第121話 庭の自然(3)
さらに庭をぶらつく。
途中、ルードヴィヒは、笹を見つけては草笛を作り、ブーブー鳴らしたり、イタドリを見つけては、その茎を折って、酸っぱい汁を吸ったりしている。
「あなた。そんなものを生で食べてだいじょうぶなの?」
……とコンスタンツェが心配している。
「ん? こらぁ”すかんぽ”っちぅて、酸っぱくて美味ぇがあよ。食ってみるけぇ?」
……と言うと、ルードヴィヒは、今の今までチュウチュウ吸っていたイタドリの茎を差し出した。
(こ、これは……間接キスというやつでは……しかも、あんなにチュウチュウ吸っていたものをなんて……)
コンスタンツェは、恐る恐るイタドリの茎を受け取ると、口に運んだ。
(きゃぁぁぁぁぁ! 間接とはいえ、2回目のキスしちゃた……)
そして、ルードヴィヒがやっていたようにチュウチュウと吸ってみる。
(間接とはいえ……なんだかディープな感じが……)
そんなことを考えたのも束の間……
「うわぁ。酸っぱい!」
「だすけ、酸っぱいちぅたでねぇけぇ」
「でも、この酸っぱさは……ちょっと青臭いけれど、慣れると癖になりそう……」
コンスタンツェは、イタドリを気に入ったらしく、そのままチュウチュウと吸っている。彼女は、食べ物に関しては、意外にチャレンジングな性格のようだ。
そして、少し開けている草地に来た。
ルードヴィヒは、木の陰に隠れると、ある場所を指差して小声で言った。
「あの辺にウサギん巣があるがぁよ。静かにしとれば、そんうち出てくるすけ」
「えっ。そうなの?」とコンスタンツェもその気になって木の陰に隠れる。
程なくして、巣穴から、真っ白なウサギと白黒ブチのウサギが姿を現わした。
そしてもう一体……。
白黒ブチの小さなウサギが姿を現わす。子ウサギというには大きいので中ウサギといったところか。
周辺を警戒して、キョロキョロしている。
(きゃぁぁぁっ! 可愛いぃ! 特にあの小さいウサギ……)
「おらっ! いつの間にか、子供が増えとるのぅ」
「あれは、飼っているわけじゃあないの?」
「あらぁおらが引っ越してくる前から棲んどるがぁてぇ」
「じゃあ。野良ウサギっていうこと?」
「厳密には、半野良っちぅ感じかのぅ」
「ねえ。あの小さいのを抱っこできないかしら?」
「人にぁ慣れてねぇすけ、難しいのぅ」
「そう。それは残念……」とコンスタンツェは、実感のこもった声で言った。
そのまま草地を歩き、ウサギの巣穴から離れる。
「さぁて……」と言うと、ルードヴィヒは、やおら靴を脱ぎだした。
「えっ? 何してるの?」
「草の上を裸足はだしで歩くと気持ちええがぁよ。大公女様もやってみらっしゃい」
(素足って、普段は人に見せないところだからなあ。ちょっと恥ずかしいけど……まあ、いいか……)
コンスタンツェは、は、素直に裸足になって、草地を踏みしめる。
一方のルードヴィヒは、指がスラリとしてその形のいいコンスタンツェの素足をみて、何かなまめかしい感覚を覚え、ドキリとした。
「まあ。ヒンヤリとして、気持ちがいいですわ。草の感触も気持ちいいです」
ルードヴィヒは、それを聞きながら、草地にゴロリと横になり、寛いだ。
「なに一人で寛いじゃってるのよ」
「いやぁ……こうしてると気持ちがええがぁよ。夕まずめまで、まだちっと時間があるすけ、大公女様もやってみらっしゃい」
コンスタンツェは、ルードヴィヒの横に並んでゴロリと横になった。
「ああ。確かに、気持ちがいいでわね」
「そらぁそうだのぅ……」
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