開幕① (雪藤)
気がついたら、私はここにいた。
目を開けたら何人もの人がいた。みんな知らない顔だ。
「大丈夫か? 君の名前は?」
一人の男性が話しかけてきた。髪の毛は整っていて背広姿でピシっとしている。好感が持てた。
「雪藤・・・・・・雪藤詩歌です」
「そうか、私は加藤浩一だ」
自分の名前を言った後、彼は微笑んだ。
だけどその微笑みは見ててとてもつらかった。
そんなの当たり前だ、みんな目が覚めたらこんなところにいたというのだから。
ドアがこの部屋にはひとつある。
でも鍵がかかっていて開かないらしい。
そのドアの上には『2』と書かれた奇妙なナンバープレートが貼ってある。
私は最後に目が覚めてみんなが説明してくれたので状況はすぐに分かった。
何人かの名前も分かったし。
いや、何でこんなところにいるのかは分からないけど・・・・・・
それに記憶があやふやだ。
ここで目が覚める前、私はどこにいたんだろう?
部活帰り? それとも・・・・・・
なぜか考えようとすると頭が痛くなる。
そういえば今は何時なんだろう?
でも部屋には時計がないしみんな腕時計を取られたと言っていた。
「本当にここ何処なんだろ・・・・・・」
誰かが弱々しい声で言った。
龍造寺っていう名前の少女だ。
背は低く、日本人形みたいに長い綺麗な黒髪が特徴だ。
私と同様セーラー服を着ている。そのセーラー服の上にカーディガンを羽織っている。
聞くところによると彼女は高1らしい。私よりひとつ年下ってことか。
「もしかして・・・・・・監獄かな」
「監獄? そいつは見当違いだぜ」
龍造寺の呟きに反応したのは斉藤だ。
斉藤はがっちりとした体格の男で、目つきも鋭い。
眉間に何かで切りつけられたような傷跡がくっきり見えている。年齢は30代くらいか。
かなり喧嘩慣れしていそうで、派手なシャツを着ている。
どう見ても善良な市民には見えない。
監獄じゃないと言い切るのも、その場所がどんなことかよく知っているからだろう。
「なんでそんなこと分かるのよ」
黒住が聞かなくてもいいことを斉藤に聞いた。
ノースリーブでジーパンの格好の20代くらいの女性。
髪はミディアムで茶髪がかかっていてモデルかと思わせる見事な美人だ。
「大体想像がつくだろ」
「やっぱり入ったことあるの?」
「・・・・・・多すぎるくらいにな」
ああやっぱりという空気が部屋に流れた。