-暗殺者を倒したら聖女の魔法が使えちゃった!-第2話【3/4】
そして、話を戻し、夕食会の3時間前。
少しでいいから、とカイラスが無理矢理私とのデートの時間を作り出した。
ふつうに嬉しいし、デートで気が緩んでいるから弱点も見つけられそう・・・
と思ったため、快く了承した。
「ペネ、今日も可愛いね!」
「さっきも会いましたよね?・・・でも殿下も素敵です。」
「そんなこと言ったら夕食会サボりたくなるだろ!もう、ペネ!」
「いや、夕食会は招待していませんので、殿下はいくらでも遅れてくださって構いませんよ?」
「はははっ!冷たいな・・・。じゃあ、行こう。」
「はい」
彼のエスコートで、用意されていた馬車に乗る。
「殿下、どこに行くのですか?」
「ああ、内緒」
カイラスの金色の髪が風でさらりと揺れる。
市場の方に行くのかと思っていたけど、違う道を通っているから、聞いてみたけど・・・。
・・・それにしても、メイン攻略対象は違うなぁ。
絶対的な権力、美貌。
でも私以外には冷たいっていうのが玉に瑕。私にも婚約当初は冷たかったけど、根気強く粘ってみたらいつの間にかこうなってたし。
他の人にも優しくならないかなぁ・・・。
「着いたよ」
「ここは・・・!」
私達が向かっていたのは、私と殿下が初めて会った場所だ。
婚約が勝手に決められて悲しんでいる私たちが遭遇し、婚約者の悪口を散々言い、あのとき悪口を言った人が婚約者だった、という出来事があったのだ。
「植物が沢山生えてるのは変わりませんね」
「ああ、そうだな。」
「せっかくですし、奥まで行ってみませんか?どうなってるのか、あのときは見れませんでしたし!」
「だな。皆、ここまででいい。」
「え、護衛とかつけなくて良いんですか?」
「大丈夫。好きな女一人ぐらい簡単に守れる」
「恥ずかしいことを言わないでください・・・」
「へへっ」
そうして、私達は森の奥へと進んでいった。
「森の中ってこんな感じなのですね・・・」
「入ったことなかったのか?」
「はい。危ないところには近づくな、と言われていたので・・・」
「そうか。・・・そういえば俺も言われてたなぁ」
「そうなんですね!」
一応だけど皇族だしね。
「まあ、暗殺者に反撃するにはもってこいの場所だったからよく入ってたけどな」
「笑い事じゃありませんよ、殿下・・・」
恐ろしいことを言うカイラスをなだめる。
「生きてるからいいだろ?それにペネと会えたし。」
「っ・・・」
「可愛いねぇ」
早く結婚できないかな、と言いながらカイラスは奥へどんどん進んでいく。
すると、人の足音のような音が聞こえた。
「ペネ、俺の後ろに」
「は、はいっ」
ガサガサ・・・
「チッ」
「皇太子だ!あつまれっ!」
え、暗殺者?!殺されちゃう!
しかし、そんな不安は自然と拭われる。ここには暗殺者を殺し、手配したものまで送り返すことで有名なカイラスがいるからだ。
「ペネ、腕の中に。」
「は、はいっ」
「目つぶって耳塞いでろ。15秒で片付けるから」
「えっ」
15秒で?こんな人数を?と思いながら言われたとおりにする。
ズシャズシャと人を斬ってるような音が、耳を塞いでいても時折聞こえてくる。
「ペネ、もう良いぞ」
「え、まだ12秒ですよ?」
「あ、足元は絶対見るなよ?なんか変なもの踏んだ気がしても無視しろよ?」
「そんなに大惨事になってるんですか・・・?」
「まあ、これぐらいは全然大したことないな」
「・・・下は見ないようにします。」
沢山殺生をしてきた彼の言うことは信じられないから、足元を見ないことにした。
「少しは信じてくれてもいいのに」
「あなたの言うことは信じられません!特にこういう系は!」
二人で森を抜けようと来た道を戻っていると・・・
「危ないっ」
「え」
ザクッ
とっさに私をかばったカイラスが刃物で刺される。
「で、殿下・・・?!」
「ペネ、逃げろっ・・・」
「そんな訳にはいきませんっ」
とは言ったものの、私は攻撃も防御もできない。
どうしよう・・・。
武術を学んでいないしっぺ返しが襲ってきた。
家に無事帰れたら武術を習おう。
・・・ってそんなこと考えてる場合じゃない!
暗殺者が迫ってくる。
すると、時間が止まったかのように暗殺者の動きが止まり、頭のなかに、声が聞こえた。
-ペネロペ、あなたはこの力を使ってこの世界を守ると誓う?-
「あ、あなたは誰?」
-私は女神ディニュートよ。あなたに力を分け与えたいの。時間が無いわ。どうする?-
「・・・私は、この世界を救いたい!大好きなこの世界を守りたい!」
-分かったわ。じゃあまずは祈りなさい。そしたら愛しい人を守れるわ。・・・間違っても愚かな使い方はしないでね。私の使える魔法も残り僅かだから、あとはあなたに任せるわ-
時が進み始めたのか、暗殺者の剣が迫ってくる。
ーチャンスは1回だけ・・・ー
女神ディニュートが言っていた魔法を言う。
「ふぁ、ファイヤーッ!」
「ぐあぁぁぁ」
暗殺者が倒れる。
「ペネ・・・」
「殿下っ・・・」
気づくと涙が出ていた。
涙がカイラスに落ちると彼の体が急に光った。
「これは・・・?!」
これは聖女が使える魔法の一つの「治癒魔法」。
本来はティアラが聖女になるはずなのに、私がその力の一端を使えてしまった。
みるみるうちにカイラスの怪我が消えていく。
「殿下、大丈夫ですか?!」
「ああ、無事だ。・・・ペネは聖女なのか?」
「ち、違いますっ!これはただ・・・」
「でも、聖女にしか使えない治癒魔法と攻撃魔法を使っただろ」
「うっ、確かに・・・。でも、たまたま使えただけです!」
私が聖女だという彼の言葉を全力で否定する。本来、聖女はティアラのはず・・・
あれ、でも女神ディニュートって聖女の力を分け与えるっていってたよね?
でも面倒は嫌だから知らんふりしておこう。ごめんなさい、ディニュート様。
「本当に偶然で、運が良くて使えただけです。私が聖女なわけありません。」
「でも、前の聖女は最近死んだし、このタイミングで出てくるのは妥当だとうぐっ・・・」
「殿下、それ以上はおやめください。その先を言うのは許しません」
カイラスが次の言葉を発する前に彼の口を塞いだ。
「ペネ、痛い!」
「あっ、ごめんなさい!」
「っていうのは嘘。・・・ペネ、ほんとに偶然?」
「そうです!本当に!こんな力、初めて使いましたし・・・」
「分かった。このことは秘密にしておくから、とりあえず森を出よう。」
「はい。」
そうして私達は森を抜けた。
こんにちは^ↀᴥↀ^
今回も続編です☆
お楽しみ頂けましたか(^∀^;)
次話の予告を少し_(´-`_ _)_
次回は、エカルト公爵家に戻ってきて、夕食会!
と思いきや、、、?!
ぜひご覧ください♪