教師の資格
ニコニコと満面の笑顔を見せながらパメラはちょこんとエルドの横の椅子に座った。
「息を切らせていたみたいだが大丈夫か?」
エルドがパメラの心配をする。
「大丈夫です、走ってきたもので」
「走ってきた?」
「私が呼んだんだよ」
そう言ってジュディがポンポンと太ったお腹を叩く。
「会えて嬉しいが何故だね?」
「必要になるからさ」
「必要?」
話が見えずにエルドは困惑する。
「あのー、何の話ですか?」
「ああ、アンタを呼んだのは他でもない、エルドが魔法を若い子に教えるらしくてね、手を貸しておやり」
「ああ、そういう事なんですね‼︎」
パメラの元にジュディからの使いが来てエルドが来た事を伝えにきた。
元々会いたかったパメラは急いで走ってきだけで他には何も聞かされてはいなかった。
「どういう事だ?」
「つまりだねエルド、メリアドールに魔法を教える為にはパメラの力がいるって事さ」
「ん?、魔法を教えるだけだろ?」
エルドとジュディのやり取りを聞いていたパメラはポンっと手を打った。
ようやく飲み込めたからだ。
「ああ、つまりですね先生」
「ん?』
「今は魔法を教えるには教師の資格がいるんですよ」
「な…なに?」
「教師の資格を取らないと罰せられます」
「パメラを教えた時は要らなかった筈だが」
「はい、私の時は…つまり10年前は要りませんでした、ただ8年前からそういうルールが出来ました」
「そうなのか?」
「はい‼︎」
「ちょっと教えるだけでも駄目なのか?」
「そうです、年々規制が厳しくなっていてちょっと教えるだけでも罰せられるようになりました」
「それは困ったな…」
腕を組むエルドにジュディは呆れた声で言う。
「さっき言っただろ?、だからパメラを呼んだのさ」
「どういう事だね?」
「資格取得しないと駄目って事ならパメラの力を借りればいいって事さ」
「パメラの?」
エルドはパメラの顔を見る。
エルドと目が合ってパメラは恥ずかしそうに顔をそむけた。
「え…とですね、私は今賢者協会の役員をやっていまして…」
「協会の?、随分と立派になったな」
「はい‼︎、先生のご指導のお陰です」
「……」
特に特別な事は教えていなかった。
メキメキと実力を付けたのはパメラの努力と才能だ。
むしろよく教え下手な自分の授業に付いてきてくれていたと思う。
「それでですね、資格取得の手続き等の事は私に任せてくれませんか?」
「それは有難いな、何せ何も知らないものでな」
「はい‼︎、先生の為なら全力でサポート致します‼︎」
力強く言うパメラ。
いい生徒を持ったとエルドは思った。
「それにしても不安はあるな」
「な…何か私に至らない点があるのですか⁉︎、先生‼︎」
「いや、資格取得という事は試験があるのだろう、それに合格できなければならないだろうが受かるかどうかが不安だ…」
「あ…その事ですか?、大丈夫です先生なら‼︎」
またしても力強く言うパメラ。
先生なら大丈夫…その言葉は逆にプレッシャーが少なからずかかる。
エルドはこの歳で試験を受けなければならない事に何やら緊張した。
続…かない、多分。
そう続かないのだよ、多分。