表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/259

第36話 入学試験(2日目) ~その1~(2)

 セアドは、(あき)()てたが、そうもしていられない。

 実技試験に向けて気持ちを切り替えた。


 対峙しているローゼンクランツ翁の孫は、左手に片手剣(ブロードソード)を、右手に片手用の盾を装備している。

 その盾は、通常の平らな形ではなく、丸みを()びていた。


 ルードヴィヒは、現在は両手を完璧に均等に扱えるが、生まれたときは左利(ひだりき)きなのであった。

 だが、今回は相手に対し、その方が有利であるから、サウスポーの構えにしたに過ぎない。


(サウスポーか……戦い(にく)いな。それにあの盾の形……何か意味があるのだろうな……)


 そして……

 いよいよ審判員が開始の合図をする。


 両者はいつでも突進できるよう、(ひざ)の力を抜き、少しだけ(かが)んだ姿勢で準備している。


「では……始め!」


 間髪を入れず、ルードヴィヒは盾殴り(シールドバッシュ)()り出した。


(速いっ!)


 セアドは、全く予想していなかった攻撃に一瞬対応が遅れたが、盾で防御する。


 驚いたのは、その後である。


 ルードヴィヒの盾殴り(シールドバッシュ)はセアドが構えた盾の右側に激しく当たった。

 ルードヴィヒの持つ盾は丸みを帯びており、その衝撃でセアドが構えた盾は大きく左外側に弾かれた。逆に、衝突の反作用でルードヴィヒの盾はセアドのボディの方へと方向を変え、直撃した。


 これは単純な物理の運動法則である。要はビリヤードと同じ原理だ。


「ぐっ!」


 盾が直撃した衝撃は予想より大きく、闘気(プラーナ)で身体能力の強化を図っていることは明らかだ。その威力はオーラの色が赤ということがフェイクであることを証明していた。


 セアドは苦痛に顔を(ゆが)める。もしかして、肋骨(ろっこつ)にひびくらいは入ったかもしれない。


 続いて、少しの間もなく、ルードヴィヒの片手剣(ブロードソード)がセアドを襲う。


 必死に片手剣(ブロードソード)で受け止めたが、(すさ)まじいパワーだ。何とか押し返そうとするが、それもかないそうにない。


 セアドは、素早く後退し、一旦、ルードヴィヒと距離を取ろうとした。


 だが、ルードヴィヒは、それを許さない。


 盾を腰の辺りにガッチリと構えると、光のような速さで構えた盾ごと体当たりする。いわゆるシールドチャージである。


 何とか反応して、セアドは盾を構えたがルードヴィヒのように腰が入ってはいない。

 衝突した威力はルードヴィヒの方が(はる)かに大きく、結果、セアドは無様に尻もちをついてしまった。


 そして、セアドの首筋にルードヴィヒの片手剣(ブロードソード)が当てられた。


「そ、そこまで」


 予想外の結果に審判員も驚いたのか、一瞬の間があって、審判員は試合を止めた。

 ルードヴィヒの勝利である。


 セアドは、これが実戦なら自分の首が落ちていたと思うと、背筋が寒くなった。


 他の受験生たちは、この試合を見守っていたが、その内容のあまりの凄まじさに、言葉を失い、武闘場は静まり返っていた。


 その後、セアドは、重い足取りで帰っていった。


(盾にあんなアグレッシブな使い方があったとは……初見だったとはいえ、的確に反応できなかった自分の実力が恨めしい……結局、自分の実力の半分も出せていないではないか……)


 彼の肋骨には、やはりひびが入っており、しばらくの間、訓練を休むことを余儀なくされた。

     挿絵(By みてみん)


 勝ってしまったルードヴィヒも、実は当惑していた。


 鑑定したところ、試験官のレベルは58で、オーラの色は第4チャクラが開いていることを示す緑だった。これはてっきりフェイクだと思っていたのだが……


(レベルどおりっちぅか、レベルの半分の実力も出してねぇでねぇけぇ!)


 それに、盾殴り(シールドバッシュ)に対する反応は、まるで初見の素人のようだった……


(そっか! おらに恥をかかせねぇために、勝ちを(ゆず)ってくれたっちぅこったな。そうに(ちげ)ぇねぇ……そぃがわからねぇたぁ、おらもまだまだだのぅ……)

 ……と勝手に都合よく解釈するルードヴィヒなのであった。

お読みいただきありがとうございます。


気に入っていただけましたら、ブックマークと評価・感想をお願いします!

皆様からの応援が執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ