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数日後

 数日後、二人は先日のレストランにいた。

 前回とは違って店内は満員を通り越してお祭り騒ぎ。まるで今までを取り戻すように住人達が曲を弾いたり踊ったり拍手をして楽しんでいた。

 二人はカウンターの隅に席を追加してもらって、ひっきりなしの注文に大変そうな臨時のウェイトレスをよそに芸を披露する人達をのんびり眺めながら食事を取っている。それもこれも新体制の役場のおかげだろう。

 あれからダビーは気絶している所を憲兵に捉えられて、町の外へと川流しにされたらしい。犠牲になった町民がいた事、憲兵の中にも疑問を持つものが多かった事から町は変わり始めた。

 ロイドの罪も一掃。噂によれば全てなかったことにされたらしい。感謝してお礼を言う憲兵はいても再び捉えようとする人は現れなかった。

 おかげで二人はこうして、もう一度町でのんびりする事ができるようになったのだ。両手両腕に包帯が巻かれて動かせず、アンに渋々料理を口に運んでもらうような状態でも。


「──それで? お医者様はなんて?」

「全治一カ月だってさ」

「そ。じゃあ暫くこの町に留まるのね?」

「まあ流石にこれで町の外に出るのはね……」

「ふぅん……」

「……いぃいいっっっっ!!!!」


 突然包帯の上から患部を触られてロイドは顔を引きつらせた。悲鳴が店内に響き渡るがそれ以上の笑い声や話し声にかき消される。


「なんだ。まだまだ元気じゃない」

「っ~~~~!!!! ちょっと触らないでよ!!!!」

「大袈裟ね。機械人間の癖に」

「火傷だよ!? Ⅱ度だよ!? 痛いに決まってるだろっ!!!!」

「後先考えずに首を突っ込んだあなたの自業自得じゃない」

「いやそれはそうだけど……って、いやいやそういう訳にもいかないだろ。あのまま放っておいたらお爺さんがどんな目にあってたか」

「仲間が怪我されて足止め食らってるあたしの身にもなりなさいよ」

「それはごめんだけど!」


 つんけんと自己中心的なアン。それでもわざわざあの状況で面会にまで来てダビーの話をしてくれ、今も普段と違って健気に食事を手伝ってくれている。

 彼女なりに心配していたんだろう、とロイドは察する。


「隣いいかい?」

「あ。この前のお爺さん。お婆さんも」


 声の方を見ると先日の老夫婦がいた。周りから椅子を借りて狭いスペースに席を作りながら、


「お食事中の所ごめんなさいね」

「いえいえ」

「何言ってんだ。食事は大勢の方が楽しいだろう」

「もう。あなたったら」

「マスター、ナポリタン二つ! あと彼らに何か飲み物を!」


 老夫の言葉に、忙しないマスターがキッチンから声だけで注文を受ける。


「奢りだ」

「いいんですか?」

「私達だけじゃなく町まで助けてもらったんですもの。これくらいはさせて」

「老いぼれにできる事なんてこれくらいだからな。好きなだけ飲み食いしてくれ」


 礼を言うロイドに割り込んでアンがメニュー表を片手に、


「ねえ、この苺タルトもいいかしら?」

「ちょっとアン。欲張り過ぎ」

「いいじゃない。それだけの事はしたわよ」

「ははははははっ。好きなだけ食いな」

「うふふ。こっちのプリンアラモードもおすすめよ」

「店員さん! こっちよ、こっち!」


 そう言って天手古舞な店員を容赦なく呼びつけてあれこれと甘味を挙げていく。


「しかしなんでアンタは戦ったんだ?」

「『なんで』、ですか……」

「助けてもらっておいてこんな事をいうのもなんだが……あんたらはこの町にはたまたま立ち寄っただけだろ?」

「そうですね」

「町にも住人にも何の思い入れもない。それにあんたの実力ならそもそも処刑前に逃げることだってできそうに思えてな」


 確かにできたかもしれない。脱獄して、アンを拾って、追っ手を撒いて町の外に逃げる。面会の時に暗号で時間と場所を決めればより成功率も上がりそうだ。


「うーん……行き当たりばったりというか、体が動いてしまったというか」

「『行き当たりばったり』……?」

「ただの馬鹿なのよ」

「ア~~ン~~~~~~~~?」

「あにするのよ!」


 ロイドはアンの頬を大丈夫な方の手でこねくり回す。ロイドの答えと微笑ましい二人に老婦人は愉快に笑った。


「それだけの怪我をしておいて『行き当たりばったり』? ハハハハハハ!」

「随分自由気ままですわねえ」

「おまけに頑固、一度決めたら梃子でも動かない。あんなやつ、不意打ちでノックアウトさせちゃえば良かったのに」

「卑怯な事はしたくないんだよ」

「なるほど。お嬢ちゃんも苦労してそうだな」

「ほんとよ。いい迷惑だわ」


 悪かったって、と謝りつつ、ロイドは少し照れ臭そうに告白する。


「でも町の人の痛みに比べればこんなの大したことないですから……」


 その優しさが自分達を救ってくれたのだろう、と老夫は静かに納得した。

 やがてウェイトレスが料理と飲み物を運んでくる。フルーティな香りでいっぱいのデザートを前にアンは目を輝かせて、


「中々美味しそうね!」

「さあじゃんじゃん飲んで食べてくれ!」

「いただきます!」


 そして英雄は酒を受け取って老夫と乾杯し、豪快に煽ってぶっ倒れたのだった。

完結です。短い間でしたが、ありがとうございました。

また何か近いうちに書けれたら嬉しいです。


いつも評価してくださってる方、本当にありがとうございます。

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