小芝居
それなりに大きな町という事もあってか、併設された検問所から制服を着た番兵が顔を出して二人を呼び止める。
「そこの二人、見ない顔だな。この町に何の用だ」
「俺──いや私達、旅をしてまして。どうか三日程この町で休ませていただけないでしょうか?」
「女か。そっちのガキは?」
「ガキ……?」
眉根を寄せるアンを「こら」とロイドは小声で注意して、
「む、娘です。アン、挨拶して?」
「……こんにちは」
決していい態度には見えないが、人見知りとも言えなくもない。ロイドからすればいつも通り不機嫌なだけなのだが。
「こんなまだ小さな子供を連れて旅ねえ……。旦那はどうしたんだ?」
訝しげな番兵に彼女の機嫌が悟られないかと冷や汗をかきつつ、愁傷な俯き顔で演技を続けるロイド。
「……亡くなりました……旅の途中、厄災のモンスターに襲われて……」
「だとしても女子供だけというのは不用心だな」
「一緒に馬車も商品も失ってしまい、進む事も戻る事もできず、どうしようもなく……オヨヨヨヨ」
「商人だったのか。家はどこだ?」
ロイドが遠方の港町の名前を告げると「そりゃあ災難だったな」と番兵は同情。
「確かに馬車もなしに戻るのは難しい、か。町を出たらどうするんだ?」
「西の都に修道院があると聞いています。そこで働かせてもらおうかと……」
「おいおい……あそこまで歩きじゃ一カ月はかかるぞ……!」
「他に当てもありませんので……シクシク」
「……下手な嘘泣き」
「だまらっしゃい……!」
「どうした?」
「イエ、ナンデモ……メソメソ、オイオイオイ……」
とりあえず第一関門をクリアした二人は番兵に所持品を確認される。リュックサックから出てくるのは食料やキャンプ道具、質のいい子供服ばかりで警戒される物は何もない。
ただの親子だと警戒を解いた番兵は手を動かしながらふと口を開く。
「──ところであんたら。《人間モドキ》って知ってるか?」
「いえ……? 初めて聞きましたが……」
「妙な力を使うやつらだよ。魔法とも手品とも違う怪しい異能力者だって話だ。少しでもやつらの情報を持ってたら教えてほしかったんだが──そうか……」
「もし夫がいれば……色んな国の商人や貴族と話をしていたのでもしかすると知っていたかもしれませんが……お力になれず申し訳ありません」
「いや、いい。単なる噂だ。気にするな。なんなら忘れてくれ」
「はあ……」
そもそも武器の類を持っていない二人は早々に町に入る許しを得た。番兵が内側の仲間に合図を送り、門は軋みながら硬い地面を削っていく。
「通っていいぞ」
「ありがとうございます!」
こうして二人はようやく安全な町の中に入り、
「──ひっ」
「…………」
「う、うわああ……!」
彼女らを見た住人達は一目散に逃げ、
「ええっと……」
大通りからは誰もいなくなったのだった。
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