開幕④ (雪藤)
「斎藤だ」
斎藤の自己紹介はあっけなかった。
どう見ても善良な市民には見えないのでヤクザ絡みの仕事についてるのかもしれない。
「私は白洲雛乃。音羽出版の編集部員よ」
ヘッドホンを首につけている女性は白洲というらしい。
名前のとおりというか髪が白髪でお団子ヘアーだ。
歳は20代か。
次は伊藤の横で立っている黒髪のロングの女性だ。
顔立ちも整っていて、モデルを思わせる見事な美人だ。
しかし、初対面にしてはどこかで見覚えがあるような・・・・・・。
「あっ思い出したで! 姉ちゃん『氷の女王』で有名な村雨時雨やろ!!」
新渡戸が閃いたという顔をした。
「えっ? 村雨時雨って・・・・・・あの弁護士の?」
私は新渡戸につられて喋った。
そうか、どっかで見たことあると思ったらあのワイドショーとかで度々顔を出している美人弁護士か。
ついこの間も『行列のできる法律相談所』で出演していたのを私は覚えている。
「えぇ、そうよ。それが?」
「それがって、そっけないやっちゃな。有名人に会えたらそら興奮もするで」
「私は世間に自分の合理性の正しさというのを伝えたいだけよ」
村雨はさらっと新渡戸に答えた。
メディアでも冷たいイメージしかなかった彼女だが、どうやら現実でもそうらしい。
「テレビのイメージそのものやな。さすが氷のように冷たいって言われるだけのことはあるわ。ワテの部下でアンタのファンもぎょーさんおんで」
「それはどうも」
周りを見てみると有名人に会えたのはやっぱり珍しいことらしい。
大体の人は関心の目をやっていた。
が、幣原はどうでもよさそうな雰囲気だった。
黒住と藪は何故か彼女を毛嫌いにしてそうな雰囲気だった。
「最後は君だよ」
加藤さんが壁にもたれかかっている学ランの男に言った。
背はかなり高い。190cmはあるんじゃないだろうか。
髪の毛は金髪で耳に目立つピアスをしている。
藪さんもしていたがこっちは学ランということで印象が大きい。
どこの高校だろう。耳にピアスしている時点であまり良い高校は浮かばない。
男は面倒くさそうに口を開いた。
「・・・・・・和合幸平。中学3年」
かなりドスの聞いた声だ。どっかの不良グループの首領なのかもしれない。
だがそれ以上に驚いたのは彼が中学生だということだ。
身長はここにいる人たちの中で一番高いだろう。
しかしこの中では最年少だ。
顔も無表情だ。何を考えているのか分からない。
とてもじゃないが中学生には見えない。
彼は何者だ?
こうして運命を共にしている総勢14人の自己PRは終わった。