターとADという上司と部下の関係である。

 この部屋で初めに目を覚ましたのがたまたまこの2人だった。

 14人しかいない中で知り合いがいたとなると疑いの目を持たれそうだったので、若王子に何か聞かれたら高校生ってことで通せと命令しておいた。

 実際さっきの自己紹介も若王子は高校3年と嘘を吐いている。

 もっとも知り合いといえば、若王子以外にもうひとりいるのだが―――。


 

 どこのキチガイがこんなワケのわかんないことをしたのかは知らないが、14人も人がいなくなっている。

 警察が来るのも時間の問題。私は特に入り乱れはしなかった。

 私が一番嫌いなタイプは高圧的なヤツだ。その次に礼儀をわきまえないヤツ・・・・・・。

 だからそんなヤツを一瞬でも羨ましいと思ってしまった自分が腹立たしい。

 こんな状況下でなおかつ目の前で自分が持っていない煙草を吸っている小娘に対する苛立ちが増していく。

 


 黒住麟はヘビースモーカーだった。

 煙草は一日に20本は軽く吸う。

 酒は数年前からとめているが、これだけはやめられない。

 かなり酒癖が悪い方で、以前上司や同僚と飲みにいって大変なことになったからだ。

 桜TV局では横暴な女性ディレクターとして有名だ。

 孤島にアイドルとカメラマンの2人だけを残すというかなり強引な内容が当たり、それ以 来キワモノ番組ばかり作っている。


 初めて彼女に会うADやTK(タイムキーパー)は運が良かったと8割方は思う。

 見た目はやさしそうでかなりの美人だし、プロデューサーたちからの評価もいいからだ。

 たしかに上司やその繋がりの人間に対しては非常に交友的だ。

 だが彼女は昇進や自分の評価には関係しないADやTKなどには冷酷だった。

 イジメともいえる彼女の部下への接し方は並みの人間には耐えられるものではなかった。

 バイトのADが一日で来なくなったなんてのも良くある。


 桜TVではそんな彼女のことを通称"黒麟"と呼んでいた。




「アンタさぁ、財布も携帯も盗られてんのに何で煙草とライター持ってんのよ」


 私は職場でのADに対する口調となんら変わらない口調で若槻に接した。


「へぇ~アンタ煙草盗られちゃったの?」


 小ばかにしたような返事が煙草の煙とともにすぐに返ってきた。

 ポケットにはライターしかない。多分煙草は職場の自分のデスクの上だ。

 トイレに行くときにそのままおいていった記憶がある。クソッ


「多分ね・・・・・・」

「ありゃりゃ、そりゃ残念だねぇ。お気の毒に」


 ―――コイツ、私を馬鹿にしてるのか?


「ねーちゃん! ワイにも1本だけくれや」


 新渡戸だっけか、関西弁の中年男が割り込む。


「はぁ? いつまでここにいるか分かんないのに誰がやるもんか。この油オヤジ」

「なっなんやて!? こっちは必死で頼んどんのにそりゃあんまりとちゃうか!!」


 ・・・・・・どこが必死だ。この油デブが。それに対するこの小娘もムカつく。

 畜生、イライラがつのるばかりだ。

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