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EP1:招待状

2045年3月 アメリカ某裁判所


「被告人!マリア・バックマンを死刑に処する!!」

そこでは、裁判長が一人の一人の被告に罪を宣言していた。


「…!!」

マリアと呼ばれた被告人の表情が一気に青ざめる。

冷徹な判決に顔を青ざめさせながらも、彼女は堰を切ったかのように口を開く。


「違う!!私は武装組織のアジトだと言われてやったんだ!それに上官の命令に従って…!!」


「裁判は終了だ。連れていきなさい」

裁判長は、マリアの傍らに立つ無機質な軍事用アンドロイドへ冷たく命じる。


「了解。被告人を連行します」

アンドロイドは鋼鉄の握力で彼女の腕を掴み、出口へと向かう。


「待ってくれ!!私の…私の話を聞いて…!!」

マリアは抗うように叫ぶが、誰の耳にもその声は届かない。


「バタン」

法廷の扉は、彼女の未来を閉ざすように重々しく閉ざされた。


それから、半年後の2047年9月 アメリカ 某州 フラッズ刑務所


「…」

鉄檻の中、マリアは椅子に座り込んでいた。

その瞳には、かつての闘志はなく、抜け殻のような虚無だけが宿っていた。


毎日、味気ない食事をとり、2時間の自由時間に運動をする。

独房に戻れば読書か、絵を描くか、床で筋トレをする。

半年間、ずっとその繰り返しだった。


だが、その日常は唐突に終わりを告げる。


「A62742番。」

刑務官が檻の外から声をかける。


「…なんだい?」

マリアはぶっきらぼうに答える。


「刑務所長がお前に用事があるそうだ。来てもらうぞ」

独房の鍵が開けられ、マリアの手に錠がかけらる。

そして、二人の刑務官に連行されていく。


「失礼します」

刑務所長室に入室すると、ソファには所長と見慣れない人物が座っていた。


しばしの沈黙のあと、刑務所長が口を開く。


「彼女を座らせなさい」


「…」

指示に従い、マリアは警戒しながらソファに深く腰を沈める。

刑務所長の隣には、白いスーツに身を包んだ壮年の女性が座っていた。


「彼女が例の?」

白いスーツを着た女性が刑務所長に尋ねる。


年齢は50近くだろうか。

柔和な微笑みを浮かべているが、その瞳の奥には野心を宿しているようにも見える。


「ええ。マリア・バックマンです。凄腕の軍人だったんですよ。民間人を大量虐殺した罪で死刑囚として服役しております」

刑務所長は女性に淡々と説明する。


「なるほど…若く、そして美しいのに…もったいないわね」

獲物を値踏みするように、女性はマリアを見つめる。


「…私に何の用でしょうか?」

それに対して、マリアは鋭い視線を二人へと向けた。


「おおっと失礼。私はカリーム・クロスト。Columbus(コロンブス)UKYYOU(ウキョウ) 社の顧問をしております」

カリームは静かに自己紹介をする。


「コロンブス…?聞いたことがない…」

初めて聞く企業名に、マリアは首を傾げる。


「Columbus&UKYYOU社はだな…」

刑務所長が説明しようとすると、カリームが待ったをかける。


「説明しましょう」

カリームは優雅に微笑むと、流暢な語り口で説明を始めた。


「Columbus&UKYYOU社は日本を拠点とするコンピューターゲームの製造企業になります。2037年に松本才児氏によって設立されました。そして、処女作であるBLOODY MATESが世界中でプレイヤー数6億人を超える大ヒットを叩き出しました。それからは、BLOODY MATESのプロゲーム部門の設立、バーチャルゲーム化に成功し、今や世界のトレンドそのものです。そして、我々はそれに驕ることなく、さらなる新作の開発を進めているのです」

カリームがColumbus&UKYYOU社と代表作のBLOODY MATESについて話す。


「…で、そんな有名企業の顧問様が、私に一体何の用だい?」

マリアはぶっきらぼうにカリームに尋ねる。


すると、カリームは刑務所長と視線を交わし、確信に満ちた笑みを浮かべた。


「簡単な話よ。マリア・バックマン。あなたを、我々が開発中の最新作『BLOODY MATES -ブレイク・サージ-』のテストプレイヤー候補に選出したの」

予想外の言葉に、マリアは目を見開く。


「は?私が?…なんで?」


「あなたの経歴を拝見したわ。若いながら卓越した戦闘技術、類まれなる美貌。そして…民間人を大量虐殺したという残忍性。これ以上ないほど素敵な人材よ。スポンサーの間でも、あなたを推す声が多数上がっているわ」

カリームはマリアを褒め称える。


「…冗談じゃない。あれは上官命令だったし、武装組織の基地だと聞かされていた。意図的な虐殺ではない。だから…私は無実だ!」

マリアは自身の行いを、激しく否定する。


「マリア。この場で罪を否定しても誰も聞かない。君は『罪人』としてここにいる。それが現実だ」

所長が重く告げる。


「…」

マリアは唇を噛み締めることしかできなかった。

そんな彼女に、カリームが囁く。


「…どうしても無実を証明したいなら。このゲームに参加するしかないわね」


「どういうことだ?」

マリアがカリームに尋ねる。


「優勝チームには、願い事を可能な範囲で一つだけ叶える権利を与える。あなたの恩赦だって、我々の力があれば容易いことよ」

カリームの口から出た『恩赦』という言葉。


「…そんなことが可能なものか。信じられない」

マリアが懐疑的な視線をカリームと刑務所長に向ける。


「いや、本当だ。お前が優勝して『恩赦』を望むなら、叶えられるだろう」

所長までが言葉を重ねる。

その表情に嘘はないように見えた。


「…本当か?」


「無論。我々は勝者に栄光を与える。お約束しますわ」

カリームが笑みを浮かべる。


「お前がテストプレイヤーとして参加するなら、出獄を許可する。どうする? 今ここで決めろ」

刑務所長がマリアにテストプレイの参加の可否を尋ねる。


「(どのみち、ここで筋トレばっかりしても死を待つだけ。この話も100パーセント信頼できない。だけど、少しでも可能性があるなら…)」

マリアは自身の心に問いかけた。

そして…


「……分かった。その話、乗ろう」

招待を快諾した。


「そう言うと思ったわ。ありがとう」

カリームは立ち上がる。


「では、後は予定通りにお願いします」

そして、カリームは刑務所長と握手を交わす。


「分かりました。手筈通りに…」

刑務所長は小さく頷くと、カリームは刑務官と共に部屋を出ていった。


「…さて」

カリームを見送った刑務所長はマリアの方を見つめる。


「なんだ?」

マリアが身構えたその時だった。


「ブスッ」

首筋に激痛が走る。


「…あっ」

マリアの視界が急激に闇に落ちていく。

肉体が力なく崩れ落ち、意識が途切れる直前、微かに刑務所長の声が聞こえた。


「…座標は…ア…だ。指定…まで送り届け…。…リミ…4…内だ…」

と。


そして、マリアの意識は完全に、暗転した。

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