表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

EP2.Welcome to BLOODY MATES

「ん…」

マリアは、脳の奥が痺れるような感覚を覚えながら、ゆっくりと上体を起こした。


視界に飛び込んできたのは、無機質を通り越して不気味なほどの純白に包まれた部屋。

その隅にはガンラックとナイフやアックスが置かれたケース。

中央には、無骨な軍事用リュックサックが鎮座していた。


「ここはどこ…?」

困惑するマリアだったが、網膜の端に、まるでデジタルノイズのような違和感を覚える。


「…」

おもむろにマリアがリュックに手を伸ばそうとした時だった。


「やぁ!BLOODY MATES-ブレイク・サージ-にようこそ!」

虚空から鮮やかな光の粒子が溢れ出し、ピエロのようなホログラムが現れて陽気な声を上げた。


「びっくりした」

マリアは反射的に伸ばしていた手を戻し、とっさに戦闘態勢をとる。


「いやぁ、ごめんごめん!…僕は『リュラ』!このゲームの案内人さ!よろしくね!!」

ピエロは軽い口調で謝ると、空間を跳ねるような動作で自己紹介をした。


「じゃあ聞くけど…案内人さん。ここはどこなの?」

マリアがリュラに尋ねる。


「よくぞ聞いてくれた!君は今、ゲームを構成する仮想現実の中にいるんだ!」

リュラが陽気に語ると同時に、フロアマップが空中に浮かび上がる。


「今はまだ控室。これからガンラックから好きな銃器を2つ、近接武器を1つ選んで、そのリュックを背負って部屋を出る。今ここで君がするべきことさ!」

赤い点が、マップ上の現在地を示して点滅する。


「……部屋を出た先は? 早速、殺し合いが始まるの?」


「ノンノンノン! このゲームはチーム戦。戦場に行く前に、チームメイトの顔を拝んでおきたいだろ? 扉の先には、運営からの『ちょっとしたもてなし』を用意してある。準備ができたら扉を開けるんだ。いいね?」


「なんだか唐突ね…」

マリアは警戒を解かないまま、バッグの中身を確認した。


「水が1本と乾パンが1缶……なるほど。仮想現実と言えど、生理現象は無視できないってわけね」


「そういうこと!! 空腹と水分ゲージには常に気を配ることだ。マップに落ちている物資を確保しないと、たちまち干からびてゲームオーバーだよ! それと……!」

リュラが指をパチンと鳴らす。


「パサッ」

虚空から物質化するように、机の上に黒いジャケットが出現した。


「何の真似?」

マリアはジャケットを受け取りつつ、リュラに尋ねる。


「カリームさんからの差し入れだよ。『期待している』だってさ!」


「…どうにも怪しいけど。ま、ありがたく貰っておくわ」

マリアはジャケットを羽織り、リュックを背負うと武器が陳列されたラックへ向かった。


武器は多数あった。

ハンドガン、ショットガン、サブマシンガン、アサルトライフル、スナイパーライフル、ライトマシンガン、鈍い光を放つ武器が並んでいた。

弾薬は最低限だが、その重みは本物と遜色なかった。

そして、隣には軍用ナイフ、ミリタリーアックス、マチェットが並んでいた。


「なるほど。武器は現実世界と同じようなものね…」

マリアは一つずつ手に取り、体の一部のように馴染む感触を確かめる。


「ここに並んでいるのはほんの一部! マップにはさらに強力な武器が眠っているよ。おっと、大事なことを言い忘れていた!」


「今度は…何かしら?」

マリアはアサルトライフルの照準を合わせ、獲物を狙う鷹のような鋭い眼差しを見せる。


「このゲームでは、プレイヤーごとに固有のアビリティ2つとムーブメント1つが与えられる! 君の力はこれだ!!」

空中に表示されたUIには、彼女に眠る「異能」が記されていた。

---------------------------

『サンダーバード』

雷と風に関する能力を使用可能


『アビリティ』

・サンダースネア

雷型の手裏剣を放つことが可能


『サブアビリティ』

・エアロダッシュ

風を足に纏い空中を駆けることが可能


『ムーブメント』

・テンペスト

一定範囲を雷雨と暴風で包み込み、味方を強化し敵を弱体化させる

---------------------------


「能力……? 魔法みたいなことが使えるわけないでしょ。私は普通の人間よ」


「やってみるといい! 的を用意したから、『サンダースネア』の感触を試してみなよ!」

リュラが指を鳴らすと、前方に木人が出現した。


「意識を集中して、引き金を引くようにイメージするんだ。ただ、アビリティもムーブメントもクールタイムがあるから、使い所は慎重にね!」


「…こうかしら?」

マリアがイメージを具現化させる。


「バチチチチ!!」

すると、空気を引き裂く放電の音と共に、電撃を纏った手裏剣が木人に突き刺さる。

手裏剣は電撃を放ち続け、しばらくすると消えていった。


「……できた。けど、一体どんな原理なの?」


「言ったでしょ? これはゲームだって。理屈じゃない、楽しんだもん勝ちだよ!」 リュアが茶目っ気たっぷりにウィンクする。


「なんでもありね」

マリアは呆れたように呟き、再び武器選定に集中した。


10分後。

選んだのはアサルトライフルとハンドガン、そして軍用ナイフ。

軍人として、最も信頼の置けるセットだ。


「さあ、顔合わせだ! 試合開始まで、談笑でも楽しんで!」

扉のロックが解除される重厚な音が響く。


「(行くしかないわね…)」

マリアが扉を開ける。

静寂の中に、自分の心音だけが速く、高く響いていた。


扉の先もまた白い部屋だったが、そこには豪華なソファ、お菓子とティーセットが用意されていた。

戦場へ向かう死刑囚への、最後の手向けと言わんばかりの贅沢。

だが、そこには誰もいなかった。


「私が一番乗り……?」

マリアがソファへ歩を進めようとした、その時。


「カチリ……」

冷たい鋼の感触が、マリアの首筋に突きつけられた。


「…チームメイト…よね?」

マリアは動きを止め、鏡のような平穏さを保った声で尋ねた。


「そうだ」

背後から、獲物を見つけた獣のような男の声が返る。


「女がワンチャン参加しているかもしれないと思って、ドアの影で出待ちしていたら…」

男の手が、マリアの身体をなぞるように這う。


「いい女だ。匂い、肉つき、肌のツヤ…全てが極上だぁ」

男の指が、マリアの胸元に下卑た感触で触れた。


「私に手を出したら…高くつくわよ?」

マリアの瞳が冷酷な温度にまで下がる。


「いいねぇ!!強気な女も嫌いじゃない…さ、抱いてやるから大人しく…」

男の手が、タンクトップの隙間から深く侵入しようとした、その瞬間。


「はっ!!」

マリアの肘が、男の顔面へ向けて音速で叩き込まれた。


「おっと!」

男は紙一重で回避するが、マリアの追撃は止まらない。


「アホね」

逃げ場を塞ぐように、男の足を渾身の力で踏みつける。


「っ!」

男がわずかに怯む。


「言ったでしょ?」

男が怯んだ刹那、マリアの身体が弾け、既にその腕を絡め取っていた。


「おっと、これはヤバイね!」

それでも男は余裕の笑みを崩さない。

だが、マリアは一切の慈悲なくナイフを弾き飛ばすと、洗練されたCQC(近接格闘術)で男を床に叩き伏せ、その喉元に自らのナイフを突き立てた。


「高くつくって」

完全にマウントを取り、男の生殺与奪を握っている。

殺そうと思えば、あと数ミリ指を動かすだけで済む。

しかし…


「いいねぇ!!余計好きになっちまいそうだ!」

男の興奮は収まるどころか、狂気の色を帯びて滾っていた。


「…まだ分からないなら、物理的に分からせてあげる」

マリアが拳を振り上げた、その時。

男が潔く手を地面に叩きつけた。


「降参だ。俺の負けだ」


「…どういう風の吹き回し?」

マリアは警戒を解かない。


「お姉さんが何者かは知らねぇが、この世界じゃ強い奴が正義だ。そして今、俺はあんたに負けた。だから従う。もう手は出さねぇよ」

男は呆れたように、しかし清々しげに溜息をついた。


「信じられないわ。あんたのような(けだもの)の言う事なんて…」

マリアがその不遜な面に一撃を見舞おうとしたその時、近くに人影が現れる。


「あー…お取り込み中でしたか?」

そこには、グレーのスーツを着た男が、場違いなほど間の抜けた顔で、こちらを見つめていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ