4話
リズは瞬きをした。その僅かな時間。怪しげな男性はリズを蹴り飛ばした。
クッションとなるロック。
「リズ!大丈夫!?」
「僕は大丈夫」
怪しげな男性は、ため息を盛大につき癇癪を起こす。
頭をかきながらリズたちを睨み付ける。
「何で!こんな攻撃も避けられないんだよ!ただの蹴りだろ!お前!弱すぎる!これじゃー素材にすらならんだろ!せっかくアルス君がそこにいるのに!僕の最高傑作でもアルス君を殺せないし!あーもー何で上手く行かないんだよ!・・・もういい。こいつら殺すか」
凄まじい殺気を放ちながら怪しげな男性は、背よっている大鎌に手を伸ばす。
すると男性の足元の影が人の姿となりリズたちを守るように男性の前に立つ。
「No.8・・・殺すのはダメだ。ボスの命令だ。」
「No.6。1人ぐらいいいだろ。殺してもさぁ!!」
「いや。ダメだ。我々の目的は違うだろ」
「わかったよ。・・・チッ。命拾いしたなぁ。その面見せたら。今度殺す。覚えておいて下さいねぇ。・・・じゃーまた」
「待て!!」
2人は闇へと消えていく。
リズは、2人を追いかける。しかし、リズは男性の袖を掴むギリギリのところで闇へと完全に消えてしまった。
「・・・彼らは一体」
「考えても無駄よ。・・・それよりも今、あの竜をどうにかしないと」
「そーですねぇ。アルスさん。1人で任せていましたしオレたちも参戦しないとですねぇ」
「そーよ。いくらあいつが強いとは言えきっと苦戦しているはずよ。」
「リズ。ロック。・・・あれに参戦するつもりなのです?」
リンはアルスがいる場所を指す。
そこには竜を素手で殴り怯んだ瞬間に投げ飛ばす。空中で追いついたアルスは竜を地面に叩きつける光景だった。
竜が弄ばれているあり得ない光景を目撃する漆黒の剣は、唖然とする。
アルスは、楽しそうに戦っている。
竜が弄ばれている光景は、異様。
竜は元来、人が一人で勝てる存在では、ない。それをアルスはたった一人で戦い竜を圧倒していること自体が異常。
間違いなくこの戦いに参加すれば殺されるだろう。
その状況を理解いているが故に漆黒の剣はその場に立っていることしかできない。
「ねぇ。私たち。いらないですよねぇ」
「・・・僕たち完全に足手纏い」
「そーですねえ。Sランクは化け物ばかりだと聞きますがあれは、化け物の中化け物ですねぇ」
ロックの発言に2人は頷く。
リズは、拳を強く握り締め深呼吸して2人を見る。
「彼についていけば、僕たちは強くなれる。そうすれば万年Aランクチームなんて呼ばれなくなると思うから彼にこれからもついて行きたいと思う。・・・どうかなぁ?」
「オレは、賛成です。」
「私は。正直。怖いです。アルスはこれからも高難易度の依頼をやるはずです。・・・でも。私も強くなりたいです。歴史に名を残せる大魔導士になりたいです!」
「じゃ決まりねぇ僕たちは、彼についていく!」
漆黒の剣がそう決意している中。
アルスは、徐々にストレスを溜めていた。
「・・・いくら竜とは言えタフすぎる」
竜の火球攻撃を剣で弾き返して反撃しているが火力不足で致命傷には至らない。
そして、アルスの攻撃は、魔力が喰われ物理は効きにくい。
「さぁて。どうしよう。魔剣は効いた。だけどあと一度使ったら壊れる。んー。心臓貫くしかないか。・・・そんな隙無いんだよなぁ。」
そうブツブツと独り言を言いながら竜の火球攻撃を弾き返している。
竜は、キリがないと思ったのか。火球を放った瞬間にアルスの上空から噛み付くが避けられ顔面に強烈なパンチを喰らい壁に激突する。
アルスの右手がブラブラと揺れていた。折れているのにも関わらず痛がっている様子がない。
「折れてた。殴った瞬間に身体強化のスキルが無効化されたのか。・・・それで折れたか。・・・【コモンスキル】治癒発動。」
一瞬にしてアルスの腕は元通りになる。その隙を狙い竜は尾っぽによる薙ぎ払いをする。
しかし、空を斬る。
アルスの青い瞳が鮮やかに輝き竜と見合う。その瞬間。竜は悟った。
竜の目の前からアルスはスーッと消えて竜腹部に現れると白く発光するナイフを突き刺すと白い光の柱が竜を貫いてた。
竜は悲鳴をあげてる。
白い光の柱が薄くなるとナイフはボロボロ崩れていった。
「・・・今までありがとうな。聖剣。」
狂気が徐々に浄化され竜は本来の鮮やかな真っ赤な色に戻ってた竜は安らかな表情になる。
魔力障壁の足場にして宙にいるアルスは、竜を見てキョトンとした。戦意消失したのか武器をしまった。
「小さき者よ。ありがとう。」
「お前、喋れたの?」
「・・・あ。喋れたぞ。・・・また。会おうぞ。小さき者よ」
竜は、光の微粒子となり天へと消えていった。
すると拍手が鳴り響く。アルスは拍手がなる方を見るとそこには、先ほど漆黒の剣と戦った怪しげな二人組が洞穴の入り口でフードを深く被った不気味な男性が拍手をしていた。
「いや〜流石だよ。アルス君。・・・死ぬと思ったのに君は相変わらずデタラメだ。・・・なんで死なないの?・・・ねぇ。あーダメだ。アルス君を見ると殺したくてうずうずするよ」
アルスは、ドン引きしていた。
「お前誰?」
「・・・忘れたのかい。そうか・・・忘れたのか。残念だよ。今回は許してあげるよ・・・次は、君を殺して僕のモルモットにしてあげるからねぇ・・・それまでは誰にも殺されないでねぇ・・・」
人の形をした影が不気味な男性の肩を叩く。
「そろそろいくぞ」
「えー?もー時間」
「あー、俺たちの目的は果たした。帰還するぞ」
「おい待って」
アルスが2人がいた場所に行くとすでに2人の痕跡すら無かった。
アルスは自分を知っている不気味な男性を思い出そうとしていた。とある自分が頭を遮った。
「いやでもアイツは殺したはずだ・・・生きているはずがない。まさかなぁ。」
アルスは、竜のドロップアイテムを回収して漆黒の剣の元へ戻っていく。
「・・・生きてたか。お疲れ様。」
アルスは漆黒の剣が生きてることに安堵した。
「生きてますよ」
リズは何処か不満そうにそう言った。ロックとリンはくすくすと笑っていた。
一同は一度宿へと戻った。
そして、再び、迷宮に戻り依頼をこなして行った。
20日後。
迷宮完全攻略以外の依頼を全て達成して迷宮の最奥。竜がいたフロアよりも深い場所にアルスたちは、来ていた。
そこには宙にフカフカと浮かぶ紫色に発光する球体があった。それは迷宮コアと呼ばれている。
迷宮コアは迷宮を作り出す力を持った不思議な魔力を持った石。
迷宮コアを破壊することによって迷宮はその役割を消失する。
漆黒の剣は迷宮コアを初めて見たのか少し興奮気味だった。
アルスは微笑ましいそうに後ろから見ていた。
アルス達は周囲に異常がないか調べたが異常がないことを確認して迷宮コアを破壊した。
明るかった迷宮内は光を失い薄暗い洞窟へと変わっていった。
「これにて全ての依頼が終わった。・・・ありがとな。漆黒の剣。」
アルスは少し恥ずかしいそうにそう言った。三人は顔を見合わせて笑い始めた。
「・・・なんだよ」
「君って照れるんだなと思ったら笑いが止まらなくて。」
リズがそう言うと他の2人は頷いた。アルスは、ため息をこぼす。
かくして、全ての依頼を終えたアルス達は、ギルドに報告する。
一方。迷宮コアがあった部屋に一体の邪悪な瘴気を放つ純白なスケルトンが産まれた。
「・・・ココキモイナイ。・・・ドコニイル。・・・魂ノ半身ヨ・・・」
迷宮としての役割を終えた迷宮コアの部屋は崩れ始めた。
スケルトンは自分に当たりそうな瓦礫を消し飛ばすと周りを見渡し誰も居ないことを確認すると闇へと消えていった。
☆
アルス達は、クレドのギルドホームに戻ってきた。
アルスがギルドに入った瞬間。受付嬢達は高難易度依頼ファイルをかき集め始めた。
アルスは大きなため息をつく。するとくすくすと笑う漆黒の剣をアルスは睨みつける。
ティアがいる窓口にアルスとロックは並び。順番になると冒険者ライセンスと依頼ファイルを渡す。
「アルくん。おかえり。珍しくチーム組んだのねえ」
「まぁー成り行きでねぇ」
「確かに成り行きです。」
「ふぅー。だから今回はいつもより早く帰還したのねぇ。・・・すべて問題ありません。今回はチームってことで報酬は、どう振り分ける?」
アルスは、んーと考え始めているとロックがアルスの前に出る。
「漆黒の剣の報酬は三分の一でお願いします」
「え?。・・・わかりました。アルくんもそれでいい?」
「ロック。お前達はそれでいいのか?」
「はい。リズ達と相談して決めました。」
「・・・ならいいけど。」
「わかりました。・・・それで処理します。」
ティアがパンっと手を叩くと一瞬にしてティアの両サイドに依頼ファイルがタワーのように積まれていた。
それを見て呆然とするアルス。受付嬢達は目をキラキラさせている。後方で見ている冒険者達も盛り上がる。
ティアは満面の笑みで両手を広げた。
「さぁー。アルくん次の依頼は何する?」
アルスはフードを取っ払い机を叩く。
「ティアさん。いい加減。休みをくれ!」
「・・・代わりの人が居れば休んでも大丈夫ですよ。」
「・・・俺。冒険者辞める」
「アルくん。何を言っているんですか?国内で唯一のSランク冒険者である貴方を辞めさせるわけがありませんよねぇ」
アルスは一瞬にして出入口まで行ったがティアがアルスの前に立っていた。
冒険者達は目を点にして2人を見た。
「どこにいくおつもりで。」
「・・・この国から逃げる」
「駄目に決まってるでしょ」
にらみ合う二人。
ティアは羽ペンをマジックバックから取り出す。魔力を込めると杖へと変形する。アルスは拳を構える。
ティアが先に動いた魔力で作られた矢をアルスに放す。
アルスは魔力で出来た矢を拳で相殺してティアから逃げる。しかし、ティアはアルスに魔力の矢を撃ち込み。
アルスは被害がでないようにすべての矢を相殺していく。
二人を見る冒険者たちは大盛り上がりギルドホームは、宴会場となった。
漆黒の剣はそのノリに乗れず困惑していた。
「漆黒の剣は知らないか。二人の関係」
フィアが漆黒の剣に声をかけた。
「まず、ティアはもとAランク冒険者でクラン【ドラニクル】に所属していてアルスくんも所属していたんだよ。・・・ドラニクルは世界最強のクランでそのメンバーはたったの13人。まぁー色々あってクランは、解散してアルスくんだけは冒険者のままで古株たちは隠居して若い人たちは各国に引き抜きされんだ。」
ロックはふと疑問に思ったような表情をする。
「フィアさん。アルスさんは冒険者のままだったんですか」
「それはねぇ。・・・Sランク冒険者が居なくなるからだよ」
「え?」
「だってねぇ。隠居した人たちは仕方ないけど。若いメンバーは六人で騎士団や魔導学会、学園の教師に引き抜きされたから。アルスくんだけ残って貰ったんだよ」
「それだけ強かったのですねぇ」
「私が知るなかでアルスくんは群を抜けて強い。今、彼に勝てる人はいないと思うよ」
そこへ。熊のような厳つい男性が現れアルスたちを一撃つづ殴って気絶させて止めた。
「いたわ。アルスくんに勝てる人。うちのギルドマスターが」
漆黒の剣や他の冒険者たちは一瞬で黙り込んだ。
ギルドマスターは、ギロっと冒険者たちや受付嬢たちを睨み付けて仕事をさせた。
次の日。アルスはギルドに訪れてるとティアから無理やり依頼を受けさせられてその依頼に漆黒の剣がついていくことになった。
この時のアルスたちは知らない。
数々の困難や出会いを繰り返し自分達が世界を救う冒険に出ることに。
そして、世界の謎を解き明かす冒険が始まろうとしている。
完
この作品の続きが読んでみたい方がいらっしゃれば続きを書きたいと思いますので感想などで知らせてくれるとありがたいです。
それではまた、次の作品でお会いしましょう。
社畜なシャチでした。