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平成

まだまだ長生きすると思った彼の奥様は、平成が四年目になると寿命を終えて天界に旅立った。


身体は元々それほど強くなかったようだけれど、持病を抱えながらも、米寿を迎えることができたなんて、なかなか大往生よね。


可愛い曾孫まで見れてとても幸せな生涯だったと思うわね。


でも、私が彼女を許せなかったのは、再婚はしなかったけれど、晩年には彼のことを思い出すこともしなくなって、顔すら忘れてしまったことよ。


空襲で家を焼かれてしまった時に彼の写真が1枚も残らずに全部焼失してしまったから、遺影すらないのよね。

骨も遺影もないのは寂しいことよ。


せっかく孫が彼のことを知りたがっていたのに、「もう忘れちゃったよ」と拒絶したことが頭にきた。


もう、何やってるのよって。


私の姿も見えず、声も届きはしないでしょうけどね。


いくら思い出すのが辛くても、孫は自分の祖父の写真すらないんだから、顔すら知らない祖父のことを少しでも知っておきたいと思うのは、自然なことよね。


上の娘は五歳、下の娘は生まれたてで一度も合うこともなく逝ってしまったから、彼は自分の娘達にすら顔を覚えられていないのよ。


私の元夫が、それでは可愛そうだと思ってしまうのは当然でしょ?


孫達が彼のことを聞く前に、奥様は逝ってしまったから、孫娘も残念がっていたわ。

私と気が合いそうなその孫娘は、まだ能力を封印していた。



それからまだまだ待つことになった私は、私の天界からのお迎えの担当者に、お前は天界にいつ戻るつもりかと、叱られた。


私がここに留まっていることは、この家や家族の皆さん達に、どうやら負担になるらしい。


いわゆる悪霊って言われている存在に、知らないうちになってしまっていたみたい。


あまり長くここにいると、もう天界へは帰りたくても戻れなくなってしまうらしい。


「 お願い、もう少しだけ待って、 あの孫娘が封印を解いたら、ちゃんと戻るから」


渋々、私の担当さんは承諾した。



そして2005年、その日はやって来た。


彼女の守護天使と、ゲートキーパーらと共に、彼女の封印を解除した。


彼女は戸惑っていたけど、天使達の声を聞くことや天使のちょっとしたスピリチュアル的なサイン等を察知することができるようになったみたい。


それから霊の気配も強く感じるようで、見えなくても「いる」という感覚は自覚できていた。


でも、まだ私の声は届いていないみたいだわ。


彼女はとてもセンシティブで、エネルギーとか霊の影響を受けやすいようね。

だからそういう子は疲れやすいし敏感な分、精神的に不安定になりやすいのよね。


彼女の甥っ子も同じタイプね。 鬱になりやすくなるのはそのせいね。


まあ、これも私のせいもあるんだけど、ごめんなさいね。


最も自分の祖父母について知りたがっていた彼女は、サイキックな人のセッションで、祖父に会うということにトライしてくれたの。

祖父を一目でいいから姿を見てみたいと言ってくれて、とても嬉しかったわ。


彼女は、「母や妹や甥っ子にほんの少しだけ似ている」と微笑んで、涙を溜めていたわ。


ちゃんと見ることができたのね。私もついもらい泣きしそうになった。


ダメよ、悪霊を泣かしちゃ(笑)



そして、彼女は、その後あるネガディブな人物から強烈なサイキックアタックを受けてしまい、防衛本能から、また能力を閉じてしまったの。


もう、なんてことかしら···。


私、タイムリミット大丈夫かしら?

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