表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
228/259

第122話 自然児 (1)

 会話が続かない……。


 ……と思ったら、ルードヴィヒは、軽く寝入ってしまったようだ。


 コンスタンツェは、そっと目をつぶると、のんびりとした気分で持ちのよさを味わうってみる。


 横たわった地面はヒンヤリとしている。太陽は既にかなり傾いており、その柔らかな日差しがまた心地よい。

 庭の木々をわたってくるそよ風が爽やかだ。その木々から、聞こえる野鳥たちのさえずりが天国の調べのようにも思える。


 コンスタンツェは、あまりの気持ちよさに、そのままウトウトしてしまった。


(ダメよ。ここで眠ってしまったら、またキスされてしまうかも……)


 そう考えてしまったコンスタンツェは、寝るどころの話ではない。

 だが、ルードヴィヒは、寝入っており、ちっとも起きる様子はない。


 コンスタンツェは、寝返りを打ったふりをして、ルードヴィヒの方を向いた。

 しかし、少し目測を誤ってしまい、ほとんど抱きつかんばかりの近さになってしまった。


 そこで、コンスタンツェは、少しの汗の匂いに混じったフェロモンのような匂いに魅せられる感覚を覚え、胸がキュンとした。

 臭覚というのは、脳に直結した感覚であり、また、女性は臭覚によって遺伝的に自分に相応(ふさわ)しいパートナーを意識的・無意識的に選んでいるとも言われている。


 ふとルードヴィヒを見ると、まだ寝入っているようだ。その無防備な顔を見たコンスタンツェは、悪戯(いたずら)心を起こしてしまう。


(これは、この間の仕返しなんだからね……)


 コンスタンツェは、ルードヴィヒの顔にそっと自分の顔を近づける……。


(隙あり! ( *¯ ³¯*)♡ㄘゅ)


(きゃぁぁぁぁぁっ! 今度は、自分からキスしちゃったぁぁぁっ!)


 コンスタンツェは、自分から触れるだけのキスをした。


 実はそのとき、ルードヴィヒは、マジ寝していて全く気付いていなかった。

 男というものは、女と逆で、女のふしだらな視線を感じる能力はほとんどないらしい。


 コンスタンツェがキスをしてしまった恥ずかしさから立ち直った頃……。

 ルードヴィヒは、やおら起き出してきた。


「ああっ。思わずマジ寝しちまったようだのぅ」


 コンスタンツェは、なんだか嬉しくなった。

 女の前で、そんな隙を見せるということは、自分に対して心を許していることの(あかし)ではないかと思ったからだ。


 ちょうど日が傾き、夕焼けになりかかっているところだ。


「丁度いい頃合いだのぅ。そりじゃあ行くけぇ」


 ルードヴィヒは、元気よく、そう言うと手を差し出した。

 コンスタンツェは、慣れたもので、腕を組んだ。


 そして向かったところは、庭の池だった。

 かなりの大きさの池で、深さもかなりあるようだ。


「ここに正餐のときに食べたサクラマスがいるの?」

「おぅ。そうだども、サクラマスを釣るんは、ちっとばかし難しいすけ、今日はちっこい魚を狙うすけ。そりだども、数は釣れるすけ楽しいと思うぜ」


「期待しちゃうわ。本当に私でも釣れるのかしら?」

「だすけ、あちこたねぇすけ」


 ポイントは、池に流れ込む手前の小川である。夕方になると、(えさ)を求めて池から魚が溯上(そじょう)してくるので、そこを狙うのである。


 ルードヴィヒがストレージから取り出したのは、流し毛針という仕掛けのついた釣り竿だった。仕掛けは浮きのほかに、毛針が5本ほど付いている。


「そりじゃあ、おらが見本を見せるすけ、見といてくれや」


 だが、コンスタンツェは、不思議に思った。ルードヴィヒは、針に餌を付けていない。


「ちょっと待って。あなた。針に餌が付いていないわよ」

「ん? こらぁ毛針っちぅて、虫に見せかけた疑似餌(ぎじえ)になっとるすけ、餌はいらんがぁよ」


「ええっ! そんなので本当に釣れるの?」

「まあ、見てらっしゃい」


 今度こそルードヴィヒは、仕掛けを小川に投げ込んだ。

 上流部から下流に向けてゆっくりと流していく……


 すると、10秒も経たないうちに、魚がかかった。

 ルードヴィヒが、それを引き上げると、何と2匹同時に釣れて

いた。


☆(๑⊙д⊙๑)‼スゴーーーイ


 コンスタンツェが、思わず拍手をする。


「こらぁ一荷(いっか)でねぇか。幸先(さいさき)がええのぅ」


 ルードヴィヒは、魚を外すと。用意しておいた水を張ったバケツに魚を放り込んだ。


「”いっか”って?」

「一度に2匹釣れることを釣りキチん(しょ)は、一荷っちぅがぁてぇ」


「”釣りきち”って?」

「きち〇いみてぇに釣りが好きん(しょ)を”釣りキチ”っちぅがんに」

お読みいただきありがとうございます。


気に入っていただけましたら、ブックマークと評価・感想をお願いします!

皆様からの応援が執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ