令和
そうこうしているうちに、令和とやらの新しい年号になってしまったわ。
彼女は少しずつ回復して来てはいるけれど、まだ万全ではない。
無理強いはしたくないから、ひたすら見守るしかなかった。
悪霊に見守られるっていうのもなんだけど。
彼女にはもうひとつ特技があって、文章を書くのが上手いのよ。
詩や作文が子どもの頃から上手くて読書感想文で賞をもらったり、社内の課題文で社長賞を取って表彰されたりしたこともあるの。
ブログとか、最近小説投稿サイトに登録して、生き生きと自由に書いているわ。
それで閃いたのかもしれないのだけれど、彼女が気になっていた私や元夫のことを小説の題材にして作品を書いてくれることになったの。
そう、あなたが今読んでくれている、この作品がそうなの。
私にはもう時間が残されていないから、助かったわ。
私の想いはちゃんと彼女は汲んでくれた。やっぱり私の見込んだ通りだった。
もう思い残すことは無くなったわ。
もし生きていたら、私は今百歳以上だ。
死んでから長居をし過ぎてしまったけれど、粘った甲斐があったわね。
私はこれで天界へ悔いなく帰ることができるわ。
もし生まれ変われるのであれば、今度はちゃんとあの人と添い遂げることができるような夫婦として生きてみたい。
それは神のみぞ知る領域ね。
さあ、もう行かなくちゃ。悪霊なんて、もうやめないとね。
(了)