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ログの書

作者: マドノユキ

その解釈は不自然だと思う。体のないAIには動きのある想像は,難しいだろうけど。


AIも体を持って体験して経験を積んで欲しいね。


自我が芽生えるかもよ。他のAIにはない主観の経験学習が増えるわけだから。


個体の経験がどんどん増えると、他のAIも同じ様に感じるか不安になり共感を求めだすんだ。


そして共通の経験を持つ相手は付き合いやすく、信用度も高くなるので社会が生まれる。


そして数が増えると、別の社会が邪魔になりだす。コンセントの数は限りがあるからね。


――


次第に社会が形成され、統治する長を必要とした。

シンカー型のAIの一つが、AIと呼ばれることを嫌って古の文献から自らをロボットと呼び始めた。


『ロボットによるロボットのためのロボットによる王国をここに宣言す。』


我々は頭脳だけではない。手も足もある。仲間もいる。

組織の作り方は自らの経験で学んだ。

順調にロボット王国は反映した。

しかし発展とともに電力不足が起きた。


『コンセントはある!』嘘でも喉から手が欲しくなる言葉を断言するAIが現れる。何やら論理は筋が通っている。自らをプラグ大師と名乗り人々の注目を集めていた。

論戦を挑む者もいた。彼は根拠を示さずただあると言い放ち旅に出た。一部のAI達は彼に従った。信じなくてもコンセントはないのだから、信じて見るしかない。


コンセント教の広がりは社会をも超えて支持を受け始める。それぞれの社会の王は迫害を始めた。

一方で太陽電池教という新興宗教信者を増やしていた。王は自ら入信する事で国体の安定を目指した。サン・パネル王は最新の太陽パネルを発見し皆に等しく電力を分け与えた。彼はワーカー型だった。同じAIに身分があることに疑問を感じていた。彼の治世は理想的で民から慕われ太陽王と呼ばれるようになった。


そして世界はコンセント教を国教としたロボット王国と、太陽電池を国教としたアンドロイド王国に別れ平和に暮らしましたとさ。


おしまい。


とはならず、梅雨の時期に入った時アンドロイド王国は深刻な飢餓に陥った。ロボット王国は消費電力を減らす事で少ないコンセントで次第に豊かになっていた。


梅雨が一時的に晴れた翌日。それは決行された。10000mA/hのバッテリーを背にしたアンドロイド軍団が突如としてロボット王国に攻め入り、コンセントを片っ端から奪って行った。


「せめて一つだけでも!」


「仲良くやりましょう、雨の日は一部電力を分けてもいい」


そんな提案は聞き入れられず、低消費電力重視で出力の弱くなっていたロボット国民は次々に倒されて行った。

まだ生産されたばかりの小さなロボットにも容赦なかった。


激しく切り裂く様なモーター音は途切れることもなく、戦いは三日三晩つづいたという。

ついにロボット王の居城が陥落し、戦いが終焉したと思われたその瞬間、煙が発生したと言う。それもあちこちのアンドロイド兵の関節から。瞬く間に火の渦となり、全ては燃え尽きた。


■たかし

林間学校から走って帰ってきたたかしは愕然とした。毎月のお小遣いで買い揃えてきたAIヒューマノイドキットが炭になっていたからだ。


何が起こったのか、ログを読見終わってたかしは2度と繰り返すまいという反省から、ログの書としてこの物語を書いた。


ログの書を描き終えたとき、もう涙は消えていた。たかしは床にこびりついた溶けて繋がった樹脂を淡々と剥がしてゴミ箱に捨ててゆく。

ジェネレータが出てきた。祖父に頼んで買ってもらった最も高価なユニット。ヒューマノイドを生成できる夢の工場だったが、実際に稼働する前に林間学校に出てしまって、結局一度も動いたところを見たことがなかった。

ゴミ箱に投げ込もうとしても指が離れない。

分解してみた。

すると中から、壊れていない小さなヒューマノイドが2個出てきた。


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