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9話花火大会

8月も半ば。


腰痛を引きずりながら私の引っ越しは無事に終わり、荷解きや部屋のセッティングはほぼ1日で終わらせた。

通常数日間かかるのが普通なんだろうけど私は今までに10回以上引っ越しをしているからか手慣れたものになっていた。


クタクタの荷解き当日が接骨院の予約日だった。

早く神山さんに会いたかった。


あの笑顔に癒されなければ…




神山「こんにちは!!」

  「引っ越し大丈夫でした?」


(実は引っ越し日前日に無理して腰痛が悪化してしまいダメ元で連絡したら予約が1箇所だけ空いていたので急遽行ってきたのだ。本当にラッキーだった)


それもあって神山さんは余計に身体を心配してくれていた。


紅葉「おかげさまでなんとか大丈夫でした!笑」


神山「いやぁ〜!良かったです!!」


紅葉「前日ここに来れてなかったら危なかったですよ。」

「しかも業者さんが来るのが遅くなっちゃって作業開始が夕方の4時半からだったんで夜も遅くなってクタクタでした…」


神山「え??!そんなに遅かったんですか?!」



紅葉「本来来るはずのチームがトラブルがあったみたいで他のとこから2人来て、そのあとにまた2人加わってかなりバタバタでした…」


神山「それはかなり大変でしたね…」


紅葉「業者さんが帰ってから21時過ぎかな?もう一回前の家に荷物積みにいって自宅に着いたのが0時過ぎで…めちゃくちゃ疲れました。」


神山「そんなに遅かったんですね…じゃあこれから荷解き?」


私「荷解きはもう終わらせました!笑」


神山「え?!いつ?!笑」


私「今日ですよ!朝からやってもう終わりました!」


神山「そんなに早く終わるんですか?!普通何日かかかりますよね?」


私「引っ越しはコツがあるんですよ!(笑)」

「もう10回以上引っ越ししてますからね!」


神山「引越しそんなにしてるんですか?!コツって(笑)」


私にとって引っ越しは流れを変えるための気分転換だった。

前の家は一年ほどだったが10回以上もしていると引っ越しも慣れっ子で荷造りの時点で短時間で荷解きをしやすいように、工夫しているのだ。

そのコツを神山さんに説明していたら彼は興味ありげになるほど〜!さすがですね!と言いながら真面目に聞いていた。



神山「もうそっちの河川敷には行きました?」


まだ引っ越して2日…

さすがに行けていない。


紅葉「まだ行けてないんです…」


神山「忙しいですもんね……あそこの河川敷、めちゃくちゃ暗いですよ!」


ん??暗いって、神山さんはあの河川敷は行ったことないはず…



紅葉「……え、あぁ〜やっぱり暗いですよね!でも前のとこも結構暗かったし全然大丈夫ですよ!笑」


神山「本当ですか?!マジで真っ暗ですよ?」



え?だから神山さんは行ったことないよね?

車で通ったとか?

私が引っ越してから?


私はその理由をなぜか聞くことをためらってしまった。


紅葉「暗い分には全然大丈夫ですよ〜!笑」


神山「あぶない!笑」


紅葉「(笑)」


来週末はもう花火大会かぁ…

一緒に見たいな〜なんて。


結局ビビりすぎて花火大会の話はできなかった。


神山「じゃあ、うつ伏せで電気かけます!」



『花火大会当日』


今日は朝から仕事がみっちり入っていた。

花火大会は19時半からだったけどなんだか身体が重だるくて夕方に帰宅してからずっと横になっていた。


こんな日に限って体調不良か…

最短ルートで片道3キロ、歩けるかな?


治れ治れ治ってくれ。


ギリギリまで休んで、いま19時20分…


今から行っても間に合わないし諦めたら?ともう1人の自分がつぶやいたように聞こえた。


でも後悔したくなかった。

行けば良かったってなるのが目に見えていたから。


気づいたら身体が勝手に動いていて急いで支度をして家を飛び出した。


無我夢中で走った!


無情にも走り出して5分後には花火が打ち上がる…


見晴らしのいい田んぼ道で5年ぶりの藤田市の花火大会が始まってしまった。


綺麗すぎる…でもなんだか寂しい。

しばらく立ち尽くし、思い出したかのように必死に走った。


田んぼ道で花火を見る人、河川敷で見る家族連れの横をすり抜けて私はとにかく走った。


それは花火を見たいという気持ちよりも、


『神山さんに会いたかった』から。


行けば会える気がしたから必死に走った。

あの時みたいに偶然会えたりしないかな?


必死に走って橋の手前に着いた頃には19時45分だった。

信号を渡らないと、あっち側に行かないと。


そう思った。


でも今の自分には想像より多かった人混みをかき分けて行く自信もなかったし、運良く神山さんに会えてもこんな顔を見られてもいいと思える自信もなかった。


つまりそこから動くことができなかった…


そこが今の自分にはお似合いだった。



『君に会いたいよ』


あなたはどこにいるの?

周りを何度も見渡した。

でも探し回ることは私にはできなかった。


結局最後まで見ていたけど神山さんと遭遇することはなかった。当然だよね。


一歩踏み出していたら会えたりしていたのかな?

彼と同じ花火、景色を見られたのかな。


言い訳もたくさん、反省もたくさん、気持ちを抑えるのが精一杯だった。


泣きそうになる気持ちを抑え、見物客に紛れてトボトボと帰宅した。


1人になったら涙が溢れそうだった。


好きな人や恋人ができると寂しいと感じることが増える気がする。

だから仕事と趣味に集中しているときが1番楽だった。

好きになった方が負けという言葉があるがそれが真実なのかもしれない。


私には恋愛も仕事も趣味も両立する器用さがないから今が辛くて仕方がなかった。


今日は全然眠れなかった。


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