表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

238/259

第127話 対陣(1)

 少しばかりして、プランツェとヴァルトの2人は戻ってきた。


 プランツェが報告する。


「主様。いたわ。人数も少ないし、幻影(イリュージョン)の魔法で偽装していたから、斥候の人たちは見逃していたみたいだけど、魔法使い風のローブを着た大男が20人くらい。あれは、たぶん召喚術士ね」


「はあっ! 召喚術士が20人もけぇ!」

「そうよ。間違いないわ」


 召喚術は魔術の中でも難易度が高く、召喚術士は人数的に寡少(かしょう)であるが、それが20人くらいとなると……。


皇帝軍カイザーリッシェ・アルメーの召喚術士の大半をかき集めたっちぅことけぇ……)


「どんぐれぇの使い手かわかるけぇ」

「なんだか異常に多い魔力量だったから、かなり上位の使い手であることは間違いないんだけど……」


「けど、なんでぇ?」

「あれは人間の姿に化けていたけど、魔族じゃないかと思うの」


「はあっ! そらぁ、また魂消(たまげ)た(驚いた)話だのぅ」

「確かにね」


(20人たぁいねえだ(おかしい)とは思ったが、黒の森(シュバルツバルト)の魔王らしきものと皇帝が手を組んだっちぅことか……それとも、別な魔族が皇帝の後ろ盾になっとるっちぅことか……まあ、そらぁ置いといて……)


「二人で、そいつらを()れるかのぅ」

「私たちは、あまり攻撃系の魔法は得意じゃないけど、あの人数ならなんとかなると思うわ」


「そんだば、頼めるかぃのぅ。もしダメそうだったら、(ほか)(しょ)を呼ぶすけ。できれば、一人二人生かして捕縛(ほばく)できるとええども、無理せんでのぅ」

「たぶん大丈夫よ。任せといて」


 プランツェとヴァルトは、召喚術士たちが(ひそ)む森の一角に忍び寄った。


 まずは、プランツェが蔓緊縛(ヴァイン ボンデージ)の魔法を発動すると、多数の木の(つる)が男たちを襲い、これに巻き付いて拘束(こうそく)した。


「うぁぁぁぁっ! 何だ、こりゃ。動けねえ」


 続けて、ヴァルトが棘刺(スローン スラスト)の魔法を発動すると、木々の幹や根から(くい)のような太さの(とげ)が勢いよく生え、拘束された男たちの体を(つらぬ)いた。


「ぐあぁぁっ!」


 さらに、杭状の棘がに2本、3本、4本……。


「ぐあぁぁっ! うぁぁぁっ!」


 男たちの体に容赦なく刺さっていき、男たちは何本もの槍で磔刑(たっけい)に処せられたかのように、おびただしい血を流しながら絶命していった。

 苛烈(かれつ)なようだが、平穏な住処(すみか)を戦場にされそうになって、森の木々は怒っていたのだ。


 ただ、一名の男だけは、蔓で拘束されたうえ、首を()められ失神した。

 プランツェとヴァルトが、この男をルードヴィヒの前に連れていき、いざ尋問をしようかとしたとき……。

 男は、突然苦しみだすと、大量に喀血(かっけつ)し、そのまま死亡した。


んのっくそっ(こん畜生)! 黒魔法の呪いけぇ」


 ルードヴィヒは(くや)しがったが、後の祭りであった。


 ルードヴィヒは、この戦争に、裏で魔族が(かか)わっていることを報告するタイミングをどうするか迷った。

 が、とりあえず、伝わってきた命令からすると、背に抱える森林に伏兵はいないという前提の様子だった。


(報告は、戦闘が終わった後に、頃合いを見てやることにすっかのぅ。森に伏兵がいねぇことに間違(まちげ)ぇはねぇわけだし、戦闘前に変な雑音をたてねぇほうがええろぅ……)


 ルードヴィヒも、魔族のことはいったん置いておき、目先の戦闘に集中することにする。


 大公軍は、皇帝軍カイザーリッシェ・アルメーを視認できる手前の地点で陣形を組み、敵の動きに注意を払いながら、漸進(ぜんしん)していく。

 が、敵に特に動きはないまま、森林を迂回(うかい)し、皇帝軍カイザーリッシェ・アルメーの正面にたどり着いた。


 大公軍は、前面から見ると、両翼に騎兵500ずつを配した単純横陣に見えるように偽装している。

 これで皇帝軍カイザーリッシェ・アルメーの指揮官が、単純横陣どうしが正面からぶつかり合うと解釈すれば、こちらの術中に嵌ることになるのだが……。

お読みいただきありがとうございます。


気に入っていただけましたら、ブックマークと評価・感想をお願いします!

皆様からの応援が執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ